18 強襲する研究者
「な、なに言ってんだ・・・あのバカ・・・ガキの癖しやがって・・・」
少し動揺に震えながらもタバコを加えてカチカチと火をつけようとする。
紅のこだわりで炎魔法が使えるとしても、このライターから火をつける仕草を気に入っているためか、タバコ使用時は決して魔法を使わない。
だが、震えすぎて火が付かずタバコを諦める。
「亮治・・・・私はまだ何も終わっちゃねぇ。ただの女として生涯を飼い殺しにされるのなんてまっぴらだ。江だって望んでねぇ。
異次元からの来訪者?上等だ。ぶっ殺してやる!私がメスになんのはそのあとでもいい。どの道大神の言う力と仮説が本物なら私が戦ったところでってことなのは解る。だがじっとすんのはあまり好きじゃねーんだよ。実家も戻って来いって言うほどうるせー始末だ。
もう色々とうんざりしていたところに寝耳に水って訳だ。」
彼女はある一つの決断をしたのか、部屋を出ていく。
そして1Kのマンションへ戻ると人口密度の高い部屋に6人の強き褐色肌が勢揃いしていた。バトラーとして任務を終えた十界の5界と称される最上風見、異端の元賢者ヘルガー・マイリィー、謎の龍人メイドのマナ、無属性魔法の鎖使い『シーカー』沙月、そして『伊弉冉』の未来視をもつ賢者千条渚、その御付の三上啓介である。
「どう考えても俺だけ場違い過ぎるだろ・・・・」
1人ボスである渚に呼び出されて駆けつけてみれば、化け物の巣窟に1人のリスが巻き込まれた気分になっていた。
早く今回の騒ぎの渦中にある大神魔五斗を待ち望んでいた。
ガチャリと鍵が開く。
そして玄関からこの部屋へと姿を現した瞬間
「おかえりなさいませ、魔五斗様」
「お待ちしておりました、魔五斗様」
「お怪我はありませんでしょうか?」
メイド2人とヘルガーが即座に魔五斗の足元へ跪いていた。
しれって後ろには風見も控えていた。
「それ止めてくれない。その動作に無駄が多すぎる。普通に立って話してくれ。」
「なんか違う気もする注意だな。」
「お前いたのか。まぁ姿を隠す必要性もないからな。バレてる訳だし。」
「悪かったな。俺は俺なりに頑張ってみてはいんだよ。」
三上の存在は割とこういう話ができるのでこちらとしては人間の感情としての勉強が積めるので悪くない。
「マコどこいってたの?心配したよ。」
「すまない。鳳凰寺先生と出会ってな。」
「どういうことか詳しく聞かせてもらっても?」
ナギの唐突な詰め寄りである。
「お前ここは馬鹿正直に話す場面でもないだろうが・・・・」
といっても時間の無駄なので後々バレるよりも真実と事情を話すことが先決だ。
こうして大神は鳳凰寺との話を全員に共有し出した。
「いろいろツッコミたいけど・・・・」
「魔五斗様、それは確かでしょうか?」
「確かかどうかは不明だ。僕らはまだそれに遭遇していない。」
「私も遭遇はしておりませんが、そういった向こうの世界からやってきた奴等とはいくどか戦ったことはりあります。確かに強大であり、一都市を壊滅させるなど途轍もない実力を誇っておりました。」
「だろうな。」
「ですが、その人の姿形を変える。といった異形行為は何ともです。」
「進言をよろしいでしょうか?」
メイドのマナから何か言いたげの様子であったので、発言をジェスチャーで許した。
「ありがとうございます。
我ら龍人の古くからこういう言葉がありました。5人の創造主が揃いし時、5つの世界と一つへ統一すべく破滅を賭けた戦いを行う。」
「5人?・・・・・・今はいいが、そのうちの一人がこちらへいるということか?この世界が5人の内の誰かの候補ということか。」
その線は捨てきれないが、不可解なのがそういった存在は必ず王のような頂上の存在として祀り上げられている筈である。だがこの日本もそうであるがおかしな話、賢者や最近知ったが『ソーサリーバトラー』のような連中はゴロゴロと台頭はしているが、はっきりとした創造主といった存在はいない。
いや、大賢者がそれに当たるのか?とはいえ、大賢者も果たしてそんな大仰な存在なのかどうかも疑問だ。
