セブンス×アナザーワン Ⅳ ‐ 古代と未来 1‐
新キャラが3人登場します。まずは1人目です。
滅亡の時代。
炎の星が降る夜、陸の王者たる竜たちと栄光を極めた一族、竜走一族の若頭・マルケェスは走っていた。
「ミケ!急げ!親父が待ってる!」
「ガヴッ!」
若頭などの限られた人間が契約することができる筋骨隆々、大顎の巨竜タイラントサウルスであるミケランジェロと同じ速度で駆けるマルケェスは焦燥感を拭いきれずにいた。
「(間に合え…!!)」
〜・〜・〜・〜・〜
ガッ!
戸を押し飛ばす勢いで研究施設に入ったマルケェスは父親である竜走族族長・ラスケェスへと詰め寄った。
「親父!!」
「ああ…間に合ったか、我が息子よ。」
巨大な装置の前に何人かの研究者とともに何やら話していたラスケェスは息子の到着にやり安堵した様子で研究者に装置の起動を指示して向き直った。
「親父、滅びの日を回避できるって本当か?!」
「ああ、そのための装置がこれだ。」
「これは一体何なんだ?」
「これは竜卵越苦という。」
「リュウランエッグ?」
「そうだ、竜の一族が卵ごと巣を移す際に卵に施す魔法の力を分析して作られた装置だ。そして我が一族の力を使えば一定の条件下では完全な安全地帯となり得る。」
「それじゃあこれさえあれば!!」
「…そうだ、皆救われる。」
滅びの日。
それは占星術と魔法からなる文明によって高度な発展を遂げた種族、竜走族が予期していた巨大隕石の衝突の日を指すものだった。
日に日に輝きを増す星に対してその予言を回避するための研究は一族の悲願であった。
「俺は、俺は何をすれば良い!」
「マルケェス。お前は一族の歴史でも稀に見る才能の持ち主だ。お前がこの装置に入り力を発揮すればおそらく一族を救えるだろう。」
「わかった!ミケ!」
ガウ!っと声とともに入ってきたミケランジェロと装置に入ったマルケェスは手順がわからなかったためラスケェスの指示を仰いだ。
「親父。どうすれば良い?順序などはどうすれば…」
「親父…?」
父親が魔力に包まれ、力を溜めているのをみたマルケェスは何か違和感を感じた。
外の研究者たちは祈るように手を止め装置の中の自分を見ているし、父親は応答しない。
「親父!なにしてんだ。早く手順を教えてくれ。」
「…すまない。息子よ。」
決意の眼差しで目を開いたラスケェスは続ける。
「すまないって…なんだよ…なんなんだよ!!」
「この装置は、一族すべてを救うことができるわけではないのだ。」
「なっ!!!???」
「後ろを見ろ。」
背後を見ると後ろには妹のマルタンが縦置きの棺のようなものにぐっすりと寝ていた。
「マルタン!?どういうことだ!」
「お前たち2人が生き残るのだ。この装置はオスとメス、そして、竜のみがいて初めて強固な安全地帯となりうるからだ。」
「…そんな…そんなことって!!」
握りしめた拳を血が滲むほど力を込めたマルケェスはそれでも諦めきれずに問いかけた。
「俺たちだけで!滅びを回避してどうしろっていうんだよ!?」
「この装置は内部の生物と同種の生物がが生きる環境が近くにできるまで内部の生物を一時的に不老不死にする効果があるのだ。」
「不老不死…!?」
「そうだ。そして竜も人もそう易々と滅びはせん。我らの一族や今を生きる巨竜たちは滅びようともな。」
「…でもそれじゃあ…俺は、みんなが滅びゆくのを黙って眺めてろっていうのか!!」
「息子よ。」
力強くまっすぐな眼差しでこちらに語りかけるラスケェスにマルケェスも押し黙る。
「竜走族の培ってきた技術・伝承は全てお前に学ばせた。それは長い年月をかけて、その他の人間の一族と我らを一線を画した一族の全てだ。それを失ってはいかん。」
「お前たち兄妹は我ら一族の最後の希望なのだ。わかるな?」
「…でも!!!!!」
「妹を守ってやれ。マルケェス、我が愛すべき息子よ。」
お時間です。と研究者がラスケェスに声をかける。
徐々に外界の景色が色褪せて行く。
「…俺!必ず復興させる!竜走族も!巨竜たちも!約束するよ!だから!!!」
次の言葉はラスケェスは言わずとも伝わっていた。
「…ああ」
「…見守っているぞ。お前たちを。いつでも。
母さんとともにな。」
泣き崩れたマルケェスと同時に完全に外界の色は失われ白い世界に3匹の生物が取り残された。