村についてから、、、
秘境の村、リオン村にたどり着き交番に行くと、
チェルシーという村娘の親類だという、警官のジャックという初老の男性が現れた。
二人体制で勤務しているとの事で、もう一人の人物は、体調がすぐれず不在で、ここ数か月は
日々一人で勤務をしているとの事だったが、ここの村にきた事情を説明すると
「あんたが、親戚の娘、チェルシーが言っていた探偵事務所のジョンさんかい?
本来、部外者の人間に、この村で起きた事件の事を話すのはどうかと思うけどね。
まあ、迷宮入りになっちまったんだから、仕方ない。」
そう、苦笑いして、事件の概要を話した。
「村で、集まりがあった時、この村では、そういう時には、たいてい酒が振舞われるようになっていてね。当日も、隣村で収穫された赤ワインが振舞われてんだ。
事件の当日もそうだった、その日は、真冬でね。この地方では名物の体が温まる「ホット・ワインが、30人近くほぼ成人した村人全員に提供されたんだ。
村人たちは、各人それぞれ簡単な手料理のおつまみを持ってきた。
あと、今、この地方で、伝染病の肺炎が流行っているんで、発熱した人間を見分ける為に、入り口や室内にサーモグラィーを設置したんだ。
また、あとで宴会の片づけがし易いように、紙皿と紙コップに一人分の持ち寄った料理や飲み物を入れたんだ、
そして、宴もたけなわになった時、
その中の酒飲んだ何人かが、口から血を吐いて倒れた、そして最終的には10人もの尊い命が奪われた。
倒れた人間の紙コップの中のワインからは、毒の成分が検出された。
3本置いてあった空のワインの瓶からは、毒は検出されなかった。
ただ、この事件には、謎があってね
その10人が、村で幅を利かせていった、高利貸しの一家の関係者だったんだが、
一番怪しいとされる、お酒を給仕した人間は関係がないとされる、村娘のジェーンだった事。
ジェーンの家は、裕福だったし、親元で愛情深くしっかり成長したようで温和な性格でいたって世間の評判は良かったし、、。
ただ、ジェーンは、何というか昔水難事故で、脳にダメージを受け、言葉が上手く喋れなくなってしまい、
福祉施設の直営のレストランで給仕係として働いていたんだ、ひたすらに真面目にね。そんな人間が犯罪を犯すなんて、黒幕がいるのに違いない。
ジェーンはショックで入院中だし、何しろチェルシーはジェーンの親友だし、何とかしてやりたくて探偵のあんたを頼ったんだ」
やや早口で事件の概要を説明する。
俺は、しばし考えて
「では集まりがあった建物にある事件現場の会場に行きたいのと付近の地図も、例の紙コップも直接見せて頂きたいのと、その時に現場にいた何かしら役割、例えば会場設営や給仕などをしていた 人間の名前と役割を書いたリスト、を確認したいのと、サーモグラフィーの室内と入口の画像を見たい」
と伝えた。
「役割リストは、この村は、何か集まりがある時は、諸経費の表や予定の進行表なんかを用意するのが常だから、役割分担表も作成されていたよ。それと、例の紙コップは現場の会場に保管されていてサーモグラフィーの画像は現場のノートパソコンで見れるから、
この後、儂の車で連れて行ってあげるよ。だいたい1時間ぐらいかな」
俺は好意に甘えて、車に乗った、乗りながら、役割分担表と会場付近の地図をみて物思いに耽っていた。
役割の分担表には、当日、発熱したとかで、休みのなった人物には二重線が引かれていたりしていた。
そして到着して見てみれば、現場の会場の外見は3階建ての巨大なログハウスで、一階の中央部分の広間が宴のあった現場らしい。
まず、サーモグラフィーの画像を確認して
「では、毒が検出された紙コップを見せて貰えますか?」俺は、警官のジャックさんにお願いした。
そして、眼の前に、紙コップが置かれると、
「このうちの一つを今、徹底的に調べても良いですか?つまり、ある物質を振り掛けての確認ですが、すみません、事件解決のためには、どうしても必要なんです」
ジャックさんは狼狽した。村の鑑識が調査済後とは言え、勝手に、何かの物質をかけて確認など、おいそれと出来る事ではない。その事で上の方から許可など得られないだろう。
しかし、
「今回に限ってだぞ、、、」
そういうと、袋から一つ紙コップを取り出した、吐血した血が一部付着しているとは言え、保存状態は良好である。
「プシュー」
と俺がカバンから取り出したスプレーを掛けるとなんと、黒い線で書かれたどくろの絵が浮かび上がった。
「これは、、、」
警官のジャックさんが驚愕した。
「これはマイナス20度に冷却する冷却スプレーです。紙コップには、あらかじめ毒を入れる予定のものとそうでないものと区別する為の印、マークが特殊なインクで描かれていたようです。
そのインクの話はおいおい話すとして、
そして、おそらく真犯人は給仕係のジェーンではなく、、、
その日、急遽、お休みした、給仕係のリーダーで指導役の酒屋の家業をしていて今回ワインを提供していたナンシー夫人です。」
「なんだと」
