17 弱者から強者への対価
『誓いの命』というなんとも名前の通り、ある一定の主人に命を繋ぐ一生の忠義を繋ぐという『禁忌』とされる契約魔法の一種である。
奴隷法や不当な契約といったことを法律などで制限していることから分かるが、効力が魔法の有無ではだいぶ違う。
つまり簡単な話、契約内容でお支払いを1日たまたま口座にお金がなくて引き落とされなかったから未払い。という事なので連絡などせずに、魔法による罰則が働くという強制を促す。
こう言った件から『魔法で縛られる。』詐欺が横行、不平等な契約といった取締りから禁じていた。だがコイツはこともあろうか、どこで探して身に付けたのか知らないが・・・・・いや闇魔法師であれば魔導書やネット、裏ルート情報で知れなくはない。方法は幾らでもあった。むしろそれらを取り締まれない政府に問題ありだな。よし!
「神よ?いかがなされましてか?・・・はっ!もしや不手際が!?」
先ほどから強制的に感情をシステムに抑制されっぱなしだ。システムもよくパンクしないでエラー処理し続けているよ。本当に自分の能力スペックの高さに驚くよ。
だからと言って全ての意識をシステムなど委ねるつもりは毛頭ない。
「いや・・・・・むしろ堂々とそれを言うかねと・・・まあいい。
では、マイリィー」
「ヘルガーとお呼びくださいませ、なんならメ」
「ヘルガー・・・・現状を知りたいのは山々だが、今はここいらを退けてからにしよう。
どうも暴れ過ぎてしまったのと、あちら様も制限時間がオーバーのようで規制が解除されている。ナギ。」
「え?ああ・・・そういうこと・・・・確かに私宛に大門さんから急行してるって連絡きてる。あ、希美姉も来るって。」
「まずいな。この場をこれ以上見られるのは早計だ。」
主に僕がね。しょうがない。
「沙月、ヘルガーこの場は頼んだ。」
「「かしこまりました!」」
息ぴったりの返事の直後に僕は超速攻でこの場から走って離脱した。足に魔法式と速度上昇と隠密性に長けたソフトを即席で導入し活用した。
筋肉繊維の強化と速度上昇に加えた、肉体の空気抵抗理論を計算で覆すことで従来の魔法師より素早く活動できる。
ただ運というのは計算ではどうにもできない。
「おわっ!びっくりっ!したぁ!」
勢いよく離れ過ぎたせいか、何故か曲がり角で鳳凰寺美教諭とばったり出会してしまった。
大神が去った後の現場
「・・・もう少し、その御姿をこの目に焼き付けて永遠に保存できるように写真に収めるべきであったが、ここいらを清掃しなくてはな。」
ヘルガーは大神へ跪いた時点で自身の放った魔法を解除していた。何故ならその異様な光景に皆が息を呑むと分かっていたからである。更には後方にあるマナという龍人メイドが警戒をしていたせいか、より動けずにただ静かに見守っていた。
「へい!ヘルガーじゃないカ!?どういうことだい?君たちドイツ支部もかい?日本とは同盟と・・」
「何を言っている?下賎なゴリラ風情が・・・・
ドイツ支部?どうでもいい。バトラーなど当に辞めた。賢者の称号もさっき返還してきたばかりだ。」
「横から申し訳ありません、補足させていただきます。
確かに辞めるための申請手続きをしようとされましたが、国家絡みで止めようとされたため力業で辞めてきた。というところでございます。なので我々は政府とは一切関係のない者となっております。
ですので、皆様をここで一斉処理しても問題ない。ということになります。」
「OH!それは驚きだよー。だが穏やかじゃないねえ・・・・」
アレクシスはより一層警戒度を高めた。
相手が賢者の中でもトップ1として世界から功績を認められており、その資源価値に加えてドイツのバトラー1界に君臨し、統括支部長として活動していた英傑であるといったことから、自身の持てる最大火力でも疑問を抱かざる終えない状態となっていた。
現にヘルガーの純粋な重力魔法の魔力と質量だけで押し潰されていた。何よりも実力差を見せつけられていた。
英雄のプライドゆえに引き下がらない。ただそれだけが彼を動かしていた。
