襲来 ーアレクー
俺とアメリア様は目配せをして小さく頷き合っていた。
気持ちは同じである。
適当なところでセイラを追い払おうと。
そもそもがセッティングしなければ良かったのだろうがセイラはしつこい。
アメリア様も何とかかわしていたが実力行使に出ようとした。
つまり強引にエリザベス嬢に会いに行こうとした。
足を痛めているのにやめてくれとなり、勝手な事をされるくらいならとお茶会をセッティングする羽目になった。
セイラは自分の領地の進水式にジュンブリザート側から誰もいけなかった事を激怒していた。
しかも進水式の後のパーティーが自身のバースデーパーティーも兼ねられたことにも怒っていた。
それについてはこちらは全く関係ないんだが。
逆恨みとも言うべきだがエリザベス嬢に対して並々ならぬ敵意を持っている。
2人で会わせるわけには行かない。
自分とルカと俺は幼馴染である事をとうとうと語っている。
何のマウントだ？
そんな仲良かったのか、俺ら。と言う感想しかない。
笑顔で相槌を打つエリザベス嬢はさすがだ。
さあそろそろ行けと言うアメリア様の目配せを受けた時だった。
「さあもういいだろ」
動いたのはルカだった。
お前！成長したじゃないか！
感動したのも束の間、ルカが追い出したのはエリザベス嬢の方だった。
エリザベス嬢が出ていったと同時にセイラが楽しそうに笑い出す。
やるじゃないの、と。
アメリア様が立ち上がり激怒した。
するとセイラが悪びれなく言った。
「いいじゃないの！ルカあなた、あの人を抱っこしたかったんでしょ！」と。
全員が溢れそうなくらい目を見開いた。
「何でそうなるんだ。お前がくだらない話をリズ嬢に延々してるからだろう？！」
「あら必死になっちゃって！図書館の庭で女性護衛に抱き抱えられていた御令嬢、やっぱりあの人だったんじゃない！羨ましそうに見てたの気づいてないとでも思ったの！指咥える勢いだったくせに！」
「だから何でそうなるんだ！」
ああ、とうめきそうになった。
庭で迷ってしまい足が悪化したとの報告はサラから受けてはいたが。
それをたまたま見かけて妬んでたんだな‥‥。
アメリア様が見開いた目で俺を見てくる。
俺は静かに頷いた。
そうですよ。あいつは初恋に気付いていません。
そいう意味を込めて。
アメリア様は開いていた目をもっと大きくすると、脱力するようにソファーに座った。
「へえ！会ってみれば綺麗な御令嬢だったからすっかりその気になってしまったのかと思ったわ！違うのね？」
ああ、いい加減黙ってもらわないとルカがもっと拗らせそうだ。
「悪ふざけはそのくらいにしておくんだ。」
静止すべく俺が割り込む。
「な‥何よ‥」
「いきなりやってきて全部思い通りにして、もう気が済んだだろう。馬車を呼んでやるからそろそろ帰ったらどうだ。」
「‥わ‥わかったわよ‥」セイラは渋々頷いた。
