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靴喪神~とんでも一家とのにぎやかな日々~  作者: 清十亀
第3章 スツラムへの旅
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3-9 マギーの情報3-涼くんの事情

≪地球に降り立った2人だけど、始祖けいすけが10年、聖女めぐみが6年近く失踪してたでしょ。お金も持っていないから、とりあえず大学時代の知り合いを訪ねたそうよ。

 涼、権藤さんって知ってる?≫

【ああ、父さんと母さんの友達って言ってたけど、だいぶ年取った人だよ。うちに来てよく話をしていた。時々、僕をからかうのがうっとうしかったけど。】

≪その人が、オズよ。≫

【へ? 誰、それ?】

≪オズ・ワールド、大魔法使いって言えばわかる?≫

【エ、エ~!うそ!普通のおっさんだよ。2日前にも家に来て、話してたよ。】


『話の途中で、ごめんなさい。その人がこの世界の魔法理論を作ったの?涼くんの世界って魔素が無くて魔法もないって言ってなかった?』

 興奮したヨナが割り込んできた。

≪魔法は使えないけど、一部のギフトは使えるのよ。思い出してよ、ロートは割れ目から地上の情報を調べられたのよ。探査してるのよ。ギフトだって、寄生体が魔素を使ってるんだから。魔素かそれに代わる何かが必要なはずよ。範囲は限られていたようだから微弱なんでしょうけどね。 

 そこはまだマザーたちにもわかっていないみたい。だから、繁殖地として適当とは思えない地球にロートを張り付けて調べてるんじゃないかな。≫


【ねえ、権藤さんが大魔法使いオズていう話、本当なの?】

≪オズだけじゃないわ。大賢者ゲンナイや大医師コトーなんかも、始祖の知り合いよ。

 ロートが地球の傍にいるでしょ。セイ様はロートを通じて始祖と連絡を取っているのよ。この世界の人間社会で問題が起こった時、セイ様が始祖にアドバイスを求めることがあるのよ。

 権藤さんは2人が帰還した時に世話をした人で、この世界の話に夢中になったそうよ。もともとこういった世界に興味があったから、・・・ねえ涼、始祖の友達ってそういうのが好きな人が多いんでしょ?・・・

 1000年前の帝国分裂の際、セイ様から相談を受けた話を聞いて、権藤さんは自分が行くって言いだしたそうよ。ケイスケは彼の世話になっていたから、断り切れないし、彼の会社経営力の凄さを知っていたから、来てもらったみたいよ。≫

【どうやって?】

≪ロートに連れてきてもらったのよ。オズがこの世界で活躍できたのは、ロートがオズの鑑定だったからよ。マザーの持つ技術やギフトは私なんかとは格が違うのよ。ヨナさんが不思議がってた魔法も、ロートの魔法技術を与えられて、地球世界の物理理論に当てはめて再構築したものだそうよ。

 涼、オズの知識に没年は無かったでしょ。オズは地球に帰って、普通に生活してるのよ。あなたの両親と同じようにね。≫

【やっぱり、みんな帰りたいんだ。】

≪あんたたちの寿命って80年ぐらいなんでしょ。始祖にせよオズにせよ、この世界で数百年生きて、自分がやりたかったことをしてしまったんだもん。飽きたんじゃない?

 でも、オズが帰るきっかけとなったのは、スツラムを作ったあの2人の落ち人せいよ。

 ロートがオズと一緒にこの世界にいる間に、地球にある次元の割れ目が動き出して、意図しない何人もの人がこの世界に落ちてきたそうよ。オズはあの2人とは親しかったから責任を感じてたみたい。それで、オズとロートは地球に帰り、ロートは割れ目の管理を続けているの。

 その後も、ロートはセイの要請に応えて人を送ってくるけど、こちらで他のボイドに付け替えて、すぐ戻っていくみたい。だから、その後の落ち人はみんなこちらで亡くなってたでしょ。≫

【じゃあ、僕は帰れないの?】

≪帰るときが来たらロートが迎えに来るか、セイ様が送ってくれると思うよ。≫

【セイ様が?】

≪マギーが来たから、この世界の管理は譲ることになるでしょ。そしたらセイ様、心置きなく始祖のもとに行けるじゃない。どちらが先に死ぬか知れないけど、最後は一緒にいたいんでしょ。≫

【鑑定って、そんな感情持ってるんだ。】

≪私たちはほぼ一生を同じ宿主と共に生きて、その宿主と共に死ぬから、宿主の性格に影響されるのよね。マザーとなった者は、宿主を変えたり、宿主の死後単独で生きることもあるけど。

 そうだ、肝心なことを言うの忘れてたわ。≫


【何?】

≪涼は偶然次元の割れ目に飲み込まれたと思ってるでしょ。でもそうじゃないの。

 この世界に他の寄生体が侵入しているってセイ様が感じたのが1年前、つまり涼の世界では7日前のことなの。マザーたちが状況を検討して、チャウカイラだと断定したけど、セイ様との連絡が取れなかったので、マギーの派遣を決め、根拠地を出発したのが1日前。早くいきたいから、地球のそばを通過する際、ロートが始祖の精神体を投げ渡して合流する予定だったの。

そう、最初は始祖が来るつもりだったんだけど、問題を発見。始祖が持っていた‟吸収”が無くなってたの。

 慌ててロートが調べたら、涼の中に移っていたのね。寄生体の中にはコピーが取れないものがあるのはわかってたけど、まさか生殖時に移動する奴が居るとは思わなかったわ。

 チャウカイラに対抗するには吸収が必要だというので、あなたに話をしようとしたら、山に出かけてたでしょ。急いでたから『涼にはいい経験だろう』って、次元の割れ目を差し向けたんだって。ここに着いてからマギーが説明する予定だったけど、セイ様の攻撃やらあんたの精霊化やらで精力使い果たしてしまったのね。≫


『なんか始祖様って、おおらかと言うか、適当な考え方をするやつみたいだな。』

 バグの感想が入る。

【あぁ、父さんらしいと言えば、父さんらしいんだけど。・・・母さんは止めなかったの?】

≪『ややこしいから聖女には声をかけるな』って言ってたそうよ。≫

【ウワァ~。父さん大丈夫かなぁ。母さん怒るとムチャ攻撃的になるし、しつこいし。普段穏やかだから、すごいギャップがあるんだ。

 アッと、・・・マギーから伝言。『さっきのは浄化』だって。

 何のこと?】

≪カーラの能力のことよ!

 浄化かぁ~。あるのは知ってたけど、見たの初めて。

 カーラ、もう一度鑑定させてね。≫

 そう言うと、シャルルンの姿が消える。


 しばらくして、姿を現したシャルルンだが、

≪ダメ。治癒との違いが判らない。マギーが知ってそうだから、それまではお預けか。

 マギーが目覚めるまでは、制御力の訓練だけしておこう。

 後は・・・、バグさんへ‟鑑定”を付与することか。

 やり方はマギーのくれた知識の中にあるから、後で涼に渡せばいいだけだけど。問題は何時するかね。

 意識がなくなるのが一晩で済むなら、寝る前に渡せばいいんだけど。≫

『いや、チャウカイラが身近にいるのに、無防備な状態になるわけにはいかないだろう。父さんたちの方がどうなってるのかも確認して、それから決めた方がいい。』

『そうですね。お母さんの結界があれば、バディの意識が無くなっても大丈夫だと思いますから、お2人が帰ってこられてから決めましょう。』


 ということで、ベネとリサが帰るのを待つことにした。


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