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気軽なお茶会とはいえ ールシアーノー


「まさか子供は警戒していなかったわ。」

苦々しげに母上は言うと俺の前のソファーに座った。

「ここまで悪役令嬢の噂が浸透しているなんてね。」

頭を抱える勢いで言った。


アレクの話によると、飲み物をかけたのはストンプ男爵令息。

事を荒立てたのはアイオン子爵。

聞き取りをした結果謎の第三者がいることがわかった。

ストンプ男爵令息は「悪役令嬢をやっつけたくないか」と声をかけられ、

アイオン子爵は「悪役令嬢に子供が理不尽に罵られているぞ」と言われ助けてやらねばと思ったそうだ。

どちらも同一人物なんだろうが、2人とも面識はなく名前もわからないそうだ。

服装や人相からこの人ではという人物は数人いるもののいずれも決定打がなく謎のままだ。


「原因究明も大事だけど、今は犯人探しより辺境伯主催のお茶会でエリザベス嬢のドレスを汚して退場させてしまった事ね。」

と本当に頭を抱えてしまった。


「なんで原因を後回しにするんだ。辺境伯のパーティーで馬鹿な計画を立てた張本人を探し出してきっちり処罰するまでおさまらんぞ、俺は。」


俺の言葉に顔をあげた母上は、心底呆れた顔をしていた。

「あなた、もう少し社交界を勉強なさい。御令嬢のドレスを故意に汚すなんて王都では死を意味するわよ。それだけでも大問題だっていうのに。」

そこまでいうとまたうなだれてしまった。

「子供のした事だ。謝罪して弁償すれば問題ないだろう?」

その上で新しいドレスを新調してもいい。

「あなたねえ‥」

これだから辺境の男はとか言いながら脱力した様子でこちらを見る。

だが軽く頭を振ると説明を諦めたようだった。

「そもそもストンプ男爵家に公爵令嬢のドレスの弁償なんてできるわけないでしょう。破産するわよ。まあ、それはこちらで弁償するとアレクが話をつけていると思うけれども。かなり甘いと言わざるを得ないわよ。まず王都ならありえないわね。」

また王都。

「王都でも子供が粗相することくらいあるだろう。」

ムッとして言い返したが間髪いれず

「ないわよ。」と言われる。

ない?子供だぞ?

「地方はのんびりしていてそこが良いとも言えるけれども、地方貴族と馬鹿にされるところとも言えるわね。」大きく息をつくと、続ける。

「やはり王都は厳しいわ。少なくとも王都の上位貴族は子供の頃からの覚悟が違うの。社交界での振る舞いも完璧だわ。だからこそ公爵家のエリザベス嬢がどう思ったのか‥‥。せめてあの子供をヒーロー扱いで盛り上がった場面、エリザベス嬢が見ていなければいいのだけど。」


手足が冷えて、落ち着かない気持ちがじわじわと湧いてくる。

リズ嬢が見ていたらどうだっていうんだ。

聞きたいのに何故か黙り込んでしまった。


聞いてないのに嘆息して母上は続けた。

「もし見ていたら今回の事を辺境伯に嫁げない理由に十分できるでしょうね。完全にこちらの瑕疵だわ。帰りたいと言われたらまだ雪の降り始めの今なら王都に帰れるでしょうしね。そうなった時国王はどういう判断を下すのか。考えただけで頭が痛いわ」


ひゅっと息を呑む。

「もし盛り上がった場面を見ていなかったら?」いつの間にか口がカラカラになっていた。


母上の顔が『ようやく事の重大さをわかってくれた』という顔になる。

「ドレスを故意に汚しただけでも王都育ちのエリザベス嬢にしたらあり得ないけれど、でも地方の下位貴族の事だと大目に見てもらえたら‥‥」

そこまでいうとキッと顔付きを変えた。

「だからルカ!今からきっちり謝ってきてちょうだい!誠心誠意!心を込めて!辺境伯として!できるわね?頼んだわよ!」




謝罪をするために執務室でリズ嬢を待つ。


リズ嬢は怒っているのだろうか。


「おい、そろそろエリザベス嬢が来られるぞ。きっちり謝罪して、ちゃんと経緯を説明したら心象も変わってくる。頼むぞ。」

アレクが真剣な顔をして言う。


そもそも謎の男は一体どういうつもりだったのか。

ドレスを汚して、騒ぎ立てて。

顔も知らぬ貴族の男に苛立ちを隠せない。

男爵令息もドレスくらいと思っていたのだろうな。

そんな事を考えているとドアがノックされた。





「どういうつもりだったんだ」

リズ嬢を前に第一声出た言葉がこれだった。

アレクがこれでもかというくらい目を見開いて俺を見てる。

待て、待ってくれ。俺だって驚いているんだ。


「どういった意味でしょうか」リズ嬢が言う。

落ち着け。


「そのままの意味だ。ドレスくらいで騒ぎ立ててどういうつもりだと言っているんだ。」

話の前後がめちゃくちゃだ。

自分で言いながら愕然としてしまう。


『帰りたいと言われたら雪の降り始めの今なら王都に帰れるでしょうしね。』


何故か母上の声がこだまする。

するとリズ嬢が意を決したように顔を上げ口を開いた。


「王都では‥」

『王都ではあり得ないわ』


ゾワッと全身総毛立つ。


気が付いたら叫んでいた。

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