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わたしだけのかみさま-宗像祈の配信録-  作者: 三嶋トウカ
資料①テキストファイル

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(前半)匿名希望さんからのテキストファイル【2】.txt

 匿名希望さんからのテキストファイル【2】


 ***


 このメモでは、下の娘について書いていきます。


 下の娘……次女は元気いっぱいで頑張り屋です。

 それが空回ってしまうのか、嫌なほうで目についてしまうのか、習い事が落ち着いたと思ったら、今度は保育園でトラブルが起こりました。


 次女は誰とでも友達になりたいタイプで、あまり人見知りはしない……あまりではないですね、全く人見知りをしません。

 こちらが心配してしまうほどに。

 工事現場の人や警備の人にも手を振って挨拶しますし、知らない道行く人に手を振る時もあります。

 煩わしい……と思う人もいるかもしれませんが、無関心よりはいいのかなと思っているので、特に何か言ったりはしていません。


 誰かと遊ぶ時も、同じクラスのお友達とももちろん遊びますし、公園で一つ二つ年が離れているかな? と思った子にも「一緒に遊ぼう!」と声をかけることがあります。

 ただ、一人で遊びたい子もいれば、人見知りする子もいますので、娘には「一人で遊びたい子も恥ずかしがり屋の子もいるから、一回言って断られたら、ママと二人で遊ぼうね。無理に誘っちゃダメだよ」と教えています。

 今のところ、無理強いしている姿は見ていません。


 ……と、こんな感じの性格なので、保育園でもすぐに友達ができたみたいです。

 だから、毎日楽しく通っているだろうとてっきり思っていたのですが……。

 この言い回しで、勘の良い人なら……祈さんも含めて、気が付くと思います。

 何かが起こると。

 

 長女と同じように、行き渋りを始めたのです。

 正直なところを言うと「あぁ、次女も始まったのか……辛い……」でした。

 夫は忙しいので、学校や保育園に関することはあまり頼れません。

 休みを取ることも難しいですし、基本会議だらけらしいので、遅刻早退も難しいんです。

 なので、話はしつつ私ができる範囲で仕事を調整して、何とかやっていたのですが……。


 このころから、怪我が多くなってきたんです。

 大きなものではなくて、ちょっと転んで擦りむいたのかな? とか、どこかにぶつけちゃったのかな? くらいの小さなものでした。

 でも、数が多いんですよ。

 服がちょっと汚れていて、膝と手のひらに擦り傷があったら、今日は転んだのかな? って思うじゃないですか。

 けれど、その数ってせいぜい同じ部位に一つかあっても二つくらいじゃないです?

 それが、三つも四つもあって。

 ちょっと赤くなってるなとか、最初のほうの傷が治りきってないのにまた新しいのとか。


 私、一度仕事の都合で保育園の迎えの時間を後ろにずらしまして。

 普段よりも遅い時間に迎えに行ったんです。


 そしたら、たまたま同じクラスの女の子と次女が外で遊んでいるタイミングで、保育園に着いたんです。

 いつもは教室から出てくるので、ちょっと遅いとあぁ、外で遊んでるんだなって思いながら、外から眺めつつ門を開けて。


 ……目を疑いました。 

 私がその門に手をかけた時、遊具の上から、その女の子が次女のことを突き飛ばしたんです、なんの前触れもなく。

 もうね、心臓が止まるかと思いましたよ。


 笑ってるんですもん、その女の子。

 幸い、小さな滑り台だったのと、服と靴が滑りにくい素材だったみたいで、倒れたままズルズルと引っかかって下までは落ちませんでした。

 たまたま、落ちなかったんです。

 次女の立っている位置が悪かったら、その女の子の力がもっと強かったら、違う服や靴を身に着けていたら……頭から地面に落ちていたと思います。


 思わず「危ない!」って叫んだんです。

 あ、保育士さんはいましたよ。

 ただ、他にも園児がいたので、その子のほうを向いていて見ていなかったんです。

 ……まぁ、見ていたらその子もやらなかったとは思いますけど。


 私が叫んだ時に、その女の子私のほうを見たんですよ。

 その時の顔は忘れません。

 「あ、やべっ」って顔してたんですよ。

 あれは、自分のしたことが明らかに悪いことだって、やっちゃいけないことだってわかっている顔でした。


 先生がすぐに駆けつけてくれて、私も急いで次女の元へ行きました。

 本人はビックリしたみたいでしたが、特に変わった様子はありませんでした。

 頬は擦ったのか赤くなっていて、ちょっと痛々しく見えました。

 顔だから余計に。


 そしたら、先生の隣に行って、その突き落とした女の子が言うんですよ。

 「次女ちゃん滑って落ちちゃった」って。

 それはもう息をするように、しれっと嘘吐いてるじゃんって頭に来てしまいまして。

 先生とその子の顔を交互に見ながら言ったんです。


 「おばちゃんね、次女ちゃんが落ちたところ、全部見てたよ。最初から最後まで、ずーっと。全部だよ。ぜーんぶ」と。

 そしたらすごい顔して「嘘だ!」って言うんですよ。

 何が嘘なのかわからないですけど。

 だから「おばちゃんね、次女ちゃんのお母さんなの。だからね、自分の娘に起こったことに、嘘なんか吐かないよ。見間違えるわけないよ。突き落としたの、見てたよ」って思わず言っちゃったんです。

 多分他の子には聞こえていないと思います、私と次女と、先生とその子でまとまっていたので。


 目を見開くってこういうことを言うんだなって思うくらい、まんまるな目をしてました。

 先生が「どういうこと?」とその子に聞いたら、走って教室へ戻っていってしまって。

 なので、私が全て先生にお話ししたんです。

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