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8 変質

 千条渚が帰宅した。


 厄災、天満の裏切り、僕のいる世界といない世界での結果、そして僕の変死について。

 千条・・・・ナギは僕をよく知っていた。

 まるで、常に監視していたかのうように日々のことを隅々までよく知っていた。確かに妙であった。ナギはともかく、じいという存在も僕に会ったことあるかのような言い回しでもあり、昔に何かあったことを日医していた節があった。

 自然と落ち着いてナギの話を聞いていた。


「魔五斗様、いかがなされましたか?」


「えーーーーと・・・・帰ろうか。」


「と申しますと?」


「いや、自分の家に」


「ここですが?」


「なん・・・・・嘘が反応しない。」


「住民票の手続きと荷物の準備に手がかかっておりました。また、入学手続きもお時間を有しており、宿舎を昨日離れることが無事叶いました。」


 メイド学校は確か生活魔法専門の学校にして、由緒正しきメイド作法、そのため、寮制度が導入されておりって、そんなことは今どうでもいい。


「話が見えなさすぎるんだが?」


「ええ、順を追って話しますと・・・・まずは私が前に魔五斗様の家を出た後に、無事にメイド高へもどったところでしたが、魔五斗様に仕えることを望んでいたため、その権利獲得を行うためメイドの序列争いをしておりました。」


 聞いたことがある。メイド高にはテスト、作法、節度から序列が決められるとか。特に戦闘面や魔法師として優れている場合は特に上位に組み込めると聞いたことがある。


「ただ、確か沙月さんの場合は・・・・」


 そう、彼女が得意としていた魔法は水属性と生活魔法の数々である。更にとても戦闘向きでもなく、魔法師としてせいぜい本当に家事担当ができるレベルであることだ。

 確かにメイドとしては最高だが、この魔法世界では微妙な立ち位置だ。


「ご想像の通りでございます。私は魔五斗様が少々在り方が変わり始めた最初の頃に、魔五斗様の恩恵を授かっておりました。」


 恩恵????システムが人の身体をつかって何かしたのか?


「ですが、それは私も望んでいたところでした。このままでは孤児であったころと何も変わらないと。そのため、魔五斗様に触れてその創造の叡智を授かり、同時に私の魔法組織とこの肌質に加えて遺伝とその全てを貴方様色に変化させていただきました。」


 唐突に犯罪されました宣言をぶちかまされていいるんだが?僕の部屋でなければ捕まっていた案件だぞ。


 この国『日本』で魔法による監査厳しく、法を犯したものには重罪が処されることになっている。


「ただこんなこと知られたら捕まるってか、永遠に国の子飼いにさせられるか、なんかの実験動物だろうな。

 まあ、抑えられる奴が存在すればの話だが・・無論私はどちらも望まない。全ては革命をこの時代に再び新たな黒肌ブームを迎えるために。」


 生きてきた幼き頃から何故か執拗以上に「褐色」、「黒ギャル」、「黒人」、「黒肌」といった概念に何故か目が離せなかった。

 そう、まるで初恋が今でも続いてるような淡く色恋思い出のように。そこから魔法による可能性を探究した。より好きになるために、自分の望む世界を作るにはやはり時代を変える必要があると。


 例えば不意に殺害されたとしても、その執着が消え失せることはなく、むしろより可能性の実現に唯一心と魂が宿った。

 課題しか生まれない厳しい展開ではあるが、僕は諦めない。


「・・・・・まあ、結果オーライなのか?」


 大神はしれっと待機している沙月の露出している肌を触って確認する。

 やや興奮する沙月であるが、大神は単純な好奇心と実際の成果を数値化と魔法式解読のために分析しているだけである。純粋に邪な感情よりもどうしてこうなったのかを調査している。


