報告 ーアレクー
思わず声を出しそうになった。
エリザベス嬢の専属侍女のマリーが話があると言われ時間をとった。
エリザベス嬢に何かあったのかと。
しかし何かあったレベルの話ではなかった。
「それは‥一体‥」途切れ途切れの言葉しか出ない。
ルカには言いすぎたかと思っていた。しかしエリザベス嬢との関係ももう限界だろうとも思っていた。
愕然としていたルカにおそらくだがと前置きをしてアメリア様が下すであろう判断をルカに聞かせた。心の準備のために言っておいた方がいいかと思ったんだ。
しかしこれをエリザベス嬢に伝えていた。
例の如く色々すっ飛ばして。
決定事項として。
お前それ、城を追い出した事に、ならないか?
「もし婚約解消という事になってもエリザベス様の専属侍女辞めたくないんです。」
一介の侍女ですら理解してるじゃないか。
とりあえず口止めしておかなければならない。
「君の気持ちはよくわかったよ。しかしこれは決定事項ではないんだ。」
「アレク様と相談して決定した風におっしゃってましたが。」
やめろ。
頭を抱えたくなった。
「アメリア様も帰っていらっしゃらないだろう?すべてまだ何も決まっていないんだ。まして婚約解消など。わかったね、決して口外しないように。」
確約がもらえないからだろう、侍女の顔が晴れない。なるほど本当にエリザベス嬢に固執しているらしい。
「ですが‥」
「信用できない侍女をエリザベス嬢につけるわけにいかないな。」
話を遮り脅しのような事を言う。仕方ない、こんな噂が出回るのは不味いんだ。
侍女はサッと顔色を変える。
「信じてください!決して口外しません!本当です!したくとも話す相手がいません!ですから大丈夫です!正式な発表を待ちます!」
100点満点の答えを導き出した。
が、違うところが気になった。
「話す相手がいないとはどういう事だ?」
城の使用人達はそれなりに仲が良かったはずだが。
侍女マリーもトラブルなく皆と仲良くやっていたはずだ。だからこそエリザベス嬢の専属に抜擢されたんだ。
侍女の顔色がみるみる紙のように真っ白になった。
なにかあるな。
「まあまあゆっくり話そうじゃないか。さあかけなさい。」
大げさに席を勧め、もはや土色になっている侍女に俺はニッコリと微笑んだ。




