うつしみの生き人形
ああ、うつしみよ
うつしみの人形よ
西の町の、本屋の娘のうつしみよ
硝子の瞳に何をうつす
娘は寝台で、硝子越しに何を思う
うつしみは東の町の尖塔に
鴉羽と並んで腰掛ける
本屋の娘のうつしみは
うつしみの生き人形は
硝子の瞳に何をうつす
硝子の瞳は誰のもの
硝子の瞳にうつる瞳は
うつる瞳は何をうつす
本屋の娘のうつしみか
うつしみの生き人形か
硝子の瞳にうつる瞳に
うつる瞳は誰のもの
本屋の娘のうつしみは
西の町の窓際で
硝子越しに何を見る
東の町の尖塔の
鐘楼の中の生き人形
硝子の瞳は何をうつす
本屋の娘のうつしみは
碧き瞳に何をうつす
碧き瞳をうつす瞳は
碧き瞳に何を思う
硝子の瞳は何をうつす
落ちたる鐘の胎内に
硝子の瞳は闇の中
硝子の瞳は今閉じる
西の町の城外の
碧き湖のほとりにて
本屋の娘のうつしみは
碧き瞳を水面にうつす
碧き瞳は水面にうつる
己をうつして何を思う
碧きと碧きは混じり合う
硝子の瞳を閉ざす瞼の
古き鐘があがりたれば
硝子の瞳は何をうつす
硝子の瞳にうつる瞳は
硝子の瞳に何を思う
硝子の瞳の生き人形
硝子の瞳は何をうつす
生き人形のうつしみは
硝子の瞳に何をうつす
東の町の尖塔の、生き人形のうつしみよ
古き鐘の鐘楼で、生き人形は何を思う