「この、集まりについての進行予定表は数日前の予定について少し記載がありますよね。ナンシー夫人以外の給仕係は5人いて、ジェーン以外のメンバーは皆ベテランで指導の必要はほぼなく、ジェーンだけは新人なので、会場で給仕係をする前日に、特訓というか指導を受けていた。ジェーンは脳にダメージがあるので、より時間をかけて丸一日がかりで指導を受けていたようです。
そして、その内容が、どくろのイラストが描いてある紙コップ10個には、一本の毒入りのワインを、その他のイラストがない紙コップ20個には、2本の通常のワインを入れるようにと。
その、紙コップのどくろのイラストは、常温から温度が上がると、消えるインクで描かれていたので、ホット・ワインを入れて、時間が経っと、どれが毒入りのワインを入れたコップか分からなくなってしまいますからね。
ただ、このインクは、マイナス20度に冷却すると、本来、描いたイラストが復活します。だから、今冷却スプレーで復活させました。」
例えば、と、手帳の紙を一枚ちぎり、巷で売れている、文字を描いてそれをペンの頭にあるキャップのシリコンの部分で擦ると「摩擦熱」で、文字を描いた部分が熱くなり、その熱で消える事を実演した。
書き直しができるボールペンという事で有名だが、実は、マイナス20度の冷気を当てると、消したはずの文字などが復活するのだ。
「そして自分は、当日発熱による体調不良と会場に連絡を入れ、表向き休みにし、表向きは木箱に入れたワイン3本をスタッフに配達させたが、変装して給仕係がお酒の準備をする時間帯にこっそり現場に立ち寄り、「ゴミの片付けの手伝いに来ました」とかいい、指紋が付かないように手袋をした手で現場にあった3本のワインの空き瓶を持参した3本の空き瓶にすり替えたんじゃないでしょうか?何しろ、すり替えないとその3本の中の1本の空き瓶に毒が入っていたのが分かりますし、
そして、直ぐには現場から家に戻らず、家の酒屋から、中間地点の会場でワインの瓶3本を回収して通り、その先の病院に行き、帰りは家の酒屋に直帰したんだと思います。
その証拠に、サーモグラフィーには発熱していない人物数人が、給湯室を出入りする画像があります。
その中の一人に、布のバッグを抱えてる人物がいますが、カバンがちょうどワイン3本が入る大きさで、そのかばん全体が温度が高い状態です。おそらく、この中身は、ホット・ワインが、入っていたワイン3本の空き瓶だと思われます。その余熱が空き瓶から伝わり布カバン全体を温めていたと。
なぜ、温かい布カバンを持っていたのか?それが、不思議でしたが。」
「つまり、ナンシー夫人が、事件当日には、発熱したと仮病を使い休み。現場にいない事にして、ジェーンを使い、こっそり毒入りワインをターゲット10人に飲ませ、自分は変装してこっそり毒が入っていたワインの空き瓶を回収した。でも、なぜ、ワインの空き瓶を回収したのかね?また、なぜ、ジェーンがナンシー夫人の操り人形のように動いたのかね?」
「ワインの空き瓶の件は、念のため、全部回収して入れ替えた方が、後で調べられても安心と思ったのでしょう。また、毒入りのワインの瓶には、それとジェーンに分かるように何かマーク、例えば、木箱から隠れる位置の瓶の側面にシールのような、物を貼っていたので必ず回収しなければいけなかった。
それでジェーンを操った最大の理由ですが、ジェーンさんは水難事故で意識不明になり、脳にダメージがあったんですよね。その為、仕事がなかなか覚えられず、苦戦していて、自分に自信がなかった。その自信がない、気が弱い性格を利用され、色々、指示されたんだと思います。
そして、おそらく事件後も、真相が明るみに出ないために、ナンシー夫人が陰で色々指示をしていると思います。
どくろマークのイラストがある紙コップに、ホット・ワインを注ぐのも、通常なら怪しいと思うでしょうが、気が弱い性格の為、断れず、また、ドクロマークというのも、毒の意味以外にも、サプライズの為のワイン、例えば、どっきり番組にあるような、ピリ辛ワインの意味だから、ナンシー夫人がジェーンに大丈夫だと強く伝え、そのとおり実行させたのだと思います。」
「例えば、ドクロマークのイラストが描いてあるピリ辛のスナック菓子もありますし」と付け加えた。
「また、ジェーンさんは沢山の作業はできないけれど、1つの作業に専念することならできる、また、共同作業は、動作が遅く相手を苛立たせてしまうので向いていない。という事らしいので、
だからこそ、ホット・ワインを、ワイングラスに入れ、配る作業を一人で任され、他の人のいない空間で作業することになったので、ナンシー夫人からみればうってつけの人物だったという事になります。」
「で、どうやってナンシー夫人の犯行を暴くのかね。手袋をした手で、紙コップにどくろのイラストを描いたり、ワインの空き瓶をすり替えたりすれば、指紋は残らない。」
とジャックさんは唸った。
「この村の人全員にどくろのイラストを描いてもらいます。そうすれば、犯人を突き止めらます」
俺は、そういうと夕焼け空を睨んだ。




