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1 この世の禁忌

世界自体はファンタジーですが、現代物で構成し転生したため、転移ではありません。

 いつの時代も目の前の当たり前を疑わず、その当たり前以外を軽蔑・侮蔑といった嫌悪を示す。


 戦争がない時代に暴力や内紛が起こると異常であると反応する。それは当たり前なのかもしれない。誰だって生き死にする世界を当たり前とはしたくないはずだ。


()()()()()()そうである。

 悪い事を当たり前とは思いたくない。ただ良い事だけを当たり前とも思えない。」


 何故?炭酸はコーラ以外は美味しくないと言う当たり前があるとしよう。確かにコーラは誰でも好きになれる美味しいさを誇っている。

 その言い分もあながち間違いではないのであろう。しかし一体いつそうと決まったのか?

 この疑念は生まれる。

 コーラ以外の炭酸も美味しく、その好みも千差万別である。


 であるなら、()()()()()()()はどうであろうか?

 幼い子が好きと言うある種危険と良しとする境界線の話題がある。そこに愛があればと言うが、そんなもの生まれるほど世の中ファンタジーではない。むしろ現実的に見て侮蔑や差別の象徴となる。


 だか、こうは考えてみたい。「俺は幼い子が好きで堪らない。けど現実的に実現しようとは思わない。

 見てるだけ、もしくは2次元で満足できる。」このような言い分は私としてはアリだと思う。


 これぞ思想の自由である。


 だが現実はここで狂っていく。この思想すら否定される。それは当たり前ではなく、そんな考えをする奴は犯罪予備軍など。と。


「残念ながらこれを語っている僕はナイスバディのセクシー系が大好きなのでノーセンキューだ。」


 ただ言い分は主張してあげたい。


 そうだ。こういった内容含めて世の中では、思想の自由すら否定され、剰え実現させるための努力すら否定される世の中である。


「だが、僕は諦められない。」


 この時代がダメというなら、僕はこの時代にこの生きにくい今の思想に大きく天誅を下す。


 ここにその名を刻みつけるため僕は成長した。努力した。


 我が家は広い。この現代の街並みに加えて魔法が当たり前となるこの世界では、日夜事件やトラブルといった行事が盛んであり、それに巻き込まれて亡くなる人も。


 そんな親を不慮の事故で亡くした、天涯孤独な僕『大神魔五斗おおがみ まこと』は今日もひたすらマンションの自室で研究と解析を行なっている。

 もう自室ではなく、研究室と言っていいだろう。


「・・・・やはり人肌の色素は魔法や科学ではなく、人の力そのもので元に戻る。というのが強いか。

 元々肌質が黒い。というのは遺伝から変えなくてはならない?のか・・

 そのレベルになると『()()()()』の抵触になるから調べることは愚か、そこに触れただけでアウト。

 バレなければ犯罪じゃない。は今のこの時代では無理だな。」


 この住まいという名の僕の研究室は親の貯金で住むことができ、僕自身も個人で稼げるツテがあったので今はそれで上手く生きていけた。

 まあ、親の金でメシ食うのが嫌な性分という理由で稼ぐ事を始めただけであって、そこにこだわりとか思いがある訳でない。


 何せその親は僕の物心が付く前に居なくなっていた。

 居なくなるというより、亡くなったが正しいかも。違和感がない気もする。


「さて、話はやや変わるが。この世は魔法によって優劣や優位性を決められている。

 主に魔力量・属性・魔技量の3種である。」


 もちろん魔力量が多いことに越したことはないが、属性も外せない。

 特に光と闇の属性は珍しく、勇者と魔王ではないがそれに匹敵するほど価値が高いとか。

 強さはある種魔法それぞれではあるが、物理の法則を捻じ曲げる事を可能ともしている。更にその2属性に選ばれた者はそもそも魔力量が非常に高い。


 光はエネルギー資源や攻撃、速度が非常に優れている。

 闇は防御、隠密に加えて人の心を覗くという事が可能らしい。


「結論、どちらも()()()()()()()()()()()に相応しいそれそうの力である。」


「だが不思議だな。電車で端っこが空いたら真ん中の席からわざわざ移動して端っこに座るという行為は周知されているのに、回復に長けた魔法は存在していない。その逆もそうだが。」


 この世は魔法と科学で作られている。しかし何故か回復のような再生、一瞬であらゆる物質を分解する。といったモノは存在していない。

 神がその奇跡だけは授けなかった。と言わんばかりの所業と言っても差し支えない。


「ただそれは果たして神様のせいなのか、魔法という文明を理解しきれていないだけなのか?

