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BLUE in the ガールズバンド  作者: あまだれ24
39/81

第39話 その名はTRUE BLUE その1


場所は三宮駅のすぐ北側にある広場。


紺色の夕暮れが迫ろうとする中、すでに葵さんと凛子さんが私の到着を待っていた。


どちらもパンツスタイル。けど長髪の凛子さんとショートボブの葵さんだから、どうも並んでいると美男美女のカップルに見える。


葵さんがこちらに気付いて手を振ってきた。


「おー来た来た。春香ちゃんこっちやで」


この広場の名前はパイ山。


正式にはサンキタ広場だけど、みんなパイ山って呼んでる。

神戸を代表する待ち合わせスポットだ。


聞いた話だと私が千葉から引っ越してくる2年ほど前まで、ここに『おっぱい』に見える形のオブジェがあったそうだ。それが名前の由来らしい。


「おー来た来たじゃないですよ。呼び出すにしても突然すぎますって」


「ごめんな。やけど…今回は春香ちゃんをのけ者にせえへんからそれで許して」


葵さんが片手を立てて謝る仕草をする。


凛子さんはというと彼女の隣りで腕組みし、難しい顔で黙っていた。


最近は日が落ちるとかなり寒いのに、まだ半袖のバンドTシャツを着ている。


RUSH。彼女の1番好きなロックバンドのTシャツだ。


「これ、さっき手に入ってん」

「なんですか?」


葵さんが1枚の紙を差し出す。

受け取るとライブのチケットだった。


雨の土曜日、私たちと咲ちゃんでそばを通ったあのライブハウスの。


「のけ者にしないって…3人でライブ行こうって意味ですか?」


「そう。ほんまは予約でいっぱいやってんけど、ウチ、そこのスタッフに前のバイト先で一緒やった子おるからな。さっき特別に手に入ってん」


「予約でいっぱい?」


ライブハウスでそんなことは滅多にない。

あるとしたらプロ、それも人気と知名度を兼ね備えたアーティストが出演する時くらいだ。


あらためてチケットに印刷されたその名前を確かめる。


「TRUE BLUE」


声に出してゆっくり読んだ。

それから顔をあげてまた葵さんを見る。


「聞いたことないですけど…よその県からツアーで来てるんですか?」

「いいや。神戸のバンド」

「神戸?」


私もインディーズシーンに精通してるわけじゃない。

でも同じ神戸で活動するバンド同士だ。


300人も収容できるあのライヴハウスを単独(ワンマン)で満員にできるアーティストの名前を聞いたことないなんて…ありえない。


そういう情報はバンド活動をやってると嫌でも入ってくる。


「そのスタッフの子に聞いたらな、結成されてまだ3ヶ月ほどらしい。いま爆発的に知名度が上がってる」

「さ、3ヶ月?!」


ギョッとして聞き返した。


「も…もちろん有名なプロの人が結成したバンドですよね?」


すると葵さんは首を横に振った。


「全員アマチュア。それがもう予約取るんも難しくなってる」


絶句する。


結成してたった3ヶ月のアマチュアバンドの単独(ワンマン)ライブが売り切れ(ソールドアウト)


まるで音楽マンガの主人公みたいなスピード出世だ。


TRUE BLUEの人達がどれほどの才能に恵まれてるのか、凡人の私には想像すらつかない。


「行くぞ」


それまで黙っていた凛子さんが不意にそう言った。


「あいつに直接会ってそれも全部確かめる」

「あいつって…誰のことですか?」


さっき話に出たスタッフさんのことだろうか。


けど凛子さんは何も答えてくれず、さっさと歩き出した。葵さんも歩き出す。


凛子さん…なんで今日はこんなに機嫌が悪いんだろう?


私と同じで急に呼び出されてイライラしてるのかな?


釈然としないままふたりの背中を追った。


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