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1-15 シャルルン

涼くんの視点です。

うわさのシャルルンが登場。

会話(念話)が続くので、涼くんは【 】、シャルルンは≪ ≫で区別します。

『 』でくくったのは、心で思った言葉です。

 ふと、我に返った。

 周りは真っ白な空間。上下、左右、何処までも続く白。


 ≪気が付いたようね≫

 突然目の前に、顔が現れる。 

 『娘さん?』その顔は先ほどの娘にそっくりだ。


 ≪初めまして。私はシャルルン。シャルの鑑定よ。≫

 【シャル? 何それ。“カンテイ”って 官邸? 艦艇? 鑑定?】

 ≪失礼な人ね!さっきから私たちを見てたでしょ。

 私のことも何度も話題に出たわよ!≫

 【いや、見てたけど、言葉がわからないし】


 僕の言葉に娘さんの顔…いや、シャルルンと言ったか…は不審そうに眉をしかめる。

 ≪念話だから解るのかな?

  それとも鑑定の力で勝手に翻訳してるのか?≫

 『ここは答えを求めていないな』と思ったが。

 ≪聞こえてるわよ。≫

 と僕を睨む。


 ≪そっか~。さっき精霊化したばかりだものね。

 じゃあ、まず念話の練習をしましょ。

 今だと言いたいことと他の考えとがごちゃごちゃで聞きにくいから。≫

 と言って、念話の説明を始める。

 

 『勝手なやつだな~』と思ったら、また怒られた。


 しばらく、怒られながらの練習だ。

 ともかく気持ちの高ぶりを押さえないと考えたことが全部相手に筒抜けになる。

 心を静めて、言いたいことだけ“声に出す”練習をする。

 そのうち“口に出す”要領がわかってきた。


 ≪あらためまして、私はシャルルン。

 あなたが見た一家の娘シャルのギフトである鑑定能力よ。

 鑑定ってわかる?≫

 【物の名前や価値を調べたり、人の名前やレベル、ステータスなどがわかる能力だろ】

 ≪レベル? ステータス?≫

 【人が持っている攻撃力や守備力などを数値化したものだよ。

 あと、体力や魔力が残りどのくらいあるかとか。】

 ≪そんなの知らないわよ。

 ギフトの種類や発現している魔法の種類は判るけど、その大きさなんて、弱い、強い、とんでもない、くらいしか区別できない。

 何かの実績、大会で優勝したとか、戦闘で活躍したとかの情報ならわかるけど。≫


 【じゃあ、その人の持つ将来の適正職業はわからないの? 勇者だとか賢者だとか。】

 ≪何それ!そんなのその人が行った実績で、後から呼ばれるものでしょ。

 最初からそんなの判らないわよ。それは予知って言うの。

 予知なんて無理。神様じゃないんだから。≫

 【でも、ギフトって神様から与えられるんじゃないの?】

 ≪人知を超えるものと言う意味で、神と言う言葉を使っているだけよ。≫

 【それじゃあ、何で教会があるんだ・・・

 ・・・なんだ!なんで僕はこの世界の教会のことを知ってる!】


 僕は混乱の極みにいた。

 僕は知っている。この家族のみんなの名前や特徴。出会った人たちとの会話を!

 僕は知っている。この12年間の経験。旅の経路、出来事を!

 僕は知っている。この世界の形、東大陸と西大陸の形状、国の位置と特徴を!

 僕は知っている。ギフトや魔法の種類や特性を。・・・シャルルンのことも。


 彼女にはどう見えたのだろうか。

 不審な顔で考え込んでいたが、突然僕に突進してきた。

 突進と言うか、頭が僕に突っ込んできて、僕の体に入り込んでしまった・・・のだ。


 パニックだった頭が一瞬で冷えた。

 彼女は何をした? どこに行った?