 それとも、そうはさせないと情報を遮断しているだけなのか?僕は後者である。」


 この真理は僕がダンジョンに1人で潜ったことがキッカケでもあり、新たなる時代の開拓者になる決意でもあった。


「お、そろそろ入学式・・・・学校はあまり好きじゃないんだよね。

 皆んなと同じ机で同じ科目の勉強を繰り返し行い、同じテストを受けてはその過程で評価を与える。

 今はそれに加えて魔法がある。更により優劣をつけられやすい世の中になったという。

 しかもこれも当たり前ときた訳だ。」


 ここ日本においても中学から魔力に対する適性とある程度の訓練が行われている。

 発動する方法、生活初級魔法や初級魔法と言った基礎中の基礎を学んでいく。その上で出来や飲み込みのある者だけが、それぞれの志望校へ進学できる。


 AO推薦や学力推薦が可哀想だよ。


 そんな僕は一般入試とある事が原因でこの日本を代表する魔法高『魔法技術推進特別高校』通称『魔技特』である。

 その通称通り、優秀さと才能者しか募らないというどう考えても反感を買いそうな事をしているところであり、事実そうである。


 他にも『朱神学園』、『SEMA高校』の2校が代表的でもあるが、魔技特がやはり一つ頭が飛び抜けている。


「ちなみにSEMAは省くぞ。だって聞いたらダサいからさ。」


 そんな事を頭の中でぐるぐると1人でに考えながら支度を終え、暗い研究室から外へと出る。


「まぶっ・・・・しい・・・」


 いい加減その魔法とやらでこの眩しさをどうにかしてほしいよ。自然に対してはどこまでも無力な世の中でそこは少しホッとした。


 歩きながらであるが、先程の学校話で話が逸れてしまった真理について補足しよう。

 太陽の光または紫外線を全体的に遮断や台風の未然防止、地震を食い止めると言った正に真理といえるに近い力の行使はできない。とされている。


 先に出た分解と再生も同じく、おおよそこの人が生きる世の中では決して起こり得ない事象に等しく、また起こってはいけない。

 それは時代そのものを塗り替えてしまうという、世界そのものに新たな楔を打ち込めるからである。

 ケータイがガラケーからスマホに変わったという内容も素晴らしい。だが、人工知能の誕生と活用、魔法の発現と言った一時代ですらここまで革命を起こしている。


 真理の発見はまた新たな時代を創る。そしてその先見者は新たな時代の覇者となる。

 この世においてどんな発見も許される。何故ならその人以外に築く事ができないのだから。

『唯一無二』という言葉は存在している。


 スマホも最初の開発者が次作を出すことで、その商品に新たな付加価値を生み出し、他社でも開発・改良が行われて普及した。

 だが、開発者亡き今はそれを超える者はない。

 そして開発者の商品は何故か古くてもその評価非常に高く、むしろ今出ている物は批判される始末である。

 更には他機種に乗り換えては、違うスマホを使う。と言ったぐらいに。


 結果時代の先見者はいつだって重宝されるのと、その時代に人々が逆らう事はない。ということ。

 意見はあれど結果は認められている。


「だからこそ僕は革命を起こすのだ。」


 校門前に着いた早々その場で立ち止まり、僕は高らかに宣言する。


 そんな彼の宣言に周りはヒソヒソと引いている者、冷ややかな視線を送る者たち。


 この当たり前を受け入れない彼にとってみれば些細なことである。

 そして彼大神魔五斗は常に引き篭もってただ1人研究をし続けていたせいか、独り言が激しく多い。


 決して病んでいる訳ではない。ただ口にしたくなるという性分なだけである。

 変わり者であるが、魔法化されたこの世界では何の違和感もないとされる。


 そんな大神はそのまま1人周りのことなど気にせずに校門を潜り、自身が通う大きな学校の校舎を視界に写す。


『魔法技術推進特別高校』正に科学・魔法含めた最高峰の施設に、生徒レベルの高さに加えて高レベルの教師陣の面々と。

 そこには種族の垣根を越えて集まっており、獣人・エルフ・ドワーフ・人間と言った他種族な上共学というシステム。


 そしてここにはこの国を代表する7人の大賢者が1人『天照の遣い』城戸天満が学長を担っている。

 なんでも光属性と珍しい上、聖霊と直接契約を交わしたかで半永久的な寿命と生命力を得たとか。


 しかも何の因果かその息子と娘という姉弟なのか兄妹なのかは不明だが同時に入学するという。こういうのは神の悪戯と見るべきなのか?まあ私の崇高さに比べたらさじなこと。


 そして目前に砂塵が舞う。

 大神の前では後者を背に2人の学生が野次馬を他所に決闘していた。


「うらぁ!」


 1人が大きな地盤をぼっこりとひっくり返してイカつい見た目相手に投げつける。恐らく原理は地属性魔法であろう。


「へっ!んなもんかよっ!」


 驚いたことにその男は光属性の初級魔法『ホーリーレーザー』でその物体を見事大きな破壊音を鳴らして破壊したのだ。

 破壊したのは見事であるが、破壊した後が荒い。正確にはただ自分に当たらないように破壊しただけ。周りはその凄さに目を奪われているが、あの斜角から落下するのは明白である。


