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2人きりの誕生会

エリザベスは朝から今日の誕生日の晩餐の服を選んでいた。

アメリアにもらったブローチの赤に合わせて選んでいた服があったのだが、それをすっかりやめてまた一から選び直しているのだ。


昨日の朝早く、アメリアとアレクはダルタールの町へ出発した。

そしてその日の昼下がりに図書館の庭のベンチで本を読んでいると非番の護衛騎士サラがやって来てエリザベスのそばで膝を折った。

女性騎士サラの男前な仕草にエリザベスは思わずコロコロと笑っているとスッと小さな箱を取り出し「我が主からです。」と言った。

中はエメラルドがあしらわれた髪飾りだった。

驚いているエリザベスにサラは

確かにルシアーノが選んだ髪飾りな事。

カードも直筆な事。(明日の晩餐につけてきてほしい旨が書いてあった)

「我が主はどうも女性の扱いがわかっておらず‥」

とアメリアと同じことを言い出したのでエリザベスはまたコロコロと笑った。



なのでエリザベスは部屋でエメラルドのグリーンに合わせた装いを思案中であった。

「きっとエリザベス様の目の色に合わせたのですね」

と今日は侍女のマリーが珍しく雑談に乗ってくれたので服の選び直しもエリザベスは楽しんだ。

エメラルドの髪飾りが映えるグレーの光沢のある控えめな柄のドレスに、靴はベージュにした。髪は靴と同じベージュのリボンを編み込みまとめた髪を横に流して耳の後ろの方に髪飾りをつける事にした。

これなら前から見てもふいに髪飾りが見える。

(もしかして本当に私の目に合わせて選んでくれたのかもしれない)

そう思うとエリザベスの心は浮き足だった。

(もしかして初日にパインダセルビーの髪飾りをつけていた事も気づいていたとか?だから髪飾りをくださったとか)

とそこまで考えて、自分の能天気さにエリザベスは少し苦笑した。

(私も単純ね)


アメリアから晩餐の話をされた時は確かに乗り気ではなかった。

しかしルシアーノから初めてのプレゼントのせいか

久しぶりのおしゃれトークのせいか

セイラの事も今までの事もすっかり頭から抜け、浮き足だった気持ちのまま誕生日の晩餐の時間を迎えたのだった。





エリザベスが食堂に着くと護衛が扉を開ける。

中には使用人が控えていたが、ルシアーノはまだ来ていなかった。


侍従のトムがいわゆるお誕生日席へエリザベスを案内してくれる。

この国ではお誕生日会において主役は当主よりも上座に座るのが一般的である。

トムが引いてくれた椅子にエリザベスが座ろうとしたその時、

「なんでそこに座るんだ?」

とくぐもった声がした。


声の方を見やるとルシアーノがちょうど食堂に入ってきているところだった。

眉間にシワを寄せたままルシアーノは自分の座る席まで来ると

「座るのはここだろう?」

とルシアーノは自分の席の前を指差す。


怪訝な顔のルシアーノにエリザベスはまたやらかしたかとヒヤヒヤしたが、なるほどと納得する。

二人きりの誕生日パーティなど初めてだったから頭が回らなかったが、確かに向かい合って食事する方がいいに決まっている。

侍従のトムも合点がいったという風に気を取り直してルシアーノの前の席に案内してくれる。

エリザベスも「失礼いたしました。」と軽く会釈するとトムに後についた。

と、ルシアーノがチラとエリザベスの方を見た。

視線の先はエリザベスのエメラルドの髪飾りだ。丁度この角度だとルシアーノからよく見える。


(席に着いたらお礼を言おう)とエリザベスは思いながらトムが引いてくれた席に座る。

そしてルシアーノに話しかけようと口を開いた。


「いつでもご自分が主役じゃないと我慢ならないんですよね?元王太子妃候補ですもの!」

いつからそこにいたのだろうか。

扉の前にキツイ口調とは裏腹の柔和な笑顔のセイラが立っていた。


(なぜ彼女がここに?)


驚くエリザベスをよそに、セイラはツカツカツカと気の強そうな足取りでお誕生席まで行くと椅子を引かれるのを待っている様子だった。

ハッとしたトムがセイラの椅子を引く。

席に着くとセイラは

「本日は私のために誕生パーティを開いていただきありがとうございます。災害と重なってしまいおば様やアレク様がいないのは残念ですが、そんな中でもお二人がお祝いしてくださる事に感謝いたしますわ」

と手慣れた様子で挨拶をした。

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