「・・・・・分からん。だが、基準となる仕組みは遺伝子そのものを操作している。

 この流れだと脳内と人格もコントロール可能としている邪道の方式だな。電気信号は人の本質を変えるとあったが、まあ理論があるなら後は実践のみ。か。

 だが下手な改造は法律違反となるから、遺伝というよりは太陽的な・・なんかこう物質の再構成とかかな?うーん・・していい箇所とそうじゃない・・」


「あ、あの・・今日ここで初めてを迎えるのでしょうか?」


「うん?」


 ああ、気付いたら色々と触ってたわ。

 普通に考えたらど変態だな。それか変質者か。

 実験動物に触れるとはこんな感じなのだろうか?折角目の前に完成系があるというのに、どうも納得の行かない結果に目の当たりにしてるようだ。


「申し訳ない。ついどうしてこうなったのかと調べていてな。

 解析するのに最も手早いのが触れてみることだったからね。」


「構いません。もっと触れていただければと。」


 サラッと脱ぎそうだったのでその手を抑えた。


「今はこの結果にどう向き合っていくかだな・・ヒアリングしてある程度得られればいいが・・」


 なんと言っても魔法組織と魔力体自体も変化させてしまっている。

 この情け容赦ない魔改造にやや失望するよ、自分に。無意識でやってしまったんだろうけど・・・どんだけ深い執念だったのか?


「は、はい・・・先ず私自身はそもそも魔五斗様のご存じ通りのただの水属性の生活魔法特化型のごく普通程度の魔法師でした。」


「それは覚えている・・・が、何故だ?確かに途中から使えない素振りすら見えなかった・・・」


「そちらなんともです。ですが、倒れていた時からのご記憶はございませんか?」


「いや・・・覚えて・・・ない。」


 つか、待てよ。僕はそもそもなんで彼女が水属性ということすら覚えてなかった?いやいや、今になって思えば記憶すり替えだけじゃなくて、認識阻害もされていた?

 自分の力に自分が支配されていたと?自惚れるな?ということか?ただそれにしても今の今まで自分が力をコントロールしていたと勘違いしていたようだ。

 むしろ支配されていた。あの死んだ日から今日含めた毎日が。


「魔五斗様・・・」


「いや、大丈夫・・続けてくれ。」


 大神は狼狽える。しかしシステムによる理性から修正される。


「はい。魔五斗様に何があったのかは存じ上げません。ただ分かるのはいつもの元気だった方が憔悴していたこと。

 もちろん、病院の手配をしようとしましたが、その時に恐らく無意識の魔五斗様が私の手を掴み拒んでおりました。

 そしてその無意識から特殊な魔法を発動し、今の私を()()()していただいた。というところです。」


 再構築というと、最早人間を作り直した。みたいな言い方だな。


「まるで人生と世界が全てすり替わったように私は再覚醒することができました。

 今までの自分では無くなってしまった喪失感より、この貴方様からいただいた神の如き変革に私は心から感動しております。」


 予め生まれつき決まっていた能力値を変えられる。再覚醒が正しいのか知らないが、更に上へと進化できる。この事実が発覚するだけできっと色んな国から暗殺か勧誘を受けるんだろうな。