「そうだな・・・・で?御託は以上かな?」
ヘルガーの周りに黒い球体がいくつか発生する。禍々しく歪なそのエネルギーから引力と謎の吸収力が作動していた。
「ちょちょちょ!?」
いきなりやらかそうとするヘルガーの様子に狼狽える千条渚である。
「チッ!おい新人!巻き込み過ぎだ!魔五斗様の命を忘れたか!?あの人は無闇矢鱈に命は奪わないのと戦いそのものを不毛と捉えている!」
沙月の訴えにヘルガーは顎に手をやり考えて末、一旦止めた。
この行為にマナはやや驚いていた。興奮で尻尾がブンブンと動いている。
「別に貴様の言い分で止めた訳でもない。そんなことより、思ったよりも駆けつけてきた奴らが早かったという事だ。」
「それは遅くて悪かったな。」
大門護が自身の刑事課を率いて登場していた。そして全軍で包囲網と結界を構築し、この場を押さえつけようとしていた。
そして大門自身もいつでも拘束できるようにと魔力を練っている。
「大丈夫か渚!」
「希美姉!?」
千条渚の元へと即座に近寄り後ろから守るようにギュッと抱きしめていた。
「たっく、危ねえ事しやがるな。あ?んでこんな大物たちが勢揃いしてんだってんだ。」
「希美、あまり気を緩めるなよ。」
「分かってるよ。ただこの状況は一体・・・」
「日本の賢者の皆さんご機嫌よう。」
ヘルガーが日本の賢者たちへと振り向く。だがその異常さまでは消せていない。マナも隣でぺこりと一礼する。
「さて・・・此度の戦いは全て勘違いであった!ああ!なんということでしょう!」
「マイリィー様それは余計に煽っております。」
「でしょうね。私がここにいることがそもそもだし・・」
ヘルガーは視線を周りへと移す。
「まあ、少々目障りな連中をかき集めて遊んであげていただけ。」
「ヘルガー・マイリィー・・・賢者の中でも重力魔法のデバフ支援系としてエルフながらその魔力量含めて有望株としてドイツで重宝されていた賢者のはず・・・攻撃性は極めて低い魔法系統だったはずなのに、どうやってそこまで変化を遂げた?
在り方を変えたというレベルではない。まるで存在そのものが変わったみたいだ。」
希美からある疑問点が投げかけられた。沙月や渚はこの現象に心当たりしかないためどう答えるのかただ静観していた。
「さあ?あるダンジョンで死にかけて嫌だからなんとかしたんじゃないとしか。というかそこまでいい記憶でもないし・・まあ当事者は全員消したけど。」
そこには狂気を浮かべた表情ではあるものの、だが何故か妖艶さを感じ取ったのか不思議と悪い気分にならない。
「マイリィー様、これ以上は。」
「ええ、まあ・・・あれはあれで楽しい思い出だったからいいけど・・・・今は退散しますか。」
「ま」
「よろしいですよね?」
マナの強烈な殺気を感じ取る。沙月も本能的に警戒体制を取った。ぎろりとした眼光は相手を射殺さんとしない視線をであった。
「ほら皆さん行きましょう。家に帰りますよ。」
「・・・・・・」
沙月は渋々従い、ヘルガーたちは着いて行くことに。
渚は1人オロオロしているが、ハッと我に帰っては希美へごめん!と言い立ち去って行く。
あまりのあっさりとした光景に周りは呆然として暫く時が止まっていた。さっきまでの死闘がバカらしく思えるほどに。
そして大神へと戻る。
「これはこれは運命ですね。」
「あ?何言ってんだ?」
ポカンとする姿も美しきことか。ただ索敵を怠った影響か、一心不乱に逃げていたこともあったのかどうしてこんなところへいるのであろうか。
「これは失礼を。ですが、どうして?」
「・・・・・まぁ・・・・野暮用・・・ってとこだな。」
「左様でしたか・・・」
「んで、お前は?」
「僕も少々厄介ごとから逃げてまして。」
嘘のような真実です。誤魔化していることは否定しない。というより嘘をつくという行為がほぼ無駄なのは世の中から統計がとれている。
「ふーーーーん・・・そっか。んじゃまたな。」
先生はどこか悲痛そうな哀しい表情と共に別れを告げた。