それに異次元からの侵攻は未だ小さいが、ちょこちょこはこちらへ送り込まれている。そして謎の神器もそうである。わざわざ敵に塩を送るような真似をしているのもおかしい。
「仮説の仮設では立てようがない。しかし立証するのにある程度の情報がほしいが・・・・今の今まで押し通されてきたこの国含めた世界の秘密だ。
普通のやり方ではどちらにせよ不明であろう。ならば」
「強襲いたしましょう。」
ヘルガーは意外にも僕の考えをくみ取っていた。
「それは危険かと。いえ、失言をいたしました。正確には、魔五斗様以外は厳しいかと存じます。かといってお一人で全てを担ぐなど、魔五斗様から見ても不毛かと存じます。」
沙月の意見はもっともである。ヘルガーが納得してないのと血圧が上昇していることからややこしいこ都に成り兼ねないので。
「そうだね。でもこれが最も安全でかつ手っ取り早くてな。こうやって待っていても定期的に刺客を放たれていちいち相手にしているのでは流石に面倒だ。
それに僕には僕の最大の目的と研究が待っている。こんな下らない些末な内容はとっとと終わらせるに限る。そして真なる時代を解き放ち、僕は新たなる時代の体現者となる。」
世界の色黒流行を主流に!こんなところで躓いてなどいられない。とっととお片付けして先生のような美人さんを苦悩から解き放ち、僕の築く時代の後押しをしてもらいたい所存です!
「マコがなんかやる気なんだけど。」
「なんかいまいち読めねぇ・・・・まぁいつものことだけどよ。」
「ですが、どうされますか?」
風見は現状から大神がどのように行動するのかがいまいち理解できていなかった。
「うん?そうだね、まぁ近々どうせ先生がテロ起こすし、その時に合間を潜って潜入する方が一番バレずに済むでしょう。」
「流石は神です。」
「素晴らしいご慧眼です。全てはこれを成すためなのですね。」
「流石は我らが盟主です。」
「ちょちょちょ!おーーーい!」
ナギは流石にそうはいかないらしい。それが一番助かる。
「つまりマコはこうなるって解って根拠ある真実を話したってこと?」
「そうなるね。鳳凰寺先生は起伏や怒りと言ったトリガーが敏感な人だ。感情に流される人間は多くいるが彼女ほど義理人情に厚く、目的意識をもって実家からの圧力を跳ねのけて今に至る訳だ。どこかで隙あらば何かしらしようとしているのは解る。
ただマーシャ先生はこのことを知っていて、彼女に教職になる道を進ませたのであろう。真に大切なものとは何か?という人間の深層心理に関わる問題提起としてね。」
「お前頭良いんだか悪いんだか分らんが。」
むっ。三上に言われると不快だな。しかし鳳凰寺先生にも同じことを言われた。
「殺しましょう。」
「かしこまりました。」
「今までありがとうございました。」
「塵1つも残さずにバラバラにしてやんよぉ!」
ナギ以外の奴等がコンマ数秒で息ぴったりに。
「しょっ!ま、待ってえぇぇぇぇい!」
「ごめん、ちょっといい気味かなと。」
「お、お嬢まで・・・・」
「なんだ?話してみると言い。」
はぁ・・とため息をつく三上である。
「要するに大切なものと、俺らのようなこれからの奴らのために動くってことだろ。愛していた人や家族、慕っていた部下たち。確かに復讐とか仇討ちは良くはねぇし何も生み出さないけど、ただそこにはいろんな思いが詰まってんだよ。
別に果たしても何となる訳じゃないが、少なからず脅威を取り除くっていう意味にはなる。ただ心が虚しくなるだけだ。」
だから感情は不要と僕のシステムと力がそう語りかける。
「理性と理解の不一致か・・・・・・であるなら猶更だ。僕がこの戦いを終わらせよう。」
「随分と大きくってか、ここ最近の話し振りから何とかなりそうだよ。本当に。」
「ここは私が先行して。」
ヘルガーが僕に提案をするもそれは却下である。
無言で首を振った。何故なら私が作りしものたちは私のである。つまり危険がある場所へ送り出すという分かり切ったリスクは避けるべきである。しかし一人でやれることには限りがあるのと非効率である。
