一世一代 ールシアーノー
女神はこちらを見て驚いたが、さっと姿勢を正すと「お一人の邪魔をしていまい申し訳ありません。失礼致します。」と礼をすると踵を返した。
「今度はブラハムの息子を頼るつもりか?」
口をついて出た言葉はこんな言葉だった。
(俺はこんなことを言いたかったのか)
自分に驚いてしまった。
女神は一瞬立ち止まったがそのまま行こうとした。
俺が手を掴むと驚いたようにこちらを見た。
そのまま引き寄せると綺麗な顔が眼前に迫る
「何を‥」
「どうして俺を頼らない?」
遮って俺が言った。
リズ嬢は目を丸くした。
「どうしていつも俺以外を頼っているんだ」
公爵家の護衛、教皇、サラ、アレク。次々に思い浮かぶ。
ルカ、あなたあの人を抱っこしたかったんでしょ!
ふとセイラに言われた言葉がよぎる。
羨ましそうに見てたの気づいてないとでも思ったの。
ハハハ。こんな時だと言うのに思わず笑いそうになった。
別に可笑しい訳じゃない。くそ、アイツ。セイラめ。
その通りだよ!
「俺もリマポルカへ連れて行けよ。」
眼前の顔が心底呆れた顔になった。
「一体‥」
ああもう!!くそっ!
「本当に噂以上の悪役令嬢だよ!!」
知らず掴んだ手に力が入る。
「俺は北の辺境伯なんだぞ?」
「‥存じております」
「なのに‥どうしてくれるんだ‥」
あなた以外何もいらなくなってしまったじゃないか。