「鳳凰寺先生、本当どうされたんですか?いつも活気というか。」
「んだよ、ガキが一丁前に心配してんなっての。ただの私事都合なだけだ。」
元気がないのは確かである。人の事情には首を突っ込まない。これは面倒ごとを避けるのと同時に自身の名誉と将来の新時代到来の際にやってくるであろう、貶めようとするリスクを軽減するためでもある。
しかし先ほど言った「嘘」という部分にも関与するが、噓をつくことは不毛である。それは自分ですら例外はない。
嘘を付いて得する事象など無いに等しい。更にこの魔法が発展した現代においてそのような些末な内容はすぐにバレる。そして亀裂・諍い・怒りといったまたしても人にって不必要な感情が生まれてしまい、無駄な時間を浪費していく。
その嘘は早いうちに解明することに越したことはない。だが、人の嘘は人が真実を話すのに必要な準備期間でもある。それを短縮すること。それ即ちリスクの発生と原因の除去が絶対の定義とされる。
「嘘ですね。私事都合ではなく、鳳凰寺家における鳳凰寺紅の処遇、いえ数年前に起きた『百鬼夜行』事件における弟を殺害したことと、多数の死者が発生したことについてですかね。」
「!!・・・・・・おい・・・・どこでそれを?」
咥えタバコをほろりと自然に落とす。
もちろん自分が物心ついて間もないこの時期、そして僕が僕になる前の事件であるためあまり事情は知らない。だが今の現代ネット含めた記事などで調査など容易に可能である。
ちらっとしか検索はしていなかったが、彼女の様子からしてこれが原因と言っても間違いがないとされる焦りと心拍数が表示されている。メディカルシステムからは身体に異常は起きていない。つまり確信に近い何かが彼女のバイタルを不安定にさせていたということ。
「はぁ、まさか年端もいかないガキに気を使われるとはな。だが首を突っ込むのは感心しねーな。」
「別に戦闘を目的とはしていませんよ。ただ僕が先生にとって答えになれると思ったので。」
「あ?それは魔法か何かか?変な電波とか冗談言わねーよな?」
ボキボキと先生の拳が準備をしている。
「先生には明かすと、どうも僕そのものが魔法組織そのものらしいです。」
「はぁ!!?」
真実を告げるのが手っ取り早い。というより紅先生の美しさについ言いたくなってしまった。これも己の魂へのサガなのであろうか。しかし不思議と悪くはない。
「魔法組織・・・つまり術式や魔法式といった事象を介さないで魔法を行使する。もっと別の言い方にかえますと、歩くことが魔法になり、息を吸って吐くことが魔法行使になる。ですかね。」
「あのな、意味は知ってんだよっ。そうじゃなくてだ・・・・あーーーーもう!分かった分かった。ちっ!ウチに来い。男を家に連れ込むのも変な話だが、ここで話しても埒が明かないのと誰が聞いているか分からねぇしな。
ただ生徒と先生だ。わかってるよな?」
「もちろんです。だからこそ僕も秘密を打ち明けました。」
自身から真実を告げること。これは人の安心と信頼を買うには手早い。ただ真実にはそれなりの大きさが重要である。今回のこの発言は金輪際誰かに話すことはないであろう。
何故なら、それが僕の弱点でもあり僕の利点でもあるからだ。
そうして黙って歩くこと30分ほどして、あるアパートに辿り着いた。1階の一番奥の扉までやってきた。
「おい、あんまここでは大きな声出すなよ。となりマーシャだからよ。
あいつに見つかるとうっせんだわ。」
「これはかなり警戒の必要な話ですね。遵守しましょう。」
あのロリッ子は面倒だ。というより、仲が良いとも受け取れる。
ガチャリと部屋へ招いてもらうと。
「失礼します。」
割と健康的な部屋であった。もう少し酒瓶やタバコのごみが散乱していると思っていたが、そうでもない。ただ家具が少なくどこか殺風景な感じである。
「んだよ、何意外そうな顔してんだよ。魔法組織そのものでも驚くことあんだな。」
「失礼ですよ。僕もこう見えてれっきとした普通の人間ですよ。」
「そうかい、それは失礼したな。」