どの道、その謎の裏の人物には聞かなければならないことが沢山ある。
ある意味僕の核心に迫る問題にも発展する。そう考えるとリスクでしかない。この力の脅威性は計らずとも分る。だからこそその危険性の知見が広まらないように対策を講じる。
「大元は私が叩く。君たちには君たちにしかできないことをしてほしい。いいね?」
「「「「かしこまりました。」」」」
「マコ・・・・」
「大丈夫だ。僕は僕にしかできないことをする。それが最も効率が良くほぼ100%遂行できる唯一のやり方だよ。
だからナギにはかなりきつい役目を担ってほしい。」
「うん、いいよ。」
「なっ!?お、」
「マコのために動くならそれでいい。」
「安心しろ。そもそも危険な真似をさせない。むしろきついのはそういう意味じゃない。」
「戦闘面じゃ・・・ねえならなんだよ。」
「ああ、それは」
彼の口からある条件と千条渚にしかできない内容を通達する。
「!!」
「・・・・・・確かにきついね。あまり私がやらないことだし、これウチの実家も賢者たちも巻き添えだよね〜。っま、確かに私にしかできないことだからよしとしよう。」
ナギは謎に勝ち誇った顔をしている。隣のドス黒いオーラを他所にして。
今回の話は確実にお家ごとを巻き込んだ騒動になるのは間違いない。何せ闇を明るみにこの世の中へ放り込むという社会的抹殺と本体の抹殺がメインである。
「ただ最強の賢者がいるのって結構諸刃の剣じゃないか?」
「君の意見は最もだね。」
「相変わらず癪に障る話し方だな・・まあそれがおもろいんだけど。」
エージェント三上の意見はごもっともである。実のところ僕がこれだけ派手にやってても・・まあ結果脅威判定されたけど。
今の今まで騒がれなかったのは沙月のお陰かな。『シーカー』は『シーカー』内でその名前を聞いたことがある。とされているが、所詮は業界人である。有名になろうとも賢者ほど知名度はない。
「今回はヘルガーはお留守番だね。」
「あっ!へっは!?え!!」
流石に狼狽えていた。
「申し訳ありません。盟主様。」
「いやその呼び名分からないから普通に」
「かしこまりました、神よ。」
どの辺に教育の力を入れてたの?
「いや名前でいいから・・・」
隣で意気消沈しかけている最強の賢者様を他所にして、マナへと向き直る。
「かしこまりました。では僭越ながら魔五斗様、この度我が主ヘルガー様の不参加をお教えしていただけないでしょうか?
お恥ずかしながら御身ほど我等は完成しておらず未熟であるがゆえ、お手を煩わせてしまい申し訳ありませんが、何卒よろしくお願い申し上げます。」
「簡単な話、目立つのと国家間との問題だな。ドイツ側にその意思がなくとも、政府関係はそうはいかない。全面戦争や争いの火種やキッカケになりかねない。
付け入る隙を与えたくはないのと、どうせ囮役が必要になる。」
「囮役ですか?」
「今回の襲撃はもう予測されている。というより鳳凰寺先生と出会い、事件の詳細を話した直後にバレている。僕の存在は隠くすもなにも既に周知であり、敢えて鳳凰寺先生をその気にさせている事も込みで分かっている。
つまり襲撃するということは向こうも襲撃するということ。」
「で、でもマコの未来は」
「それは複数ある未来のうちの一つでしか無い。簡単な話、僕に関する条件が見えても相手のことは見えない。何故なら相手がナギ以上に魔力が強く、対策を立てられるから。
つまり、僕のみた世界が全てではなく、この場合はそのうちの一つと考えるべきだ。だからこそここに主戦力を置く。」
いやだって僕研究者だし、ノットマッドサイエンスだし。世紀の大発明家だからさ。戦うなんてきな臭くて無駄な行動嫌やし。
「では潜入は残りの者ということでしょうか?」
風見は改めてその様子を伺う。
その目はいつでも準備できているという意思の表れであった。
「メンバーは」
東京の中央区にある大きな丸いビルの前に1人の魔法師が姿を隠して現れる。
「おい、もう終わりだぞ。早く行った行った。」
警備員はいつもの如く、このビル『魔法省』へ訪れる人々をあしらっている。
