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BLUE in the ガールズバンド  作者: あまだれ24
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第60話 透明少女 その3


「ひょっとして...これって」


『神隠し』


その三文字が脳裏をよぎる。


あの、蘭子さん、そして華さんが迷い込んだっていう現実には存在しないはずの駅。


けど私が想像してたよりずっと暗くてすたれていた。まるで大昔の文明の遺構みたいだ。


その時だった。


どこからともなく、大型哺乳類の低い呻き声のようなものが聞こえてきたのだ。


思わずビクッと震える。


パッと突然、闇の中に眩しい光が見えた。目が痛い。とっさに右手を広げて目の前を覆う。


目を細めて、指の間から謎の光を見た。


すると唸り上げて闇の中から現れたのは、もうとっくに見慣れた小豆色の車両。


阪急電車だ。


「もぉー...脅かさないでよ」


怪物でも来るのかと思っていた私はホッと胸を撫で下ろす。


でもよく考えたら電車のホームに電車が来るのは当たり前か。どうして夢の中ってこう頭の回転が鈍くなるんだろ。


まあ普段から頭の回転は良くないんだけど...


そう思っていると、目の前で音もなく阪急電車の扉が開いた。中はとても明るい。

このさびれたホームとは大違いだ。


けど、乗客が1人もいない。


誰も乗っていない電車がどこか孤独そうに、私ひとりのためにドアを開けて待ち続けていた。


せっかくだし...乗ってみるのもありかな?


なんとなく、その電車に乗り込もうとした。


その時。今度は電車が風を切る時の唸り声とはまったく違う、固くリズミカルな音が聞こえてきたのだ。


タンタンタンという音。


ホームに高く反響するそれは、明らかに誰かが駆ける音だった。


「え?」


とっさに足音のする方を見て、私は言葉を失った。


「蘭子...さん?」


それはホームに設置された階段を駆け下りてくる、蘭子さんの姿だったのだ。


10メートルほど離れていたけど、間違いない、それは私の知る彼女そのものだった。


「ら...蘭子さん!」


夢だということも忘れて、私は必死に叫びながら駆け出す。


でもおかしな事に、蘭子さんにはまるで私の姿が見えていないようだった。


蘭子さんは階段を降りると、そのまま逃げるように阪急電車の中へと駆け込もうとする。


長い髪が、風になびくように宙を舞っていた。


「蘭子さん!蘭子さんってば!」


彼女の名前を何度も叫んだ。それでもまったく私の存在に気付いてくれない。


彼女の手にはLPレコードが抱きしめられている。蘭子さんを失踪まで追い詰めた、あのレコードが。


そんなものを手に入れてしまったばっかりに。


「それは...」


だから私は走りながら全力で叫んだ。


「それは幻の1553番だ!」


そう叫んだ時、私の目の前で蘭子さんを乗せた車両のドアが閉まった。


そのまま阪急電車は音もなく動き出す。


そんなもの捨てちまえ、という言葉は最後まで言えなかった。


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