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母帰城 ールシアーノー

「悪かった。お前だけがストレスの元凶のような言い方をして。」

今目の前でアレクが頭を下げている。


執務室で仕事をしているとアレクが入って来て、母上が今日帰ってくると先触れがあったと報告受けた。

その後唐突に頭を下げられて今である。


眉間にシワがよっているだろう俺を無視して話は進む。

「いや、一番悪いのはお前だ。でもエリザベス嬢のストレスはお前だけじゃなかった。ジェンティルダ城そのものだ。」

何が言いたい?

「結論を言ってくれないか。」

眉間のシワを濃くさせながら俺が言う。


「冷静に聞いてくれよ。」

と前置きをする。

「ルカとアメリア様周辺の使用人以外はエリザベス嬢を無視していた。」

ガタン!

思わず立ち上がった。

「もちろんそこに専属侍女のマリーも含まれる。しかしマリーは嫌気がさして最近ではエリザベス嬢と話しているようだがそのせいでマリーが孤立している。セバスチャンに確認を取ったら確かにここ数日メイドたちの雰囲気がおかしいらしい。」

「何でそうなるんだ!」

「仕事をきっちりすればセーフと思っているらしい。」

絶句してしまう。

「怒鳴る城主。謝るだけの側近。完璧な仕事をするが無視する使用人。どこにも逃げ場がないから外に居場所を求めて孤児院訪問したんだろう。そこでも俺たちがついて来てあの騒動。もう孤児院にも行けないと思っただろうね。思えばあの頃から食事を残しがちの報告を受けてる。足を痛めたからかと思っていたが。」

そこまで言うと黙り込む。

俺はさっきとは違う意味で絶句してしまった。

執務室が静まり返る。


「アメリア様にはエリザベス嬢が倒れた事は報告がいってる。橋の件は話がついているし視察を切り上げて帰ってくるんだろう。俺たちも覚悟を決めよう。」

暗い声でアレクは言うと自分の執務机に向かった。


コンコンコン!

ノックが鳴り響く。

思わず身構えるもセバスチャンだった。

「アメリア様が戻っていらっしゃいました。一時間後にこちらの執務室に来られるそうです。そしてこれがダルタールの報告書だそうで、アメリア様がいらっしゃらない間の城の様子もまとめて報告できるようにしておけとの伝言です。」


また俺たちは黙り込むと、執務室は重い静寂に包まれた。


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