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アサシンズメモリーズ  作者: 夢幻星流
Memorial.1 復活
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1.casual daily life


「お会計267円となります」


 コンビニ店員は、客が出した品のバーコードをレジ機で読み取り会計をしたり、品出しをするのが仕事。簡単そうにみえて意外と大変というのが、世間からの評価だ。

 しかし、実際は、意外に大変という軽いノリで片付く仕事ではないと言うことを、この道1か月のプロフェッショナル、夜見月翔(よみつきかける)は提唱したい。

 商品名、特にタバコの種類を覚えたり、宅急便、インターネット商品の受け取り、コピー、公共料金代行収納などやる仕事が多い。故に、仕事に慣れるのに時間がかかる。


「33円のお釣りとレシートでございます」


 客はそれをそっけない態度で受け取り、手慣れた手つきでレシートを不要レシート入れに入れる。


「ありがとうございましたー」


 お客の態度も人それぞれだ。今のようにそっけない人、気のいい人(特に可愛い人だと少しテンションが上がる)、稀に怒鳴って文句を言ってくる人、色々いて意外に楽しい。

 大変で忙しいところもあるが、やりがいもあるのがコンビニ店員だ。翔は店長からは物覚えがいいと言われ新人にも関わらず重き信頼を置かれている(コキ使われている)。


 一人暮らしの翔は、毎日6時間勤務、時給1050円という条件もあって、このバイトをかなり気に入っている。高校在学中はバイトでお金を貯めて、卒業後は就職。

 それまでは、このお店にもお世話になることだろう。



「えっと、ということで、この店今日で締めるから」


「はい?」


「最近、駅前に新しくコンビニできたでしょ?あそこに客吸われちゃってさ。ここ最近結構きつかったわけよ。あれ?言ってなかったけ?」


「い、いえ……」


 店長の言葉に、翔は気の抜けた返事をする。


「ってことで短い間だったけど、ありがとね」


「こ、こちらこそ、ありがとうございました。いい経験を沢山させて頂きました」


「じゃあ、今月分の給料は振り込んどくから」


 そうして、店長は、もう店閉じたいからと翔を外に追い出し店の奥に行ってしまった。


 翔はしばらくその場に立ち尽くしていた。

 電気が消え暗くなったコンビニをボーッと眺めているとガラスに貼られた「6/7閉店します」と書かれたポスターを発見する。


「はぁ……」


 翔は小さくため息を吐くと夜空の星を見上げた。


「仕事、どうしよう……」




***


 翔が職を失ってから一夜が明けた。 

 しかし、翔はこの急な出来事に昨夜中ずっと呆然としてしまい、ほとんど寝る事が出来なかったのであった。


 ぽちぽちとスマホを片手に歩きで登校する生徒が多い中、翔は住んでいるボロアパートから電車で1本ほどの距離の学校から家まで自転車で通学をしている。

 

 生徒達が正門を通って学校入るのを横目にそれを通り過ぎ、裏門へ向かう。


 駐輪場に着くと、歩きながら空いてるスペースを探そうと自転車を降りた。

 こう見ると、自転車通学も以外にいるものだ。駐輪場はポツポツと埋まっていて、3個以上連続でスペースが空いているところは見当たらない。

 というのも、翔は他の人のすぐ隣に自転車を止めることを嫌う習性がある。電車の席が三席連続で空いてたらその真ん中に座るタイプ。一つや二つだけ席が空いても座らないタイプの人間なのだ。特に理由はない。


「わっ!」


 ボーッとしながら歩いていると翔は自分の自転車のペダルに足を絡めてしまう。

そして、そのまま転倒し、そばに止めてあった一つの自転車が倒れる。


「いてて……」


 次は倒れた自転車が隣の自転車にあたり綺麗に並られた自転車は次々とドミノ式に倒れてく。


「あ、ちょ、ちょっちょっ」


 急いで止めようとするが間に合わず6、7台の自転車が倒れてしまった。

 

「はあ、ついてない……」


「ついてない……か。ふふっ、転んだのは自分のせいなのだからついてないとは言わないのではないかな?」


「うおっ!」


 背後から急に声が響き、翔は思わず後ろに倒れ込んだ。


「大袈裟だな、君は」


「あ、笹本先輩……おはようございます」


 翔はゆっくりと起き上がり、倒れた自転車を立て直しながら目の前の少女に快く挨拶をした。彼女の名前は笹本理天(ささもとりてん)。長い赤い髪を腰あたりまで垂らした少女だ。あと、とにかく美人である。色々あって翔の知り合いの先輩だ。


「あぁ、おはよう夜見月くん。朝から災難だったね」


「はは……ボーっとしてたバチが当ったって感じですかね。あれ、災難?さっきはついてないとは言わないって……」


 笹本は疑問かい?と首を傾げ、


「ついてないことと災難は違う。君に災難が降り注いだのは事実。しかし、それは自らの不注意で転んでしまった君自身が原因なのだからついてないとは普通言わないだろう?これ、あくまでも私の自論だがね」


 笹本は自信ありげに笑みをこぼし翔に語りかけるようにそう言った。


「はぁ、相変わらず細かいですね」


「おや?相変わらず、と称されるほど夜見月くんと私の間には関係値はないと思うが?中々、部活にも来てくれんしな」


「そ、それは……」


 ここで言っておくと、翔は探偵部という部活に所属している。ぶっちゃけ何をする部活なのかは知らないが、笹本の怒涛のアピールによって入ることになってしまった。


「バイトがあったんです。もう……辞めましたが。あと、僕って押しに弱いんです。入部したのだって不本意でして……」


「不本意で入部届まで出すとは可愛いやつだな」


 笹本はそう言って笑うと倒れた自転車を立て直し始める。


「あ、ご、ごめんなさい。自分でやります」


「いや、結構。それより時間がまずいのでは?そろそろ登校時刻の8:30だぞ」


「え、嘘!本当だ。えーっとー。あ、先輩だけでも早く行ってください」


「安心しろ。私がこうしたいからこうしている。私が君に手を貸していたせいで遅刻してしまったのなら、君は私に手を貸さなくてはならない。すなわち君は私に部活に出ろと言われたら断れなくなるわけだ」


「な、なるほど……?」


 その瞬間、登校時刻を知らせるチャイムが鳴り響く。


「ふふっ、これで遅刻同盟だ。バイトも辞めたと言ったな。予定はないだろう?」


「分かりましたよ。けど、なんでそこまでして……」


「とっておきの事件(ネタ)がある。人手がいるんだ。今日の放課後、必ず部室に集合だぞ。約束だ」


 笹本はそう言って軽く翔に微笑み、背中を見せて歩いて行ってしまったのだった。


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