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BLUE in the ガールズバンド  作者: あまだれ24
89/92

第89話 これまでのバンドの話をしよう その5


「華をはじめて見たのはその年の秋、軽音部のバンドで参加したライブ。さっきも言ったと思うけど対バン相手だったんだ」


2杯目のコーヒーを飲みながら凛子さんが話す。


ちなみに彼女はキッチンからコーヒーをお盆に乗せて戻ってくると、まだレコードの再生途中なのに「やっぱロックがいいな」と呟いてBGMを変えた。


いま流れてるのは凛子さんの推しバンド、RUSHのアルバム『Roll the Bones』だ。


「このバンドと軽音部のバンドをかけ持ちしてたってことですよね?」

「ああ。本当は断りたかったんだけど、ドラマーがいないからって先輩に頭下げられてさ」


さっき凛子さんが語ったようにドラマーは絶対数がめちゃくちゃ少ない。本当に頼み込まれたんだろう。


「タダでサポートメンバー(サポメン)してたってことやろ? ウチなら先輩でもちゃんと駄賃貰うけどなぁ」とコーヒー片手にベッドに座っている葵さん。


すると凛子さんは引き気味に「そんな女にはなりたくねぇよ…」と眉をしかめた。


「それで…そのライブで華さんはどんな感じだったんですか?」


そう尋ねると凛子さんは厳かと言ってもいいぐらい、真剣な声で答えた。


「凄かったよ。本当に凄かった。独学なのかコードの押さえ方が特殊だったし、なによりもギターの演奏が信じられないくらい上手かった」


あの日見たTRUE BLUEのライブを思い出す。


圧倒的な演奏テクニック。シンプルなコードのはずなのに、色鮮やかな音の響き。


やっぱり当時から凄かったんだ…


「その場でバンドにさそったんですか?」

「ああ。ライブの打ち上げで声をかけた」

「よく加入してくれましたね。別のバンドでギタリストしてるのに…」


すると葵さんが眠そうな声を出す。


「この世界は引き抜いたり引き抜かれたりやからね。そんなもんやん」


そう言ってあくびをした。本当に眠いらしい。


「バイトだろ、寝るなよ」と凛子さん。

「夜バイト辛いわぁ」葵さんが嘆く。

「がんばれバイト戦士〜」私はコーヒーをすすりながら応援した。


「華も葵と同じで、スタジオのセッションで私らの演奏聴いたらOKしたよ。特に蘭子のことが気に入ったみたいだったけど」


凛子さんはまたコーヒーに口をつける。全員が黙るとRUSHの演奏が部屋に響く。


アレックス・ライフソンの叙情的なギターソロが始まり、ニール・パートのドラムが見事なフィルインを決めた。


「ほんならそろそろ華との因縁について語ろか?」


葵さんが凛子さんに投げかける。葵さんは聞き手を宣言してるから、それはもちろん凛子さんの役目だ。


「お願いします」私は軽く頭を下げる。


「めんどうだから簡潔に話すぞ」

「ありがたいです」


5秒ほど黙って言葉を選んでから、凛子さんは本当に簡潔に説明した。


「あいつ失恋したんだよ。それで脱退したんだ」


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