第28話 港町Diary その1
10月19日土曜日。雨。
事前の天気予報で知ってはいたけど、かなりショックだった。
咲ちゃんと行く予定だったハーバージャズナイトは屋外イベント。もちろん雨天中止。
ライヴの開始予定は午後3時からだけど、お昼の今現在、すでに小雨とは呼びがたい状態だ。
「あーあ。せっかく誘ってくれたのに…」
ため息をついて咲ちゃんにLINEを送る。
『今日ずっと雨みたい』
『たぶん中止だね』
続けてメッセージを打つ。
するとすぐ既読になり、今度は咲ちゃんから返事がきた。
『やばい』
『どうしよ』
そのメッセージに私が『もう少し様子みよ』と返信しようとしていると、さらにメッセージが来た。
『もう神戸駅いるんだけど!』
『雨どんどん強くなってるし!』
「ええ?! もうこっち来てるの?!」
私はスマホを持ったまま、腰掛けてたベッドの縁から転げ落ちそうになった。
いくらなんでも気が早い。
だって集合はJR神戸駅に午後の2時半のはず。今はまだ12時過ぎだ。
『なんでもう来てるの?!』
『早めにね』
『早すぎるって!』
『だって待ちきれなかったんだもん』
さらに咲ちゃんはコナンの赤井秀一の『器用な性分じゃないんでね…』というスタンプも送ってくる。
私はメッセージ画面を見ながらフリーズした。
咲ちゃんはなんていうか、じっとしていることが本当に苦手だ。
今度はちがうため息をつきながら、私はLINEを送った。
『待ってて。すぐ行くから!』
するとすぐ返事が来る。
『じゃあ地下のサンマルクにいます』
私は急いで着替えるとメイクは諦め、最低限髪の毛をセットして家を飛び出した。