だが今回は訳が違う。姿を隠している魔法師はなんの脈絡もなく魔法を展開する。そして容赦ない一撃を警備の横へと怒りの炎を放射し出した。
「あっ!!!ひっっっ!!」
チリチリと焦げ付く香りに警備員は腰を抜かしてしまう。
「っ!」
だが魔法省のビルは窓一つどころか、どこの箇所も傷ついていなかった。
魔法の素材でコーティングされたこの建物はある種要塞のよう硬さを誇っており、賢者でも生半可な魔法は通さないと言われるほどガッチリと守られていた。
「チッ。魔法具だけじゃなくて、魔法式自体も編んでやがんのかよ。」
薄っすらと見える対外的防止用の防護魔法とアラーム装置が機能していた。
従来の建物でここまでの警備性は予算の都合もあるのと同時に、ここまでガチガチに固められるケースはほぼなく、国の施設とはいえ魔法省自体は魔法による魔法の統括、建物ではなく己の魔力で対抗する。
京都の陰陽師のような由緒正しき家系にはある程度の防護結界があるが、今回の魔法省の防護魔法はかなりの強度を誇っていた。
まるで、ここには何かある。
「きな臭さは正解か・・ま、元々怪しいって噂で持ちきりだったからな。なら」
泡をぶくぶくと吹いて倒れている警備員さんのカードキーを入手する。
そしていとも簡単にスキャンして入場する。もう振り返らないという決意と共に。
「全てが仕組まれてるという先入観もどうかと思うが、ここまで露骨にどうぞ入ってください。正し一名様だけですよ。とアピールしてるのも癪に障る。
僕以外に出会ったことがないと見てとれる。」
「魔五斗様、かなりの強度です。こじ開けられなくはないですが、些かこの後ですと大分派手な事になってしまいます。」
「カードキー再生や復元はできないが、まあセキュリティ自体を分解して上書きは出来る。
といってもそれもまた侵入するからなーって知らせているようなもんだけど。」
「でしたら俺が建物ごと破壊しましょうか?」
「それは本末転倒が過ぎるな。
ま、どの道招待はお一人様だ。だからこそこの事を予期できていなかったのか?いや舐めている?だな。
後気になるのが・・・・・」
鳳凰寺先生が放った魔法の衝撃音はかなりでかい上にこのアラーム。なのに誰も反応しない。
人払いの魔法が既に敷かれている。
カードキーも1枚だけ・・・・何のために・・・・ああなるほどな。
「アイツ潰すか。」
大神はスキャン装置に手を出して魔法を発動する。
施設内は燃え盛っている。資料も魔法陣も何もかもが燃やされている。
「どこだ?どこにいんだ!?」
紅はただ適当に入り口を探るように魔法を連発する。後の事など考えてすらいない。ただひたすら前を進み続ける。
阻むものは燃やし尽くす。
「畜生がぁ!どこもねえ!ただあまりにも何もなさすぎる・・・!!」
紅はふと気付いた。何故先ほどから施設内を燃やし回っているのに一切警告音がならず、物が崩れないのか。
更に不気味になる空気感に包まれていた。まるで誰かにその動向を観察されているかのような。
「あん時に近い・・・分かるぜ・・・ああ、このうぜえ感じよぉ。」
紅は幻術に引っかかっていた。本人もそれをようやく認識した。だがその術中から逃れる術がなかった。それでも止まらず進み続ける。
「・・・・・かなり高位の魔法だな。いやこれ魔法なのか?」
「魔法・・・とは言い難いですね。何か・・・こう。術のような・・自然現象に近い何かですね。」
「まあこんな事だろうと思った。風見」
「はい。」
「後は頼んだ。ここで相手してやってくれ。核を分解すれば終わるから。ちょい待っててな。」
「かしこまりました。」
風見も何かを察してはいない。だがそれでいい。
「魔五斗様、お帰りの際はなるべく大きな道を作っておきます。堂々と正面からお待ちしております。」
「そうだな。たまにはバレなければ何でも良いってのをやってみるか。」
客観的に見たら意味深な会話である。だが、2人には今の現状が分かる。方や理性で理解している。片方は本能で何となく理解している。
双方異なるタイプではあるが、共通認識は同じ。
