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6 分解

「そこまでだ。ここでそんなドンパチしたら誰かが瀕死になる。」


「な・・・・っん・・・」


どこか苦しそうに必死に訴えかける黒田が大神を睨みつける。また、それは城戸京太と城戸真凛も同じであった。


「ここは今知らない魔法師2人によって隔離されている。よって、ここで無駄な争いをすればお家問題に加えて自身たちの身分さえ危ぶまれるほど待ったなしだ。とこの三上が言っておりました。」


「そこまでカッコいいことしておいて、俺を引き合いにだすなよ~。」


「か・・くり・・」


辛うじて声を出す真凛である。


「まぁ、その辺は説明してもしょうがない。だからこの説明だけはしておこう。

 この魔法・・・・は『解体』だ。」


「「「!!」」」


3人は息を吞むように驚く。

解体と再生という世界の中で挙げられる2つの発動は愚か、その法則性すら不明とされている魔法のうち1つを目の前で実践していたのだから。

更にその男からは魔力における消費を全く感じさせない。まるで、息をするかの如く。


「詳しい話はしない。もとより面倒ごとが嫌でな。ただ今回分かっていることは、城戸天満賢者様に全てを聞けだ。僕だって何でここに呼ばれているのかも分からない上、この始末だぞ。

 ああ、ただ解体したのではなく、お前らの魔力そのものを極限まで解体した。

 解析できる奴らならそれぐらい可能な上、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」


ここには意味がある。流石に自身が戦闘中に相手の魔力量ごと分解するのには、一定の発動時間とルート解析が必要になる。

血液のように流れる魔力だけを演算処理と波長だけで追って捕まえるといった所業である。そんなものを自分が動きながらなんてできない。よくて発動された魔力を打ち消すことぐらいだ。

もしくは本人を跡形もなく存在自体を分解することだ。

もちろん新たなる時代の開拓者候補として居座るためにそんなことはしないが。


これも全ては研究材料と調査費のため、全ての女性を黒肌、黒ギャルブームを呼び寄せるため。あ、本音が出てしまった。


「いくぞ、三上。」


「あ、おい!これいいのかよっ!」


大慌てで僕の後ろについてきた三上の質問に回答してやることに。


「いいんだ。既に隔離空間事分解した。」


「は!?」


「だから先生もじき来る。つかもう来てる。」


そそくさに立ち去った理由は鳳凰寺先生が速攻で駆け寄っていたためである。流石にレディからの評価を下げる訳にはいかないので、今回はばれないように退散したのであった。


明日からだるいな。























黒田・ラクーシャ・カーチャ


分からない。この男の色、魔力、存在、性格その全ての実態が把握できない。

ある程度のステータスがエルフの私には分かるが、彼だけ。そう、大神魔五斗だけは何も見えない。


先ほどの3人の魔力を極限まで減らした力に加えて、使用不可とされている『解体』という。何もかもが摩訶不思議な人間?である。

ただ何故か今まで出会ってきたどんな人より気になっている。


エルフである私を軽蔑もしない、差別もしない、畏怖もしない。ただ単なる一人の人として接していた。同じエルフ一族である家族ですらそんな対応はしない。使用人含めて皆が何かしらの不平不満などを抱き接していた。


「ごめんなさい。黒田さん。」


「ええ、大丈夫よ。流石の私でもムカついていたから。」


「ありがとう・・・・」


城戸真凛という光の龍神の契約者にして城戸天満という賢者の娘と私は今共に夕方の帰り道を歩いている。

元々面識があった訳ではないが、過去の自分を振り返ったらつい味方してしまい、いつの間にか話す関係になっていた。


「やっぱり、彼が気になる?」


「ええ・・・・・あいや!」


「フフ!知ってる。別にそんなんじゃないってこと。

でも、あれは父様には聞かないとね。あんな怪物が入学しているなんて知らないし。」


「でも魔力1よね?」


「あれはね、開発しているのが人の手だから限界があるの。黒田さんも知ってはいるけど、魔力が無い者は0で、最低値が100なの。」


「ということはやっぱり・・・・」


「そういうこと。測定不可能ってこと。」


ますます気になってしまう。そんな闇の深い彼の存在に果たして自分が立ち入っていいものなの?

