してやったりと感じたのか、ややご満悦にニヨニヨとしていた。
「茶はないが、水ぐらいなら出すぜ。」
「いえ、お気遣いなくとも。」
「そうかい、んじゃコーラな。」
もはや子供レベルに下がった。物理的年齢はそうだが、どこか悲しくもなるな。
「っでだ、お前例の事件はどこまで知ってやがる。」
「表面的な内容ですかね。あとは推測の域でしかと。」
表面的とはこうだ。百鬼夜行という妖や怪異といった存在が街中で跋扈する事件が発生し、一般人への被害や町の被害を防ぐために鳳凰寺家が派遣され、それを見事に退けたと。
だが、その記事にはある裏が一部暴露されていた。
そうそれが、鳳凰寺紅による身内の殺害とそのほか部下含めた数十人の撲殺である。一説では妖に乗り移られたための処置とも言われ、事件自体は冤罪で闇に葬られていた。だが実態はだれも知らない。
いや、政府直下にある朱雀機関の一部の者たちは真実を知っているのであろう。鳳凰寺家現当主『鳳凰寺炎真』含めて。
賢者ほどではないが、炎から生み出される生命力と火力は歴代当主のなかでも目を見張るものがあるとされている人物である。それと同時に紅先生の実の父親でもある。分家ですらない本家の。
だが、殺害されたとされる弟と妹も本家の血を引いている。そのため紅本人が切り捨てられたとしても問題はないが、敢えてどこかの分家で子供を数人身ごもり跡取りとしての装置扱いで今も鳳凰寺家へ籍を残している。
非情ではあるが、魔法師たるもの血筋や遺伝子にはこだわりがあり、本家の存亡のためには死力を尽くすのが礼儀とされる。今回の件はさしずめそれが関与しているのもあるのであろう。
そして事の発端である事件だが、全てがきな臭い。
『百鬼夜行』自体はそこまで騒がれるような事件性が非常に高い騒ぎでもないのは現代魔法が呪術や陰陽といった時間や古式的異能よりも速度制度ともに優れており、その古い力に敗れてしまう相手など造作でもない。というのが見解であり事実だ。
だから賢者やつい最近まで知らなかったバトラーたち、そして『シーカー』本部たちが動かず、朱雀機関の伝統ある格式の鳳凰寺家へ白羽の矢が立ったとされる。分家含めて炎属性には長けている実力者が勢揃いしており、術札のような紙切れや魔法式や術式を消し炭にするなら一番うってつけのお家ともいえる。
「だが気に食わないのが、事件の発端であるいきなり百鬼が始まった。だ。少なからずナギのような賢者の目から逃れられない。ナギが当初は不安定で未来を見通せずともその当時の奴らがそんな大規模な事件を事前に見逃すはずもない。」
「お前、マジで魔法組織そのものなんだな。無属性とは言ってんが本当は探偵か何かの見透かす能力か?」
「そんな大層なもんじゃありません。ただあらゆる事象と根拠を暫定的に調べて答えを絞るといった割と簡単な手法です。
鳳凰寺先生がそこまでの大胆な行動を取られるはずがない。というのが前提でもあります。」
「けっ。マーシャみたいなこと言ってんな。」
「少し違うのが根拠があることですかね?どう考えても先生が身内や分家含めた人たちを乗り移られたからといって殺す理由が見つからない。
これではまるで、真実を闇に葬るために政府とお家が手を組んだとしか見て取れない。いや、従わざるおえない?でしょうか。長女である以上は本家の存続という意味でも価値があると。」
「お前よく人の心が無えって言われね?」
はて?何か間違いてしまったか?・・・
「素で言ってんのかよ・・・まあいいや、あんま気にしてねえし。つっても今更そんな与太話誰も信じねえだろうよ。
私が確かに全員をぶっ殺した。ただその事実に間違いはねえんだよ。」
そう言って彼女は新しいタバコに火を点ける。
「ふぅ〜〜・・・・昔公安で勤務してた時があったな。代々お家柄上取締側で勤務すんのが多くてな。うちの弟や分家の仲間たちも私の後に着いて来てたっけな。」
「慕われていたんですね。」
「心にもねえこと言うなっての。」
心はないからこそ手痛い返しだ。
