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わたしだけのかみさま-宗像祈の配信録-  作者: 三嶋トウカ
第一章:宗像祈の雑談部屋

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第15話:依頼者との通話_6


『……翌週は、先生が体調を崩したということで、臨時で別の方が講師をしてくださったんです』

「じゃあ、その週は問題なく?」

『はい。楽しそうに帰ってきました。実感しましたね。あの先生じゃなかったら、娘も私も嫌な思いしないじゃん、って』

「神様に祈ったのは、どの辺りですか?」


 これは大事な話だ。効果が表れるまでどれくらいかかるのか、どこまでこの講師の所業を追っていたのかわかる。


『えっと、夫に相談して、その、SNSにも書いたんですよね。それから実母にも伝えました、考え過ぎって言われましたけど。その後くらいに、神様に祈りました』

「別の講師の人がきた……それが神様に祈った結果で良いですか? あれ、でも、代わったのってその一回だけです? その後は出勤したとか?」

『結局、その後も五回ほど講師の人が変わって、今習っている講師の方へバトンタッチしました。その時に、該当の先生が退職したことを知って。後任が決まるまでの臨時だったんでしょうね、間を繋いでくださった人たちも』

 講師も生徒も、どちらも気を遣っただろう。

「じゃあ、解決した……ということで良いんですよね? なーこさんの願いは娘さんが楽しく通えること、でしたし。その人がいなくなることで講師が変わって、娘さんはまた楽しく通うことができるようになった」

『そうなんですけどね。納得はできないというか。結局、どうしてあんなに娘が目の敵にされていたのかもわからないし、夫の送迎時は普通だったのかもわからない。ただ、神様に祈った結果がこれなら、こう、嗅ぎまわるのは良いことじゃないなと思って。采配にケチ付けたら、罰が当たりそうで』


 わかる。折角やってもらったことにケチをつけては、機嫌を損ねてもう二度とやってもらえないかもしれないのだから。


「……何でその講師の人、辞めたんでしょうね?」

『わかりません。でも、噂は聞きました。教室を辞めて確か、二週間かそれくらい後でしたね。その講師とソックリな人が、夜の店……アレです、泡、うん、泡の。そこで働いているって。講師だったのが、急にそういうお店で働いているってお話を聞いたものですから。だから、あぁ、お金絡みで辞めたのかなって思います』

「はぁぁ、なるほど……。よく、その、ありますもんね、そういう話は……」

『えぇ。実際に聞いたのは、この時が初めてでしたけど。あるんだな、って思いました。でも、別に私が直接見かけたわけでもないですし。あくまでも噂レベルのなので、本当に彼女なのかはわかりませんけどね。ただ、死人みたいだったって聞きました。体調悪かったのかな?』


 堕ちた結果としては、わかりやすい。漫画やドラマでよく見る流れだ。


「……その先生のお写真って、持っていますか?」

『ありますよ、確か……生徒が教室に増えると、記念に写全体真を撮っていたんです。それがあったはず……』

「見せてもらうことって可能ですか?」

『構いません。が、その、会ってお見せする形であれば、OKです。一応、送ったものが悪用されても困るので。あ……すみません。祈さんがそういうことをするとは思っていませんが、赤の他人の写真ですし、その人に許可を取っているわけでもないので……』

「それはそうですよね、すみません、不躾なお願いしをしてしまって」

 うっかりしてしまった。興味が先行してしまい、失礼なことを言ったかもしれない。

『いえ、その、やっぱり直接会って喋ったほうが、ニュアンスも伝わりやすいかなと思ってしまって。……私が、会うことにこだわってるのがいけないんです』

「一つお聞きしても良いですか?」

『何でしょう?』

「そもそも。なぜ私に相談をしようと思ったんですか?」


 私はずっと疑問に思っていたことを彼女へぶつけてみた。とにかく困っているなら、私なんかよりもっと相談すべき相手がいたはずだ。霊能力者でも神社の神主でも、日本中の人が見ている相談箱でも何百万人と視聴者のいる配信者でも。カウンセラーだって、心療内科だっていい。私は弱小の部類で、特に目立った活動もしていない。今まで事件を解決したこともなければ、特殊な資格も持ち合わせていないのだ。


『それは、親近感……ですかね』

「親近感……?」

『はい。同じようにお子さんがいて、仕事をしながら家のこともして。失礼だったら申し訳ないんですけど、配信を聞いていて、SNSを覗いて、身近な存在に感じたんです。あぁ、この人も同じお母さんなんだな、って。だからその、私の感じたことに共感してもらえるかもしれないって、そう思ったんです。……こんな勝手な理由で、ごめんなさい』

 彼女の声は、どんどん小さくなっていった。


 「そんな、謝らないでください! 嬉しいですよ、そう思ってもらえるのは。やっぱり、反応があると嬉しいですし、こんなに沢山色んな人が色んなことやっているのに、その中で私を探してずっと聞いてくれているので」

『それなら良かった……』

「……あの、ちなみにお住まいはどこですか? 私は〇〇地方なんですけど……」

『あ! 私もです! ××県になります』

「……え、あ、ウソ。同じですね? 私もです。……じゃあ、もしかして生活圏内被っている可能性ありますかね……?」

『ビックリした……被っているかもしれないですね』


 ここまで聞いて、私は決意した。

 彼女に会おう、会って話を聞こう――と。

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