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いざ出発


エリザベスは上機嫌だった。

先ほど侍女が来て明日教会と孤児院の訪問が決まったのだ。

そうと決まれば明日の服や髪型をあれやこれやと考えなけれないけない。

公爵家にいた頃は侍女のみんなと考えていたのだが、こちらに来てからはそんなことは一度もない。


「このドレスにこのアクセサリーは大きすぎるかしら?」

「エリザベス様の装いに侍女が口を出すなど烏滸がましいことでございます」


一事が万事この調子である。

だがそれも仕方がないことだということもわかった。

だったら城外に出ましょうと思ったのだ。

(馬車から見た街の人は決して好意的ではなかったけれど1人くらい私としゃべってもいいという人はいるでしょう。)

と持ち前ののんびりおっとりで考えていた。


朝夕は冷え込むものの日中はそこまで寒くはない。

長袖のブラウスに編み上げブーツを履いて、襟にスカーフを巻きましょう。

スカーフの色を秋らしい濃いブラウンにして同じ色のリボンで編み上げブーツの一番上を蝶結びをすれば可愛いのでは?

髪も同じ色のリボンで結んだらしつこいかしら。

そうだ、サイドを編み込むポニーテールにして控えめのリボンをつけたらいいわね!


などとワクワクしながらリボンを物色する。

「そうそう孤児院の子供達には公爵家から持ってきたアレを忘れずに持っていかなくては!」

エリザベスは王都の孤児院にアレを持って行った時の子供達の笑顔を思い出す。同じように喜んでくれれば良いのだけれど。

エリザベスは子供が好きである。

いわば癒し。

正直メインは教会より孤児院である。

「悪役令嬢だなんて言わずに寄ってきてくれたらいいなあ。」

 鏡とベッドを踊るように行き来しながら明日の装いに思いを馳せ呟いた。




そして当日。

エリザベスはきつねにつままれたような気持ちでいた。

今教会に向かう馬車の中ではエリザベスとルチアーノが向かい合って座っていた。


侍女から馬車と護衛の用意ができたとの伝言を受け、浮き足立って行ってみればアメリア、ルシアーノ、側近のアレクの三人が立っていたのだ。

一体これはどうしたことか。

「本日は護衛も兼ねてルシアーノとアレクも同席いたします。寄付の話はその方がスムーズかと思いますので。よろしいでしょうか?」

とアメリア。

「ええ、もちろんです。お気遣い感謝いたします。」と微笑むもエリザベスは頭に浮かぶ「なぜ?」が拭いきれない。

なぜならルシアーノは絵に描いたような不機嫌さだったからだ。

そういえばアメリアはルシアーノに謝罪させたがっていた。

(せっかくのご好意だけれど‥)お断りしようと口を開きかけた時だった。

「では!参りましょうか!」

とアレクが言うと半ば強制的に馬車に乗り込むこととなってしまった。


ルシアーノが不機嫌なまま馬車は進む。

まるでエリザベスなど居ないかのように腕を組んで窓の外を眺めている。


このままルシアーノと教会に行って孤児院行って?無理である。

そう思ったエリザベスは自分から口火を切ることにした。


「ルシアーノ様」


しかしルシアーノは聞こえているのかいないのか。こちらを見る気配はない。

いや、2人しかいない馬車の中で聞こえていないわけがない。


エリザベスは続けることにした。

このままではもう埒が明かない。


「昨日アメリア様からお茶会の件で謝罪がありました。今日ご一緒することになったのはアメリア様からこの件で私と話をするように言われたからでしょうか。」


返事がない。

エリザベスは肯定と受け取ることにした。


「アメリア様にも申し上げましたが、お茶会では私の配慮不足だったのです。アメリア様は謝罪をしてくださいましたが、私の立ち周りが悪かったのです。結果お茶会が台無しになってしまいました。ルシアーノ様のお怒りはごもっともです。今後はブリザード辺境伯夫人に相応しいと言っていただけるような振る舞いを心がけてまいりますので今回のことはお許しいただけないでしょうか。」

と頭を下げる。

このように思っていることは嘘ではない。

もしこれが王都でのよく見知った貴族たちのお茶会だったら、エリザベスは子供のジュースなど、かけられる前に気づいていただろう。

慣れない土地での慣れない人たちに囲まれるお茶会は予想以上に疲れて注意力も落ちていた。


ふとルシアーノが動いた。

顔を上げると、ルシアーノが驚いたようにこちらを見ていた。


(心から謝罪をしたのが伝わったかしら)

そう思いながらルシアーノが何か言ってくるのを待つ。


するとハッとしたように「ふん!」というとまた外を眺めた。

「王都の貴族は調子がいい‥!」

と不機嫌そうに言う。

エリザベスは一瞬間違えたかとヒヤリとしたが先ほどまでのピリピリ感は無くなっている。


これでなんとかひと段落だろうか。

エリザベスはほっとして自分も窓の外を眺めた。


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