「行くぞ、沙月」
「かしこまりました。」
風見を置いて室内にある壁方向へ進む。すると、そのまますり抜けて別の通路が目の前に現れる。特殊な魔力のような別の力を感じられる。
「魔法以外となると?」
「はい、恐らくはこれは呪力による物です。」
ほほう。これは知らん。だって陰陽や呪術者の類は僕の研究と未来に非常に不必要であるから。
呪力と魔力、違いはあれど現代魔法における即時性と有効打が圧倒的とされている。つまり、古来よりしきたりや由緒ただ式と言った伝統性があるとされているものの、現代においては使用者がほぼいないに等しい。
また、魔力とは違い呪力という苦行や修行などを通じて会得する力であるため、魔力無き者でも習得が可能とはされている。だがその苦難は計り知れず、道半ば諦める者、挫折する者がいるため実際の習得者は少ない。
「何故魔力としても感知できるのか不思議な点があるも、今回の相手は歪だな。確実に侵入者を弄ぶ気が満々なのと強い自信が窺える。
これは早くつかないと先生が危険だな。」
「異常さはあるかもしれませんが、姿形を変化させたという異次元の存在ではなさそうですね。」
「ハズレでもないが、当たらからずとも遠からずか・・・ここまで深くきて気付かないから、まあ本体の可能性はほぼ0だな。」
「魔五斗様のお宝の前では全てが無力です。」
そこまで大仰な事はしてない。ただ真正面から機械自体を掌握して、呪力なんだか魔力なんだか知らないがとにかく不可思議な力には抑圧的な魔法よりも、上書きと修復で存在という名の記録を消すほうが早い。
魔力にせよ機械にせよ、人の通った履歴は何かしらで確認する手段がある。
それをちょちょいっといじっただけです。
「ですが最上に集まったアレらは?」
「ロボットに呪力を込めているだけに、侵入者用の物理的防御システムとして機能させているんだろう。
割とやってることはキョンシーの機械版だが、無限に湧いている事から結構な仕込みを仕掛けている。ただ反応しているのはあのフロアで迷ってる鳳凰寺先生だけで、それらに反応して動いてる。
だからたまたま僕らを視認してエラー起こしてる感じだな。ただ悪質なのが迷ったら消せという命令だけ機能している。」
「だから風見を置いてきたと。彼の崩壊という特殊な魔法で記録の抹消を図はのと同時に、彼を引き立てると。
確かにこの方法ならこちらには気づきませんね。」
いやそこまで深読みしてない。単に先生への危険を減らすのと、先生自体を通さないようにすること。この2つの役割なだけ。
どの道向こう側の存在様とやらはここに入った時点で確認している。何となく。計算じゃなくて勘です。
「ロボットの特徴はエラー時の対応、システムによる一括管理と言ったことから扱い易さは魔法より上だ。」
「魔法は調整が必要なのと、本人の技量によっては変わるのと、人による差が生じますから。
ただ陰陽は修練による・・そうは聞いていましたが。」
またしても札付きのロボットが狭い道を塞ぐように待ち構えていた。侵入者迎撃用であるのは間違いない。動かないのが何よりもの証拠である。
面倒いので動かないうちに分解しておく・・あいや、上書きしておこう。
ロボット自体のシステムを書き換える。システムは侵入するには静かに行わないといけないが、入れば後は分解して生成するのみ。コードを一部変換し、僕らの侵入を視認しないようにする。正確には僕らを見過ごせ。ではない。そもそも僕らが見えないのようにする。
この違いはかなりでかい。見過ごす場合、システムに記録として残ってしまうためである。
そして何事もなく、誰も何も感知することなく無事に建物の一番上までエレベーターで直行した。
先生たちがいるフロアにはもう一つ階段があり、そこから最上階へと昇るように誘導していたが、実のところこういった階層には必ず裏道として最上階までの直結型エレベーターがある。
お偉いさんやその異次元のお方といった人たちをいちいち階段や常務用エレベーターで向かわせる訳がない。
チーンと無事に最上階へ到達した。