 身体に違和感はない。

 手(触手とも言う)を伸ばして体の中を探すが見つからない。


 しばらくすると、突然、先ほどいた場所に彼女が現れた。

 満足げな顔で微笑んでいるが、眼付は剣呑だ。興奮を抑えきれていない。


 ≪すばらしい! あなたには“吸収”能力が有る。≫

 重々しい口調で宣言した。


 【それ何?】

 バカみたいな口調で問いかける僕。

 バカみたいな顔をしていた自信はある。


 ≪反応が薄いわね。これまで始祖だけにしか確認されていないレアなギフトよ!

 他人の持つギフト、魔力、技術、知識などを自分の物に出来る能力よ!

 その能力が有ったから、始祖は短期間で西大陸を統一して、ジブラトス帝国を築くことが出来たんだから。≫

 【いや、そんな前のめりに話されても。

 え~っと、始祖って、誰だったっけ?

 バズドーラ・バルス。落ち人で、1700年前に西大陸を統一して、ジブラトス帝国を一代で築いて、子供が2000人以上いて、聖女と一緒に教会を設立して、何、聖女も落ち人!教会を通じた人材登用・・・・・】

 始祖?と考えただけで奔流のようにあふれてくる知識。

 断片的な知識は関連性を築く暇もなく、さらにその中の印象的な言葉から派生する知識が合わさって、収拾がつかなくなった。

 当然のようにその知識は、念話を通じてシャルルンに流れ込んでゆく。


 ゴツン!!! 衝撃が体中に響く。

 シャルルンが僕に何かしたようだ。

 耳元でドラを鳴らされたように、衝撃が強弱繰り返しながら僕を揺さぶる。

 イメージとしてとらえたのは、平手打ち。肉体もないのに器用だね~。


 ≪うっさいわねえ!! 

 さっき教えた念話のやり方、もう忘れたの!!≫

 君の突っ込みどころはそこなの?


 だが、おかげで意識が“始祖”から離れ、知識の奔流が止まった。

【駄目だ!制御できない。助けて。】

 意識を集中させないように、心の半分で九九を唱えながら、残った意識であえぐように念話する。7x1=7、7x2=14、7x3=23 違った21だ、7x4=・・・・


 シャルルンは、びっくりしたように目を見開き、

 ≪何んなの、そのやり方。

 わかった。まだ取り込んだ知識が整理されてないのね。

 時間あげるから、君が何を手に入れたか一度落ち着いて確認してね。≫

 【エッ、何するの?】8x3=24、8x4=32、8x・・・

 ≪一旦接続を切るわ。

 あなたの思念の形は覚えたから、また連絡するわね。

 私もシャルちゃんと話さないといけないから。

 そうか、ママさんとリサルンとも話さなくちゃ。

 じゃぁねぇ~。≫


 【ちょっと待ったー!】8x8=64、8x9=72・・・

 ≪なあに?≫

 【ここに一人ぼっちにする気か。この空間何とかしろ…いや、してください。】

 こんな何もない空間に取り残されたら気が狂ってしまいそうだ。9x3=27、9x4=・・・


 ≪フンッ、これが封印された空間よ。

 私なんか8年間ここに閉じ込められてたのよ。≫

 いたずらっぽく笑って、

 ≪でも、抜け穴なんかその日のうちに作っちゃったけどね。≫


 少し考えるそぶりを見せた後、

 ≪もういらないか。≫

 と言った途端、パリンと軽い音がしたかと思うと、目の前に先ほど見たテント内部の風景が広がった。

 娘さん -シャルちゃんと言ってたな- が、ベッドの横向きで寝ている。

 仰向けで両足をベッドから垂らすようにして。

 両足に僕の靴を履いたままで。


 ≪君の靴を履いた時の衝撃で気絶してたのよ。≫

 【大丈夫なの?】4x3=12、4x4=18、4x5=20・・・・

 ≪今はただ寝てるだけ。

 もう起きそうだから君も靴に戻ってて。

 多分靴を脱いだら、私と君との接続は出来ない。

 また後で、履いてもらって連絡するね。

 そうそう、四四は16だよ。

 じゃあねぇ~≫

 と言うと、彼女はかき消えた。


九九。私は7の段が苦手でした。

眠たい時や興奮を押さえたい時に、九九は便利ですよ。

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