「使ってしまった。人の思惑が絡んでたとはいえだ。ちっ。」


三上と別れた僕は残りの近い距離での家までの帰り道を歩いていた。


「こんばんわ。少しよろしいでしょうか?」


「これはこれは、なんと数奇なことでしょうか?今日で2人目の賢者様と出会うことになろうとは。」


政府直轄機関の『伊弉諾(いざなぎ)(つるぎ)』のトップである『千条渚』未来を読む人その者が大神の前にたった一人で姿を現した。

賢者相手に護衛など務まる人などおらず、かえって足手まといとなるケースが多々ある。


「とんでもございません。まだ22歳と若輩の身です。」


22歳で賢者にして若輩、本当に天才な上に才能まで与えられたということだ。

僕に対しては素晴らしいぐらいの皮肉さだよ。こっちはいつの間にか殺された上に人体魔改造を施されているのだから。才能なんてない身体に才能を無理矢理植え付けられたのだ。


「なんと末恐ろしいことでしょう。天も貴女を過酷な道に追いやってしまうとは・・・

 才など持ちたい者に持たせれば良い。その方がきっと楽にはなれるでしょうが、これもまた運命となるのでしょうか?」


詩人のような返しをしてみた。いや、正確には皮肉言われて言葉なんて思い返せないので。

多分、向こうの感情としてはそんなつもりはない。と言ったところであろうか。


「むぅーー!そんなんじゃありませんよ!」


22歳らしくないぶりっ子でした。


「これは申し訳ありません。

 意図してというより、私の口からでた非礼でした。22歳にしてそのお力、誰もが憧れの象徴です。」


「へぇ〜〜〜、そんなこと思ってないでしょうに。」


「滅相もない。」


よく見てなかったが、なんかやけに派手なファッションセンスであると感じた。


黒髪のショートにやや外側は跳ねる髪先、ヘアピンもおでこ辺りに添えており、ブレスレットやネックレス指輪といった数々の魔道具、中には魔法を感じさせないファッション的な物も。

そして、ショートパンツにベルトとトップス、ヒョウ柄のジャケットを羽織っている。

イヤリングもしており、結構派手なギャルに近いファッションセンスであった。


賢者様も人それぞれとは思ったが、天満の通常時もこんな感じにコテコテに装備されているのか?と思う始末である。


「まあ、いいでしょう・・・えーと・・・ここではなんですので、お茶でもいかがで・・すか?」


「なんで?」


つい素になってしまった。

患者からのデートの誘いにまさかこの身体になってから同様する日が来ようとは・・

人の感情はやはり読めない。が正解なところだ。AIがどんなに進歩したとしても人と相容れない訳を実感した。


「あ、あのー・・そのー・・・ね?・・あはっ?」


緊張感でテンパってるのは解析しなくても分かっている。そんなもん丸出しだ。

ただそう言われると僕にはその緊張感がまるでない。恐ろしいほど何も湧かない。

ただその出来事が些細な物事であり、数字しか見えない世界で生きる僕にとっては日常茶飯事であるかの如く。


ただ心の根っこにある全ての美しき褐色様たちには反応する。これは唯一残された自分の自我であり、人間としての魂の象徴と言っても過言ではない。

だからこそ今は無に等しい。


「えーーと、忙しいのでお断りします。」


「えっ!あ・・・・・」


時が止まるとはこのことであろう。誰しも予想だにしていなかったこと、または受け入れ難い現実を目の当たりにしたらそのような反応になるのは明白である。

大神の場合、既に人の身ではなくなったためか、そこはの理解はかなり薄い。

まるでAIのように定型分で対応しているかのようである。


「そ、その!だ、ダメですか?」


「申し訳ありません。本来賢者様のお誘いを受けるのが筋であり、大変喜ばしいことであるかと存じますが、私用もあり、急いでいる次第でして。」


主に新時代への研究のため。


「き、貴様っぁぁぁぁ!!お嬢様の一世一代の想いを無に返すかぁぁぁ!」


急に怒り心頭の30代後半ぐらいのおじさんがいきなり上空から突如として姿を僕らの前に現した。

魔力反応からなんとなく知ってはいたが、しれっと遠距離で観察してたところ居ても経ってもいられない。と言う状況であろう。


そもそも魔法以外もそうだが、あらゆるモノで僕を視認しようとしたら勝手に能力が反応する仕組みになっている。

外敵と判断したらその場で消し去る。だが、不快な視線などを感じなかったため、昨日のマーシャ先生の立ち聞きの件含めてスルーしていた。


この千条が何を見たのかは知らないが、そのレベルの視認でないと僕に悟られてしまう。ということである。

直接視る。この条件はあらゆる内容によってなし得る。僕自身が見てから判断して分析では遅すぎる。

そのため予めプログラム化して組んでおくことで解決する。自分にできないことをシステム化するのはいつの世の中そうである。


だから前回、城戸京太、フード少女、城戸天満、黒田さん、三上、鳳凰寺、マーシャは既に解析済みであった。

特に鳳凰寺様はより深く常に解析しております。ええもちろん、次世代の叡智のため!


ただ今日の城戸真凜は初であったため、数秒程度時間がかかった。その原因はあの龍神である。

感情による気まぐれを読めなかったため、ギリギリまで介入するのは愚策と奥手でいた。


「どなた様でしょうか?」


「うるさいわ!小僧!」


「ちょっ!じい!」


「お静かにお嬢様!此奴お嬢様の一世一代の心に決めた行動をこうもあっさりと!これは許せませんぞ!