 事実今のこの世で再覚醒者は居ない。ダンジョンで新たな魔法を身に付けた話は聞いてはいるが、それも属性が変化したり、魔力量が上がるといった事象は一切起こり得ない。


 世の中に奇跡は起きない。


「水から何属性になっただ?」


「はい。再検査を以前の母校でさせていただきましたところ『無属性』という診断でございました。

 ただ使える魔法は先ほどお見せした「鎖」こちらが生成可能でした。それ以外はどうも難しく金属物質系ではあるとは思いますが・・ご期待に添えず申し訳ありません。」


「いや、謝らなくても大丈夫だ。むしろ逆を言うと鎖にまつわる物で製作過程を考えれば汎用性は無限大ということか。

「無属性」魔法自体、特定の力に偏った傾向にあるのは自分然り、沙月も同じくというところだ。

 そうなると1に対する力は凄まじいが、それ以外が使えない。となる。」


「流石でございます。正に仰る通りでございます。

 逆に水属性から切り替えさせていただいたことで、私の活動範囲が今の数百倍変わりました。

 お陰で無事に首席で卒業することも叶いました。」


「それはなんと、おめでとう。」


「滅相もありません。全ては貴方様のためにと。」


 人格変えた訳じゃないよね?そこは聞いてないってか、聞いて返ってくる内容でもないけど。


「もう少し過去の話からしてくれないか?例えば倒れている時の自分の状態から。」


「かしこまりました。

 倒れている。と仰っていたので恐らくご記憶にはないかと存じますが、逆です。

 休まずに活動しておりました。私も負けられず奮闘いたしましたが、半ば虚しく着いて行くことが叶いませんでした。」


「!?」


 動いてた?おいおい、だってどう考えても・・いや僕の意識は限界があった。

 だが、身体をそもそも魔法・・と言えばいいのか。よく分からない()()が僕を支配して余計なことをやらかしていた。


「ちなみにどこまで把握している?」


「この部屋内であれば隅々までです。ですが、外出の際はこの付近を観察されてからは足取りを追うことが叶わず・・・・不出来なもので大変申し訳ありません。」


「いや・・それは気にしてない。」


 外出??


「何をしたとかも言ってない・・感じだな。」


「申し訳ありません。」


 他にもなんかやらかしているなこれ。

 過ぎたことを悔やんでも時間の無駄ではある。こういった思考にさせられるシステム化には腹が立つが、助かっているのも事実である。


「常に私へのメンテナンスを欠かさず調整しており、お陰様で完成へと至りました。

 全て貴方様色に染められ、大変な名誉をいただきました。」


 メンテナンス?何やってんだ人の身体で!

 犯罪に犯罪を欠かさずやってるのってアホか。久々に感情が荒ぶる。しかし凄まじい勢いで強制的に沈静化させられる。


「お互い大変だったな。」


「私にとっては人生が幸福へと変わったため、苦労など恐れ多いです。

 首席で卒業できたのも、魔五斗様のお陰でございます。本当に感謝申し上げます。」


 深々くお礼をされるも、それを手助け?したのは僕であって僕じゃない誰かだ。

 ただここで説いても無駄であろう。


「そうか。」


「では、お食事の支度をさせていただきます。本日の献立は白米、お味噌汁、鰤の照り焼き、キャベツの千切りのトマトときゅうり添え、お漬物でございます。」


 しれっとだが、これここに住むつもりだ。いや予測できてはいた。計算というのは感情も時として算出することが可能とする。

 ここにきた時点で分かってはいた。


「そうか。では頼むよ。」


 後作り上げた美人さんなので拒む理由もない。

 むしろ心待ちにしていたぐらいである。再現が納得いかないが。


「だからこそ研究を諦める理由にはなり得ない。」


























 朝である。目覚ましはない。自動で体内ソフトによって叩き起こされる。

 自然意識を起こされて目を開けると。


「何してんだ?」


 ついいつもの感じとは違ったトーンで話してしまった。

 無理もない。目を開けたら美人が僕に覆い被さるように上から見つめているのだから。

 普通ならドキッとするが、未だ納得のいかない結果に素直になれない自分がいたためか。


「つい寝顔を凝視してしまいまして・・ご馳走様でした。」


 何が?


「朝食の支度ができております。

 おにぎりの梅味、沢庵、お味噌汁、卵焼き、ウインナーでございます。」


「ありがとう・・・」


 これ本当に共生して行く感じだな。研究上手く進められるかな?


