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わたしだけのかみさま-宗像祈の配信録-  作者: 三嶋トウカ
資料①テキストファイル

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18/19

(後半)匿名希望さんからのテキストファイル【1】.txt


 相手の両親は、何度か学校へ足を運んでいたようですが、何の話をしていたのかはわかりません。

 先生たちも、心なしか疲れているように思えました。


 ……ここからは、あまり気持ちの良い話ではありません。


 娘と仲の良い子が、たまたま私に教えてくれたんです。

 「あの長女ちゃんに意地悪していた子、何度も万引きを繰り返していたから、警察に捕まって学校に来なくなったんだと思うよ」と。


 実際は小学生ですから、警察に捕まる……逮捕という意味ではあり得ないと思うんですよね。

 でも、その子は自信満々なんですよ。

 その子は、何度か一緒に遊んだことがあるみたいなんですけど「毎回知らないうちにお菓子を持ってきては食べていた」って言うんです。


 たとえば、スーパーのお菓子売り場で「これ美味しそうだね」って話をするじゃないですか。

 で、気に入ったものをいくつか持ってレジへ行きますよね。

 お金を払って袋に入れて、そのお友達が外で出して食べていると、ポケットから小さなお菓子を出して件の子も食べているそうなんです。

 「私お金ないから今日は買わない」って言っていたけれど、やっぱり買ったのかな? くらいにしか思わなかったみたいです、最初は。


 それが何度も続いた時、気が付いたんですって。

 「あ、この子、レジ通ってないんじゃない?」って、その子が。

 その子がレジへ行くと、件の子は「向こうで待っているね」って、レジを通った先へ行くそうなんです。

 でも、自分がレジを通っているから、相手がレジを通ってないなんて、とても思わなかったんでしょうね。まだ子どもですし。

 

 こっそり、件の子の親に伝えたと言っていました。

 私には「内緒だよ、怒られたくないから。でも、娘ちゃんに大丈夫だよって言いたいんだ」って、しぃーって口に指をあてて教えてくれたんです。

 娘のことを考えてくれるこの子が、私には天使に見えました。


 それからすぐ、偶然にも見たんです、その件の子を。

 何で私がその子だってわかったのか不思議ですよね?

 たまたま家族で出かけた時に、とある一軒家から出てきたんです、親子が。

 そうしたら娘が固まってしまって。


 「あの子だ」……って言うもんですから、夫にお願いして長女次女を連れて先に行ってもらったんですね。

 私はもう「どんなヤツなのか顔くらい見てやる!」って妙に意気込んでしまって。


 ……実際に、顔を見ることはできました。

 ずっと食べていないのかって思っちゃうくらいやつれていて、髪の毛も子どもなのに艶がなくてボサボサで。

 顔はなんかね、色が悪いんですよ、色が。


 「ごめんなさいごめんなさい」「もうしません」「許してください」「助けて」って枯れた声で泣き叫びながら、父親に引きずられて、車に押し込まれていました。

 母親は先に車に乗っていたようで、後部座席で受け取っていましたね、その件の子を。

 母親だと思ったのは女性っぽく見えたからで、親子でどこかへ行くんだな? って思いました。

 父親は運転席に乗り込んで、実際そのまま車でどこかへ出かけて行きました。


 あんまり、その件の子が放っていた言葉は、良い言葉じゃないですよね。

 だけど、悪いことをした時って、怒られると子どもってそう言うものだと思っているので。

 あんまり疑問には思いませんでした。

 たまにあるじゃないですか? 「警察に捕まえてもらう!」って、本当に交番とか警察署まで連れて行く人。

 そんな感じなんじゃないかなって思いました。


 けれど「流石にヤバい!」と思うところがあったんでしょうね。

 その件の子も、行ってなるものか! っていう感じで、一生懸命家に手を伸ばしていました。

 入れませんよね、親が一緒にいるんだから、当然鍵かけて出かけますし。


 気持ちの良くない……と言ったのは、その件の子が万引きを繰り返していたから、トラブルに巻き込まれた可能性があるなって言う可能性と。

 私が見た時の格好がなんというか、あまりにもみすぼらしい……って、こんな言いかたよくないとはわかっているんですけど、他に言い方が見つからなくて……。


 小学校四年生っていったら、もう大きい子は大人とそこまで変わらないのに、酷く小さく見えたんです。

 それに、顔色が悪かったのも、もしかして殴られたりした痕が腫れて色が変わったんじゃないかとか。

 相手の親御さんは知りませんから、そういうことをするかどうかはわからないんです。

 でも、勘……ってあるじゃないですか?

 私から見ると、そう感じるものがあったんですよ。


 万引きが原因なのか、長女の話が親の耳に入ったのかはわかりませんけど、何にしろその件の子がどうしてそうなったのかがわからないし、その後どこへ行ったのかも知りません。


 ちなみに私が助けなかったのは、更生してほしいなと思ったからです。

 親だってガッツリ起こる時は怒るんだぞ、子どもだからってなんでも許されるわけじゃないんだぞ、って。

 悪いことして怒られるなら、それは自業自得ですよね。


 確かに空気は異質だったと思います。

 それが今でも、自分の中で渦巻いているし、モヤッとしているのも間違いないのですが。


 長女はちゃんと、楽しく学校へ通えるようになりました。

 今はもう、毎日学校へ行っています。

 その子は相変わらず、学校へは来ていませんが。

 取り巻き含め、心配している子はいないみたいです、子どもってそんなものなのですかね。


 これで、長女の件は終わりです。


 ***

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