第41話 その名はTRUE BLUE その3
ビルの外壁にある鉄の扉が外側に向かって開かれている。
その中に入ると次にあるのは地下への階段だ。
天井にオレンジ色のライトが点いてるけど少し薄暗い。
扉の内側や地下への階段の壁には、所狭しとビラが貼られている。フライヤーと呼ばれるライブの告知だ。
私たちのバンドも葵さんがデザインして自分たちで印刷してる。
フライヤーはプロもアマチュアも一緒くた。それがライブハウスだ。
私たちは凛子さんを先頭にその階段を降りた。すぐ後ろには後から来たお客さんが続く。
階段が終わるとすぐに受付があり、若い女性のスタッフさんがいた。
「ハロー」と手を振る葵さん。
するとそのスタッフさんが露骨に苦い物を食べさせられたような顔をする。
「げっ」という感じだ。
私は後ろから葵さんにそっと尋ねた。
「ひょっとして、このひとがチケットを手配してくれた…?」
「正解」
「めっちゃ嫌そうな顔してますよ。何したんですか?」
「なーんにも。春香ちゃんの気のせいやろ」
ぜったいそんな訳ない。
だってめちゃくちゃ嫌そうな顔してるもん。
そのスタッフさんにチケットを渡す。それからドリンク代の600円も。
ライブハウスではチケット代とドリンク代は別が普通だ。
チケットを受け取ったスタッフさんが代わりに手の甲にスタンプを押してくれる。
これを見せると途中で外に出てもまた再入場させてもらえるのだ。
それから小さいカードも渡された。ラミネート加工された四角いカード。
これがドリンクの引換券で、会場内にあるスタンドで好きな飲み物と交換できる。
そうして私たちはいよいよ、防音扉で隔絶されたライブ会場に向かった。
凛子さんが扉のL字型のノブに手を伸ばす。
ごくり、と私は息を飲んだ。
まだ確定じゃないけれど、もし、凛子さんと葵さんの推測が真実なら…
ブルーノートの『1553番』を見つけた人間が、蘭子さん以外にもいることになる。