 朝食後に僕は学校の支度をする。かなりの出来事が一気に大波のようにやってきたせいで、やや疲れている始末だ。

 賢者、変化、次元の先、学校とどれもきな臭い状況である。


「さっ、行くか。」


「かしこまりました。」


 あ、そう言えば普通じゃない出来事その2が・・

 メイドさん服ではなく、ちゃんと制服を着込むがスタイル良さも去ることながら、どの角度から見ても綺麗な美人である。

 それがいきなり僕の隣に歩くという非現実、そして何故それをさも当然のように受け取っている僕である。


 これも魔法の力としておこう。


「どうされましたか?」


「いや・・・行こうか・・」


 足取りが重くなる日がまさかやってくるとは。


 そんな登校途中、やはり騒がれる。特に隣へ追加で現れた三上啓介である。

 今もなおうるさい。少し黙らせるために声帯だけ分解して消し去ってやろうか?とも考えた。

 隣の沙月もフル無視している。さっきから視線が僕か周囲を探る行為以外に興味がないらしい。


「・・・・どういうこと?」


「それは僕が聞きたいよ。」


 黒田さんとばったり会うも、その状況に困惑している様子である。エルフでも困惑するもんなんだなと珍しい一面が発見できた。


「あ、あんた!」


 これまた追加で現れたのが城戸真凜である。なんと数奇な運命であろうか。ここまでは予測なんて不可能だ。

 まあ、気配と周りの視線から察知できたが。


「これはおはようございます。」


 紳士らしく挨拶を振る舞うも、何か言いたげな様子である。ただ後方から殺意ある聖剣の魔力攻撃をキャッチする。

 しかし後ろは振り向かない。


「っ!」


 その攻撃を防ぐのは沙月である。グルグルの鎖の塊がその攻撃を正面から防いでいた。

 本人は涼しそうな顔で止めており、その先にいる攻撃した張本人を鋭い目付きで睨みつけている。


 やがてその衝撃が収まっていく。鎖自体は一切傷が入っておらず、そのまま魔法空間へとズルズルとゆっくりと仕舞われていく。


「邪魔するな。」


「邪魔?ですか・・これは申し訳ありません。魔五斗様が出られるほどの威力でもなかったため、つい防いでしまいました。失礼。」


 綺麗なメイド流のお辞儀と煽りによってより殺伐とした空気へと変わる。


「京太!邪魔しないで!」


「邪魔はお前らだっ!」


 また兄妹だか姉弟だか不明だが、とにかく痴話喧嘩が絶えない1日になりそうで不安である。


「何かご用でしょうか?」


「当たりめーだ!テメェをぶっ倒せば少なくとも俺はこの1年で強いってことを証明できる!」


 余計な話をベラベラと語る京太である。周りもその台詞にアイツが?とヒソヒソと話題が募っていく。

 そして、いつもの電子魔法の波長と魔力を感知する。恐らく音と監視カメラから発見したのであろう。


「野次馬が多いね・・」


 ボソッとつい言ってしまった。いつものように心に秘めれば良かったものを。


「ここら全員を消しましょうか?」


 こういうことになる。


「やらなくていいから・・・」


「無視してんじゃねえ!」


「ああ、これは申し訳ない。」


「!!・・・煽ってんのか!」


 今度はマジの聖剣を振り翳そうと接近するも、またしても沙月が間は介入する。


「どけ!」


 剣で薙ぎ払い、追い返そうとしたが。


 鎖を束ねた槍が下から飛び出し、剣を上は弾く。


「!!」


「はっ!」


 沙月は京太の胸あたりに張り手をして奥へと突き飛ばす。張り手が衝突した瞬間に鈍い音が鳴り響いていた。


「ふぅ〜〜・・・」


 お見事な達人技であった。どこで学んだ武術か知らないが、見事な発勁であった。

 強いお姉様な上、美人ときたら最高を飛び越えて絶頂ではないだろうか?


「アメイジングだな。」


「なんでお前そんなテンション高いの?」


 三上にバレてしまうほどどうかしていたらしい。


「んんっ。では・・・・行くか。」


「あ!おい!」


 何事もなかったかのように彼等は再び登校していく。他を全て置き去りにして。

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