二度目の
次の日エリザベスが目を覚ましたときはすっかり正午を回っていた。
医者には「環境の変化などによるストレス性の胃痛」と言われた。
ルシアーノが見舞いに来たいとの申し入れがあったとマリーが言うのでベッドのままでよければと受け入れた。
エリザベスは身なりをマリーに整えてもらった。
夕方ごろになるとルシアーノがエリザベスを尋ねて来た。
挨拶などもそこそこにベッドサイドのイスにルシアーノが座る。
ルシアーノは怒っているのだろうか。病人に怒るわけにいかず憤っているのだろうか。入ってきた時から顔がこわばっており、座るや黙ってしまった。
心配をかけたこと。誕生日会を中座したこと。エリザベスが謝罪をするも押し黙ったままだ。
(いい加減謝罪など聞き飽きたと思われているのかしらね‥)黙ったままのルシアーノにそんな思いがエリザベスの頭をよぎる。
辺境伯夫人に相応しいといってもらえるように、と言いつつ現実はルシアーノを怒らせてばかりだ。
交流不足。ずっとエリザベスの頭にある言葉。
エリザベスは2人向き合ってきちんと話してみたいと思っていた。
なんて事ない、たわいのない話を。
そうして少しでも信頼関係が築けたらセイラの事を含め未来の事を話し合えるのではないか。
(回復したらそうした時間が欲しいと言ってみようか。)
「考えたのだが」
エリザベスはそう言おうとしたが一瞬早くルシアーノが口を開く。
「私達はお互い王族命令に背くわけにはいかない。しかしまだ具体的に結婚の話が決まっているわけではない。医師の診断もあることだし」
さっきまでの沈黙が嘘のようにルシアーノはとうとうと喋り出した。
ルシアーノは一体何がいいたいのか。話が見えない。
ただエリザベスは嫌な予感がして柳眉をひそめた。
「アレクとも話したのだが、しばらくジェンティルダ城を離れて気候のいい領地で療養したらどうかと。そして雪が溶ける頃になったら王都に帰ってはどうか。」
ルシアーノがはっきりと宣言した。
エリザベスは頭が真っ白になった。
(王都に‥‥帰る?)
何度も何度も頭で反芻し、ようやく意味がわかった。
ルシアーノは事実上の婚約破棄をエリザベスに言い渡したのだと。




