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わたしだけのかみさま-宗像祈の配信録-  作者: 三嶋トウカ
第一章:宗像祈の雑談部屋

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第11話:依頼者との通話_2


『……でもやっぱり、なかなか周りに友人ができなくて。今でも前にいた土地の友人と連絡を取っていますし、寂しくもなります。初めはそうです、新しいママ友……友人がほしくて、夫へ相談したんです。そうしたら、神頼みでもしてみたら? なんて言うんです、彼。笑ってました。珍しいこと言うもんだな、って思ったんですけど、面白半分でやってみたんですよ。そんな話をしていたからか、その日の夢に神様が出てきて。……あ、でも、本当に神様だったかはわかりません。なんとなくそう思ったというか。ママ友がほしいと、夢の中でも考えていたのは今でも覚えています』


 私は話の腰を折らないように、時々『はい』や『なるほど』といった相槌を入れて話を聞いた。


『その日は、次の日も休みで夕食の準備が億劫だったから、外食しようと娘たちと話していたんです。同じマンションに、下の娘と同じ保育園に娘さんが通われているご家族がいらっしゃるんですけど。上の娘を学童へ迎えに行って帰ったら、そこのお母さんと娘さんとたまたまマンションへ着いたタイミングが一緒で。挨拶は何度か交わしていたんですけど、ちゃんと喋るのは初めてだったんですよね。そしたら、下の娘が外食することを二人に伝えて。そこから一緒に行こうとなって、一緒に夕飯を食べたんです』


 まだ確信に至っていないからか、なーこさんの声は明るい。

『連絡先も交換して、勿論今でも連絡を取り合っています。お互いの家も行き来しますし、ご飯食べに行ったりとか。その、連絡先を交換した時に、思ったんですよね。『あ、ママ友できた、神様にお願いしたからだ』って。……ママ友がほしくて神様に祈ったのが最初です。願ったら偶然、叶ったように見えたんです。だから、これは神様に祈った結果かな? って、気のせいかもしれないけど、だったらもっと御利益にあやかりたいと、そう信じることにしました』


 ここまで話して、なーこさんは一旦喋るのをやめた。質問するタイミングだと思い、私は口を挟むことにした。


「なるほど……そのママさんは、あまり喋る機会がなかったんですよね?」

『はい。同じフロアで娘同士クラスも一緒だったんですが、送りの時間も迎えの時間も違ったので、たまにマンションですれ違った時にあいさつを交わすくらいで。後は、子ども同士が少し喋るくらいですかね。同じフロアだから、多分あちらも社宅だとは思うんですけど、夫も何も言わなかったので、もしかしたら夫同士同じ職場……というか部署? というのはないと思います』

「確かに送迎のタイミングが違うと、全然会わないですよね、他のママさんに」


 経験からわかる。時間がズレると、他の保護者と話す機会は一気に減る。

『そうなんですよ。私が迎えに行くタイミングは他のママさんより遅いみたいで。迎えの早い子が多いんですよね、ウチよりも。ウチは少し遅めなので、その時間は被る人があまりいなくて。もっと遅い人もいるので、やっぱりタイミングですよね』

「わかります、たとえば十七時に迎えに行くでも、その前後で会ったり会わなかったりしますし」

『同じ時間の迎えでも、会わない時は会わないですよね。だから、本当に偶然だと思います』


 ここで私は、少し気になったことを、聞いてみることにした。

「なぜその日はその時間に迎えを?」

 言葉が返ってこない。考えているのだろうか。


『……それなんですけど、よく覚えていなくて。たまたま人が多くて、作業に余裕が出たから帰っていい……と言われた気がするんですよね。だから、保育園に電話して、早く迎えに行ったんだと思います。どこかに寄ろうかとも思ったんですけど、週末だし早くお風呂とご飯済ませるのも悪くないかなって。多分、ですけど』

「じゃあ、普段通りの時間に帰っていたら、出会わなかったということですね?」

『はい。……あ! そうだ、その時の相手の娘さんが、パンを食べたいからパン屋さんに寄った帰りだったはずです。そのお店、新しくできたばかりだったから、行きたいなって思ってて、羨ましいから覚えているというか』

「たまたまそのご家族も、パン屋さんに寄って帰ったから、マンションで出会えたんですね」

『えぇ。その子がパンの話をして、で、その前にパンケーキ食べたいねって話を私たちはしていて、それを下の娘が話したんです。うん、そうだ、そうだった』


 聞いた感じの印象は、偶然が重なった出来事――だ。


『それに気を良くして、他にも神様に祈ったんですよね、私』

 なーこさんは話を続けた。

『流石に宝くじは当たりませんでしたね。夢は高額当選だったんですけど。でもそれは、なんか当たり前って言うか。気にならなかったです、当たらなくても。でも、実母や義母からお小遣いをもらったり、夫のボーナスが増えて私もそこからお小遣いをもらいましたね。だから、懐は温まりましたよ。誕生日でもないのにちょっとお高めのワンピース……ディスプレイされていた、靴や鞄も一緒に……プレゼントしてもらって、良いホテルのレストランへ食事に行って。夫が、転勤についてきてくれてありがとう……って。宝くじほどじゃないけど、いい気分にはなれました』

「……それは地味に嬉しいですね」

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