第3話:奇妙な相談_3
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祈様、こちらが続きとなりますが、どうかこの内容は読み上げずに、祈様のみお読みになってください。
人には妄想や、ただ敏感になっているだけ、と、笑われるかもしれません。
ですが、私には正直なところ、そんなふうには思えないのです。
あまりダラダラと書いてしまってもわかりにくいと思いますので、一旦簡潔に箇条書きで①起きたこと②願ったこと③結果を簡単に書かせていただきます。
良いことは起きても困っておりませんので、悪いと思った結果になったもののみを記載します。
結果として、直接聞いた話もありますし、また聞きとなったものもあります。
どうか、笑わずに、否定せずに見ていただきたいのです。
おかしなことを言っていると思われるかもしれませんが、これは事実なのです。
確かに、これらが私が生きている人生全てをかけて起こった出来事ならば、そう言えばこんなこともあったな、くらいの気持ちで終わってしまうでしょう。
ですが、悲しいことにそうではありません。
凄く細かいことも書きませんでしたが、恐ろしいことに半年以内で起こった出来事なのです。
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他の人は読まないでくれ、恐ろしいことである、と、念押しされている。きっと、このメッセージを送ってきた匿名さんは、よほど怖い目にあったのか、ぶっ飛んだ出来事を目撃したに違いない。と、私は最初に読んだ時そう思って三通目に目をやった。
「……こりゃ事件か何かですかね?」
初めて読んだ時も、今こうやって何度目かの確認の時も思わず独り言も出る。怖いからだ。それでも、書いてあることに間違いはないかと、何度でも読むことにした。
・娘2が習い事を渋る→転勤前みたいに楽しく通ってほしい→担当していた講師が退職
・娘1がクラスメイトから嫌がらせを受ける→心配事なく娘1には学校に行ってほしい→嫌がらせ相手が補導、登校拒否、引きこもり
・娘2が保育園を行き渋る→楽しく通ってほしい→娘を困らせていた相手の子が大怪我、トラブル後引っ越しで退園
・私(匿名希望)が会社の人からパワハラを受ける→その人と離してほしい→パワハラをしていた人が事故にあい復帰できずそのまま退職
・私(匿名希望)がストーカーを受ける→やめてほしい→まだ何も起きていません
・私(匿名希望)が同じマンションの人から嫌がらせを受ける→やめてほしい→まだ何も起きていません
「いや、まぁまぁ酷いな何度見てもさぁ……」
私は読み終わって大きな大きなため息を吐いた。それは書かれた内容が酷いものだからだ。匿名さんの言う通り、気のせいと言えなくもないが、気のせいで済ますにはピンポイントで結果が出過ぎている気がする。というか、ストーカーにあったりマンションの人から嫌がらせを受けたり、匿名さん自身何か呪われているのではないだろうか。……きっと、そういう人を引き寄せてしまう性質を持っているのだろう。悲しいことに。
箇条書きで内容を送ってもらったものの、一番最初に起こったことに対する詳細も書かれていないし結果も本当に結果しか書いてないので、実際にどんなことが起こって何が原因でそうなったのかは、これだけではよくわからなかった。
たとえば、一つ目の『娘2が習い事を行き渋る』だが、どうして行き渋ったのかが書いていない。ただ、最終的な結果に『担当していた講師が退職』とあるので、この講師が娘さんの行き渋りの原因だと読める。匿名さんがただ単純に『前みたいに楽しく通ってほしい』と望んだだけなら、別に他の習い事に変えても、同じ教室なら時間帯を変えてもいいわけだ。
それならば講師も退職しまい。講師が元凶ということで、楽しく通うためにはこの講師が辞めなければならなかったということだろう。
……なぜ、辞める必要があったのだろうか。なぜ、辞めることを選んだのだろうか。
それに、程度は人によって感じ方が違うと思っているが、徐々に結果として起こる内容が酷くなっていっている気がする。
退職だけ、と事故で退職を比べたら、事故に遭っている分後者のほうが酷い。補導登校拒否引きこもりは、起こした内容によっては当然のコンボを決めたように見えるが、子どもの大怪我は大人よりも痛々しく感じてしまうし、さらに娘2の友人は何らかのトラブルがあり退園と引っ越しをしている。
まだ何も起こっていない最後の二人だが、その一つ前が『大事故で復帰できず退職』とある。その被害は甚大だったのだろう。……ということは、これよりも酷いことが起こる可能性がおおいにある――いや、酷いことしか起こらない――と、匿名さんは言いたいのだろう。
悪人が酷い目に遭うのならば因果応報自業自得とつい私は感じてしまうが、この匿名さんは実のところ、いったいどう思っているのだろうか。
起こる頻度と期間に関しては気になると言えば気になるが、偶然ではないと確実に言い切れないのではと私は思っている。良くないことは、重なって起こるものだ。負のスパイラルに陥った時は、そこから抜け出せるようになるまでどんなに足搔いても脱出なんかできやしない。匿名さん……そして相手はたまたまソレにハマってしまったのかもしれないのだ。
起きたことの箇条書きはここで終わり、この後は締めの文章が書かれていた。