 戦っている2人は気付かない。また野次馬たちも同じく気付かない。

 ごく僅かな一部、窓から覗いていた唯一の人物だけがその異様さを目の当たりした。


 突如砕け散った破片などが全て空中で消え去ったのだ。砂埃一つ起こさず、ただそこに何かがあった事実さえも消し飛ばした。


 しかしそこには、2人の学生による決着と盛り上がっている周りの野次馬以外誰もいない。


「クラスクラス・・・あった。Dクラスか。」


 一応全クラスにランクはない。しかし個人にはランクというものが存在しており、その格付けによって将来が決まっていく。

 今回は招待状から既にどこのクラスへ所属かが教えられている。


 ちなみに最初は属性評価試験によって変わる。それが今日取り行われる。


「よっ!お前もDクラスか?」


 凄くインキャ臭がする黒髪おかっぱ男性が唐突に声を掛けてきた。

 実のところ、足並み・気配・魔力で察してはいた。


「ああ、そうみたいだ。君もか?」


「君って・・結構クセのあるやつだとは思ったが、なんかおもろいな!

 俺三上啓介ってんだ!これでも風魔法の適性ともうある程度の初級魔法は使えんだぜ!」


 ドヤってきたが、波長からそれが伝われる。魔力というより、神経に通う魔法への使い方を理解しているようだ。


「ほほう、それは凄い。折角だ教室までどうだい?」


「俺も同じこと考えてたとこだし、いこーぜ。」


 この気さくさはありがたい。孤独の身には少し助かる。


 そして三上と共にDクラス1年の教室へと赴く。すると2つの人だかりができている。予想するのが容易い。


「城戸がまさかの同じクラスかよ・・とほほ、俺の無双生活が・・」


「やめておけ、いずれ惨めになるだけだ。」


「酷くね?」


「事実だ。」


 ちえっ。と言いながら啓介と俺は適当な席に座ることに。大学の講義のように横長にあるため、実質固定席が存在しない。


「あ、あれ見ろよ。」


 ヒソヒソとまたしても声を掛けてくる。


「エルフ・・か。」


 透き通るその綺麗な肌、長い耳に容姿端麗な姿形とその膨大な魔力と生命力、そしてなによりも軽蔑するその目線である。


 エルフ、魔法の誕生から唐突に現れた人間の変異種とされている。魔力が強力な人から誕生するという新しい人種である。

 しかし、その実力や活躍・世界にとっては非常に優遇される存在であることからプライドが非常に高い。


「キッと睨まれるあの視線がたまらんよな〜。」


「白いというだけで何が・・」


「うん?なんか言ったか?」


「いや何も。そこまで興味が湧かないだけだよ。」


 本音が出かけた。まあ聞かれても問題ない。


「そこの2人何をジロジロと見ているのかしら?」


 ほら言わんこっちゃない。早速ヤンキーことエルフに絡まれたぞ。

 彼等彼女等は大きな魔力に覆われているせいか察知する能力や魔力が勝手に身体へ反応する仕組みになっている。


 隣の特殊性癖のせいでこうなった。


「あっ!やべっ!」


「だろうな・・・」


 この静寂の最中、コツコツと赤いハイヒールから音が鳴り響き近づく。そして机の前でその高身長を生かして僕たち2人を見下ろす。

 その視線というより、目の色は金色であり、芸術家であれば美しいと表現するに値するものである。

 髪もまた綺麗な金色であり、女子たちから羨望の眼差しが送られている。


「??どうして貴方から色が見えないのかしら?」


 僕を睨み付けて問いかける。


「これは大変お恥ずかしい。元々魔力は弱く、()()()()()()()()()()()()()身分でして。」


「そうじゃない。色がない。魔力なんてしれてる。色がない。つまり属性がないと言ってる。」


「色ですか?確かに従来エルフの皆様方はそのような特徴的な力を有していると聞きしに及んでおります。

 隠していた訳ではありませんが、まだ私も属性が明らかではなく、不明な状態となっております。

 確かに仰る通り話を汲むと、先天性から属性の色分けが既に産まれた頃からあるとされている面々もおりますが、判定にて色分けされるケースもあるとされております。

 私はどうやら後者のようでして。」


「ほう・・礼節さはあるが、どこか気に食わんな。」


「研究に日夜明け暮れている身分でして、このような性格となってしまいました。」


「・・・・面白い。名前は・・・誰だ?」


「大神魔五斗と申します。以後お見知り置きを。」


 彼はその場で敬礼の如く綺麗な挨拶をした。


 物語の序章が始まったのだ。

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