地味ダサ女が王子様を連れて行こうとした時に怒りの礼儀作法の先生が登場してくれました
「いえ、あの、その……」
地味ダサ女はアクセリに睨まれて、しどろもどろになった。
ふふん、いい気味だ。
と私がほくそえんだ時だ。何と地味ダサ女は私の手を引いて強引にアクセリの前に出してくれたのだ。
「ちょっと、ニーナ、何するのよ！」
「私は無理。アクセリ様とあなたは親しいじゃない。適当に誤魔化して」
「ちょっと、そんなの私も無理よ」
さすがに怒り狂ったアクセリに対処するのは無理。
というか、監禁バッドエンドがあるから近付きたくないのに……逃げようとするが地味ダサ女は馬鹿力だった。地味ダサ女の手を全く振りほどけなかった。
「どちらでも結構ですが、どうしたら、私の寮の部屋の窓ガラスを割ることになるのか教えていた頂いてもいいですか？」
そう言うアクセリの言葉は優しいが、瞳が怒りに燃えていた。
「いや、ニーナが日頃から恨みがあるって言い出して」
こうなったら、全部地味ダサ女のせいにしてやる。というか、元々全部地味ダサ女が悪いんじゃない。
「ちょっとライラ、何、あること無いこと言っているのよ！」
「あることって言うことはニーナ嬢。私に恨みがあるのですか」
こいつは馬鹿だ。自分で墓穴を掘ってくれた。
「いえ、違いまして、会長を起こそうとしたら、ライラが左って言うから」
「とょっと、ニーナ！ 何言っているのよ。私は死んでも左に当てたら陰険侯爵令息が出てくるから止めろって」
「ライラ嬢、その陰険侯爵令息というのは誰のことですか？」
「ええ！ そんな事言いました？」
失敗した。地味ダサ女に合わせてしまった。なんかアクセリの視線が怖いんだけど。
「そうそう、ニーナがそう言っていました」
全部地味ダサ女のせいにしてやる。
「何言っているのよ。そう言っているのはライラじゃない」
「あんたもそう思っているでしょ」
「それは少しは」
よし頷いてくれた。
「ほら、アクセリ様、今ニーナの言葉を聞かれましたよね。ニーナがそう、思っているって」
「あんたが頷かせたんでしょ」
言い合いを始める私達の前でアクセリが頭を押さえていた。
「日頃から陰険だとは皆に言われていますから、今更あなた方にそう言われてもどうということは……いや、ライラ嬢に言われたのはさすかにショックですが」
「えっ？」
ちょっとアクセリ、何言ってくれるのよ！
「はいっ？」
「いや、まあ、それよりもあなた方は何がしたいのですか？」
二人が突っ込んだのでアクセリ様は失言したのに気がついたのだ。慌てて次の話題に振って誤魔化したんだけど。
何で私に言われてショックなのか良く判らないけれど、有能な部下から言われるとさすがにショックなのか？
「お前ら、俺の部屋の下で何を騒いでいるんだ」
そこにいきなり不機嫌そうな王子様がやってきたんだけど。
完全に寝起きだ。
でも、寝起きの王子さまも格好良いと思わず思ってしまった。
「会長。会長の想い人のマイラ様が危篤だってライラから聞きました」
地味ダサ女が勢いよく言い出したんだけど。危篤って？
「えっ、マイラが危篤？」
王子様がとても取り乱した。
「そんな、アスモからは何も聞いていないぞ。ライラ嬢、本当なのか？」
血相変えた王子様が私に詰め寄ってくるんだけど、ちょっと待って！
でも、王子様に迫られるのは少しうれしい……
「いえ、殿下、私は危篤とは申しておりません」
そうだ、私はそうは言っていない。地味ダサ女も何作ってくれているのよ！
「何言っているのよ。マイラ様はサマーパーテイーまでは保たないってあんた言ったじゃない」
地味ダサ女が言ってくれるんだけど、えっ、それはゲームの結果を知っているからで……
「いや、それはちょっとそう思っただけで」
さすがの私もしどろもどろになった。
「ライラ嬢、人の生死を君は想像だけで話すのか？ 今マイラは必死に病気を治そうとしているんだ。新薬も間に合ってそれを飲み始めたところだ」
私に向かって王子様が私の王子様が怒ってきたんだけど、ちょっと待ってよ！
でも、もうそんなに長くはないはずなのだ。
「でも、わからないじゃないですか！」
地味ダサ女が叫びだした。
「病気はいつどうなるかわからないんです。会長、私を今すぐにマイラさんの所に連れて行って下さい」
地味ダサ女が王子様に迫るんだけど、私の王子様に迫るな！
「いや、ニーナ。何言っているんだ。今は真夜中だぞ。こんな時に移動ができるわけ無いだろう。それに移動には3日はかかるのだぞ」
「普通にやればでしょう。カーリナ魔法師団長なら一瞬で行けるはずです」
地味ダサ女は無茶を言う。さすがに魔法師団長を真夜中に叩き起こして私用で使うのは不味いだろう。あんな軽そうな女でも、一応この国の魔法師のトップなのだ。
「何言っている。ニーナ。魔法師団長を勝手に私用に使う訳にはいかないだろう」
「私用？ どこが私用なんですか。それを言うならば、私を土日に王宮に行かせて訓練されせるのが公私混同なんじゃないですか。そもそも、私がそんな事する必要性はないですよね。私にそんな事させておいて、偶には私の用に付き合ってもらっても良いじゃないですか」
一平民が私の王子様に反論しているんだけど。貴様なんかこき使われて当然なのに！
「いや、ニーナ。この夜中にさすがにカーリナをたたき起こすのは」
「会長。何言っているんですか？ 人の生き死にがかかっているんです。行きますよ」
ムカつくことに地味ダサ女は、私の目の前で戸惑う王子様の手を引いてくれたんだけど……思わず燃やしてやろうかと思った。
その時だ。
「あなた方、何を騒いでいるのですか。とっくに就寝時間は過ぎていますよ」
振り返ると、そこには鬼のような形相のペトラ先生が仁王立ちしていたのだ。
そうだ。良く来た、ペトラ。
今こそ、淫乱罪で地味ダサ女を牢にぶち込んでくれ！
私は期待に満ちた視線でペトラを見たのだ。
ここまで読んで頂いて有難うございます。
このサイドストーリーの
『転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて恋してしまいました』
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は完結しました。
まだの方はぜひともお読み下さい。
この話も後少しで完結の予定です。