「百鬼てのは然程珍しくねえ。なんたって陰陽師の家系とかある訳だし、そいつらが専門の討伐隊って考えれば私らが出る幕なんてそもそもねえよ。
けどな、『百鬼夜行』の事件、あれは確実に今までのそれとは違った。確かに私は視たんだ・・・異次元の奥底にあった狂気を。」
またか・・・と言いたいが僕が僕なら前から動いていたと見るのが普通か。どうも周りの力の発現やら事件やらで色々と慌ただしい。
ナギの千条家への引き取りと神器の件そうだが、このことを政府は予め知っていた。というのが確実になった。
異次元の奥を見たもの、もしくは帰ってきたものか来訪者がいる。
「見た時は久々にビビっちまったぜ。なんたってあの恐怖はこう、人を狂わせるのに十分ってか、魔力とは違う何かを感じさせられたよ。
お陰で私以外の奴等は全員狂ってその闇に呑まれたのか、気付いたら周りは人から化け物に変わってたよ。ムカつく話私の名前を呼びながら呻きながら殺意剥き出しに襲ってきやがった。言葉とは裏腹に攻撃されるってのは結構当時の私にはキツかったよ。」
悲痛を感じ取るも涙は流さない、後悔はしない。そう強がる彼女の姿が見える。
普段の強気とは一転、どこか辛そうに強がっている。
「弟もそうさ、もちろん・・・私の許嫁もね。」
「・・・となると名家の方では?」
「まあな・・・・名前は鴉羽亮治、鴉羽家の1人息子だな。」
日本の空や空港一帯を取り仕切る風魔法と空からの監視や密偵として国を支えている一家の1つであり、その権力や立場かなり上位のもである。
朱雀機関の鳳凰寺家の娘との結婚も家柄含めて納得するところであろう。
「亮はまあ、実力というよりサポート系と支援系に優れてて、毎回怪我ばかりする私をサポートしてくれてたよ。弱く癖に前にばっか出やがってたな。
弟の江も私を守ろうと必死に喰らい付いていたよ・・・」
家族が好きだったのだろう。僕にはない感情であり、共感できない悲しき部分である。
「ったく・・・・あのバカ共もよく騒いでたくせに今じゃあもう1人ってな・・・
わりぃ・・・ちょっと浸ってた・・・・・」
「お構いなくとも。何があろうとも記憶は人と人を繋ぐものですから。」
「真面目なんだか酷い奴なんだかどっちなんだか。」
優しいを僕は先生にはね。
「変質したということが正しいのか、魔力そのものを形作られたのか・・・・うん?」
なんだこの既視感・・・・・・・・僕やん。僕がじゃない僕がやっていたあの行為に似ている。
では推測通りこの力は向こうの力そのものと。
「あ?・・・どうした?なんか私の話で気になることであったのか?」
「気になる点は変化についてですね。思い出されるのも苦しいとは思いますが、次元の隙間から覗くナニカ。魔力どころか人の形状を変える力、そして変わった経緯・・・これを知れればある程度正体が掴めそうなんですが。
ただ原因となる変質する。という人そのものの姿形を遺伝という根底から覆す行為には答えがイマイチ欠ける。ただ明解にしてしまうと・・・」
「なんだよ?勿体ぶってねえで教えろよ。私だけなんか一方的だろうがよ。」
ちょっと恥ずかしがる姿も素晴らしく美しい・・・おっと。
本物の怒りを感じたため話すことに。
「いえ・・ね。要するにこの世にいる突然現れたエルフやドワーフと言ったお伽話のような存在が何故魔法と共に現れたのかが判明されるなと。」
「お?・・・・いや待てよ・・・ただそれは・・」
「ええ。ご存知の通り、この事実を既に掴んでいる奴がこの国内部にいて、そしてその誕生と仕組みを既に実施している。つまり異次元の何かがこちら側にあるということ。
しかも世界各国のどこかへ潜んでいる。そして例の事件の変質は異次元という敵なのか、それとも内部の犯行なのかいずれかになる。ということです。」
「確かによくよく考えればってなるが・・・飛躍し過ぎともならねえか?」
「まあ・・・確かに・・・ただ根拠は」
「ある。そもそも賢者やバトラーといった神器を介して強くなる、もしくは生まれ持った遺伝や魔力から得られる実数値というのはそもそもどこで優劣が着くのであろうか?
