表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/60

2-22 ギフトの構築

シャルの視点です。

 風呂に入って、ひと眠りした。

 涼君はまだ起きる気配がない。


 夕食時、食堂に集まったがパパの姿がない。

 ママに聞いたら、悪~い顔でにやりと笑って、

「トイレに籠っている。」と小声で言う。

 パパがお腹を壊す!そんなことがあるのか。バグ兄、ヨナ姉も目を丸くしている。


「チュリオに会談への出席を拒否されてから、ちょっとふさぎ込んでいたんでな。

 あいつが会談に呼ばなかったのは、私と一緒に旅をしているベネがうらやましいからだ。会ったらなじらずにはいられないから、気持ちが落ち着くまで、間を置きたいからだ。

 と、気を使っている様を話したら、号泣してな。

 あまりに面白いんで、ちょっとからかったら、トイレに籠ってしまった。

 飯は要らんと言っていたから、放っておいて食べよう。」

 パパかわいそう。


 食事後、パパたちの部屋に行く。

 ママが、トイレのドアをたたいて、

「みんな来たぞ。いつまでも拗ねてないで出てこい。」

 というと、パパがのそりと現れる。目の周りが真っ赤だ。ママにちらりと視線を向けるが、すぐにそらし、「フンッ」と鼻を鳴らす。

「仲がいいわね。」と、ヨナ姉がささやいてくる。えっ、このありさまのどこが?


「さて、明日の領主との会見だが、段取りは決めたか?」と、ママ。

「みんなからいろいろ意見も出たが、今日のこともあるので媚びる気にはならん。

 今日の件に領主が絡んでいるかどうかわからんから、淡々と進めることにする。

 まず俺が『討伐隊のおかげで追い詰めた』と話したらリュウイを出すので、ヨナは弓を射て、リュウイの目の前に止め、小さな竜巻を四方に飛ばせ。その後、バグが切りつけて終了だ。

 そうだ、ヨナ、リュウイの右足の傷、ギルドでつけた方だ、見えないように修復しといてくれ。そこをもう一度、バグが切りつける。

 そんなもんでいいだろう。何かあるか。」

「サルホスを見て、何もしないのもしゃくだね。」

「サルホスは領主の護衛も兼ねているはずだから、お前と領主の間にいるはずだ。そこにいたら、切りつけるとき、切っ先をかすらせろ。怒ったら『おや、戯れが過ぎました。』とでも言ってとぼけるさ。」


「まだ何か仕掛けてくるかな?」

「今晩と明日の行く途中は大丈夫だろう。完全に領主と決別する気なら別だが、俺たちへの憎悪と引き換えにするほど、この町から得られる金は軽くないだろう。」

 会見中、会見前後の警戒はお前たちに任せるよ。」

 最後の言葉は、私とママに向けたものだ。


 その後、着ていく服や装具の話をしていると、

≪シャルちゃん。今面白いのが見えるよ。意識合わせて。≫

 とシャルルンが呼ぶ。

 みんなに断わってから、シャルルンに意識を合わそうとすると、いきなり両腕を掴まれた。ママとヨナ姉だ。

「私たちにも見せてもらえるかな?」

 言葉は疑問形だが、有無を言わせぬ迫力が迫る。

『助けて。シャルルン』

≪仕方ないなあ。まあ、今なら涼の意識がないから大丈夫か。≫

 と言って、直接2人と調整してくれる。

 シャルルンに意識を合わせると、ママとリサたん、それにぼんやりとしているけどヨナ姉の姿が感じられる。

≪ヨナさんは慣れてないから見づらいかもしれないけど、我慢してね。≫

 そういうと、目の前に涼君の精神空間が広がる。

『広いな。』『何んですか、この空隙。』

 ママとヨナ姉の感想だ。ごめんね涼くん、やっぱり第一印象はそうなのよ。


≪その説明は後。今、白く点滅させてるところを見て。≫

 シャルルンに急かされて、精神構造が集まっているところを見ると、青い思考空間、赤いギフト、黒い部分に3つの白く光る場所がある。よく見るとそれらをつなぐ紐のようなものがあって、それに沿ってノッドと呼ばれる光の点がすごい勢いで動いている。

≪今、吸収したギフトを自分のものとして構築している途中よ。黒色が取り込んだギフト。そこから青の思考空間を経て、赤い部分が出来てるの分かるでしょ。ちょっと前に気づいたのに、もう赤い部分が黒の部分の半分くらいになってる。

 そうか!思考空間を経る必要があるんで、意識をなくして邪魔しないようにしてるんだ。≫

 興奮するシャルルン。何を言っているのか、分からないよう!