 お嬢様の努力までもスルーとは!此奴此奴!」


何か風魔法を発動しようとしている?緑の色の詠唱魔法式が組み込まれている。

無詠唱ではあるが、心内ではその詠唱を行わなければならない。

器用に怒りながらもそれを実践しているということ。並大抵の努力では辿り着けない、正に実力者である。


「ちょっ!じい!」


千条も気付いたのであろう。

同時に高速無詠唱で!


「!!」


「あらっ!?」


2人の魔法を即効で分解した。


理由は千条の魔法が二重属性の雷と闇の危険な反応をプログラムでキャッチしたため、即座に分解した。

本来は様子見が正しいが、千条の怒り任せの魔法は割と洒落にならない。

賢者様も感情の制御をしてほしいものだ。


「これが・・・」


千条渚はただ分解された魔法式の発動を行ったとされる右手を眺めている。

しかし、千条のお付きの者は止まらない。


「どんな手品か知らんが舐め腐りおって!!」


今度は勢い任せに格闘術を行うつもりで接近してくる。

その素早さは並大抵の人間には反応するのは難しい。


「しゃらぁ!」


右アッパーをギリギリの寸前で避けた。


「ぬぅ!?」


続け様に体勢を崩そうと足元へ回し蹴りを入れようとした。

しかし大神はその動きを予想していたかのように最小限のバックステップで避けた。だけであった。


「・・・・何故最大の攻撃ポイントを見逃した?」


「?一体何のことですか?僕は避けるのに必死でとても次の攻撃なんて繰り出せませんよ。」


無理があるけど。本物の実力者相手にそんなのが通用しないのは知ってるが、言ってみることが重要である。

後ろのボッーとしている千条渚もそうであろう。賢者な上にアレと同じ実力は想像したくない。


「コイツ・・・本当に食えんやつだ!何故コイツを!」


「もしや・・・『未来視』をしてたのか?」


これは別案件だな。かなり不利な状態かもしれない。最悪の可能性としてここで全てを・・・・


「どこまで見えている?貴様の目には。

 お嬢様をどこまで分かっているのだ!?」


何故急に戦いを仕掛けられた上、賢者とそのお付きの方にとやかく言われなければならんのか。

しかし読めないのが、そこまで未来を見据えたとして、本人がここにやってきたこと。

確か、未来姫の弱点としては自身の見る映像が不明である。ということ。

つまり第三者目線ということ。


「何を見た?」


「貴方の・・・全てです。」


え?何でプライバシーないの?いくら見えるって言っても見ていいのとダメなのぐらい区別を・・

確か聞いたことがある。未来視自体は魔力や唐突な干渉によって見せつけられていると。意図して見える。のではなく、運命や巡り合わせによって見える。

それが頻発するのがこの千条渚である。


彼女がただの二重属性なだけではなく、賢者たる所以である。


「それで?良からぬ未来になる前に僕を消すと?」


「あ、いえ・・・そんなつもりはありません。

 むしろ、綺麗だなと・・・・」


「?」


なんてことだ、人の感情を読み取るプログラムなんて生成してないぞ。まさか開発を後ろ倒しにしていたことがここまで尾を引く現象となってしまうとは。

とんだ失態だな。


「お嬢様!」


「もう!うるさい!」


「あびばばばばぼばば!!」


強烈な電撃を真後ろから何の防御も無しに受けてしまっている。

流石にこれは可哀想と思うしかあるまい。


「あ、あの!」


「はい?」


この状況でよくそこまで・・・・・


一瞬で空気が静まる。殺意、憎悪といった黒く濁ったよくない空気である。

大神へ向けられたものではない。そう感じ取ってはいたが、どこか懐かしさを感じるのもあった。


千条周りにいくつもの魔力反応をキャッチした。

全て分解しようと動く前、既に彼女は動いていた。発動された鎖を全て視界に入れずに難なく避けていく。


「見えてます。もちろん貴女の場所も。」


彼女の振り払った手先からいくつもの黒色の稲妻が僕の後方へ飛んでいく。

魔力が発生した時点で場所は知っていた。しかし、何故か僕に対して殺意を感じなかったのでスルーしていた。


そして放たれた先から


「なんという・・・」


つい声を上げてしまった。

それもそうだ。2日目の学校にて出会った美女が現れたのだから。だが何故かメイド服で。


ただそれには何か見覚えが・・・・・・


「お久しぶりでございます。魔五斗様、覚えておりますか?」


そんな素晴らしい美女を忘れる訳がないが、何故か心当たりがない。

あったとしてもここまでの美しい方に出会った試しがない。

一体いつどこで僕は知り合ったのであろうか。

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