実際問題、ごく稀に天才は現れる。これは世の摂理だ。しかし増加はしない。日本の中でも数人ほどいるぐらいが妥当ではある。しかし今では不思議なことにわらわらといる始末だ。
祖先を中心に引き継がれるかのように。また、違う祖先から生まれたものは才児を祈るか。」
「んだ?ってことは事件もこの魔力も何もかもがそもそもな始まりは自然や恩恵とかではなく、異次元の来訪者がキッカケってことか?それこそ証拠がないが・・・・ただ不思議と事件や神器の存在から何故か合点がいっちまう。」
鳳凰寺先生の神器は正しく本人を表すかのような金属製の金棒であり、メラメラと人肌を焦しそうなオーラを放っている。
「どこから湧き出てどこへ帰るんだかって感じだな。」
「どこでこれを?」
「天満の奴が入手したのは後だから・・・あれ?」
おい。
「ううん?なんで私これ持ってんだ?」
「それはまた・・事件の後遺症ですかね?」
「試しにてめえの頭をかち割って確かめるか?」
「おっとこわいこわい。」
ブラックジョークならぬ地雷ジョークよ。
「どちらにせよ私が変化しなかったことと、この神器、そして変化した奴らとの違い。何をしたのかは分からねえが、本当に犯人がいんなら・・・」
「いたとしても勝てません。彼らへの顔向けどころかより辛くなります。」
「あ?」
ええ、美しい鳳凰寺先生なら・・・・・とその黒き肌から感想を述べたいところではあるが、実際問題魔力さや未知数と人の存在そのものを変える奴等の話を精査すれば解る。
逆立ちしても勝てない。復讐のため心に一物抱えているのは解るが、感情ではなく理性で押し通さなくては彼女を殺してします。
「んだ?じゃあどうしろってんだよ?たださえ敵の可能性があるってのに、あいつ等のために何も出来ずにただ子供産む装置として生き延びて死ね。ってか?」
「いえ、そうではありません。どのように変化したのかが解らない上、それが魔力的支配なのか感情なのかそれともそもそも遺伝操作からそうなっているのか?
答え合わせができないうちに加えて、敵の正体も全貌も掴めないで行動するのは自殺と変わりません。」
ある程度場所と潜伏先は目星が付いているけどね。
「僕がその敵を半殺しにして連れてきましょう。戦うというよりどうして「百鬼夜行」事件という妖の暴走を引き起こし、その正体を現し『禁忌』とされる魔法を行使したのか?を問い詰める。
それによって答えを決めたほうがまだ合理的です。」
「・・・・・・・ざけんてんのか?私はよぉ・・・女だからって引っ込んでろってのが嫌いでよ。それにお前は仮にも私の生徒だ。実力が未知数なのはお前も同じだろうがよ。」
「申し訳ない。リカディ如きでは推し量れないでしょうが、鳳凰寺先生にだけは明かします。僕の力は魔法式からあらゆる事象を変化させる魔法組織そのもの、単純な『再生』と『分解』といった単純明快な手段が非常に長けています。本質は前者のあらゆる事象の変化です。
火を打ち消すのではなく、火そのものの形へ燃え方を変える。とかですかね。」
「はぁ!?何言ってんだって・・・何でいきなりそんな話してんだよ」
「それは僕が貴女を愛しているからです。」
「はぁ?」
「あ」