『説明を頼む。基本から教えてくれないかな。』

 これはママの思念。ママも興奮している。

≪このだだっ広い空間は、精神空間。普通の人にはこんな空隙はない。おそらくこれから吸収するために空いているんだと思う。かたまりになっているところ全体が精神構造。普通の人はこれが精神空間に詰まっている。というか、精神構造の成長に伴って精神空間が大きくなるんじゃないのかな。ママさんやヨナさんの精神空間って大きいんだけど、空隙はほとんどないもん。

 青く色づけたのは思考空間、記憶や思考を行なう場所ね。

 黄色いのは体幹機能、生物が意識せずに成長したり、体位を維持したりする機能の集まりね。いわゆる技術もここにあるわ、医療技術や剣技などね。

 赤いのは自分が使えるギフト、種類ごとに色合いを変えてあるから5つに分かれてるの見えるでしょう。深紅が吸収、さっきまでここから周辺部の黒い塊が吐き出されてたの。他は探査、収納、隠遁。今構築中のはまだ触れないからわからない。もうすぐしたらノッドが離れて繋がっている紐みたいなのが外れるから、触れるようになるわ。

 緑色のが以前シャルちゃんとピュトから吸収したギフト。さっきの4つの他に鑑定と結界がある。この2つがなぜ発現しないのかはわからないけど。一度取り込んだものはみんなストックしているみたい。

 黒いのは、今回取り込んだもの。3つあるでしょ。今構築中のものがどれに当たるかわからないけど、あいつが隠形と拘束を持っていたから、どちらかだと思う。

 紫のでっかい かたまり 、これが何かわからない。こんなもの世界の知識にも見当たらなかった。≫


〔魔力塊だわ。〕

 突然リサたんがつぶやく。

〔あの時は、通り抜けただけだから、絶対とは言えないけど、感じが似てる。それに涼君は異界のはざまで、魔力塊にぶつかって、取り込んだって聞いたでしょ。あの時精霊界の子が言った‟誰か”の意味が分かった。魔力塊は単なる魔力の塊じゃない。精神体なんだ。生きていて、思考する。〕


『なるほど。魔力塊の魔力量は魔界の連中がとんでもなく大きいというくらいだからな。涼の魔力調整量が大雑把に見える訳だ。

 ヨナの言うとおりだ。こんな奴に魔法を教えたら町が吹っ飛ぶ。魔力の調整精度を普通の10倍ぐらい細かくできるようにしないとうかつな魔法は教えられない。』

『でも、この思考体ですか、今のところ表に出てないですよね。』とヨナ。

≪元の涼がどんな性格だったのかは知らないけど、時々涼自身が不審に思っていることがあるの。元の世界の家族を思い出した時『なんで懐かしさがないんだろう』とかね。

 真剣に考えてる様子はないけど、漏れてくるのよね。≫

『そのうちまた魔界の鑑定に聞いてみるさ。魔力塊との付き合い方をね。

 それより、涼の危険度がまた増えたな。シャル、シャルルン、涼の面倒、よろしく頼むぞ。お前たちとのきずなが、涼を人として留めておけるおもりのようだからな。』


 そんな話をしているうちに、新たな赤いギフトはさらに大きさを増し、接続していた紐のようなものが外れ、数体のノッドを残して、残りは思考空間で活動しだした。

 シャルルンが手を伸ばし、元の黒体を触ると。

≪今のは拘束だわ。後は、隠形と・・・ウン?これは何。ギフトじゃないわ。リサたん分かる?≫

 残りを触りながら、リサたんを呼ぶ。

 リサたんはそれを触りながらしばらく考えていたが、

〔これは、技術ね。暗殺術じゃないかしら。

 まったくこの子はとんでもないもの取り込んでくれるわね。〕

 その間に、ノッドが動き出し、暗殺術?に集まると、紐を伸ばし、黄色い体幹系が集まったあたりに新たな塊を作り始めた。

≪ああ、新しいジャンルだ。技術系はオレンジ色に色分けしとこう。≫



 シャルルンとの同調を解くと、パパとバグ兄がイラついた顔で迎えた。

「長かったじゃないか。何があった。」

 不機嫌さを隠さず、パパが訊ねる。


 ママとヨナ姉が、涼の脳内で起こっていることやその危険性などを話すうちに2人の顔から不機嫌さが消え、真剣な表情に変わる。

 パパは聞き終わってから少し考えていたが、

「ともかく今は見守るしか手はない。涼の獲得したギフトや技術をどう活用するかは、みんなで考えよう。リサたんの提案で始めた念話ネットワークとかいうのは、ムチャクチャ便利だしな。シャルルン、状況が変化したら知らせてくれ。」


 ちょうど、シャルルンから涼が目覚めそうだという連絡が入った。

 みんなが私の周りに集まって座る。

 何かが起こる予感。胸が高鳴る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