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セブンス×アナザーワン Ⅰ ‐ ハジメ、ハジマリ ‐

描き途中

 




 眩暈がするほどの閃光と鼓膜を割るような爆音。


 辺りには夥しい死体と咽びかえるような鉄の匂いが充満している。


  砕け散った巨大な金属の残骸。


 膝から崩れ落ち、友の体を抱き上げる。


 次第に自分は何故こんなことをしているのかわからなくなるほど、目の前が絶望で暗く染まっていく。


 友の華奢な胴体を殆んどの内臓を持っていくような形で穿たれた大穴(・・)


 穴からは未だ血が流れ、"死"というモノがそこにはあった。


 更には目の前にある金属の残骸と同じ攻城に使われる巨大な兵器が迫っている。


 抗うことのできない絶対的な死の奔流と強くなっていく友の死の感覚を前に、恐怖で動けなくなってもおかしくないような状況。


 しかし、その時内から湧き上がるのは死への恐怖でもなければ敵への怯えでもない。


 あるのは全ての理不尽に対し何も守ることが出来なかった無力な自分への怒りと殺意。


 強い感情とともに莫大な力が自分の身体の内側で鳴動し、鼓動を早くする。


 その瞬間─────



 ***********************************************************************************


「─────ッ!」


 またあの夢・・・と身体を起こした少年は苦い顔をしながらもベッドから出る。


 休日の少年ならば起きるどころか惰眠をむさぼる時間帯だが起きたのには訳がある。


「今日からアナタも聖学生!!」


無造作に置かれた入学者用のパンフレットを一瞥しハジメは寝床から起き上がる。


 この少年・東堂ハジメはとある事情によりこの春『聖(セント)エルズ学園中央学術院』に入学することが決まっている。


  学園の名称からして特別な教育機関だと分かるこの学術院に通うにはここで学ぶもの(・・)に関係している。


 世界には古来より常識や既存の法則を覆す超常の力が存在する。


 体内に宿す“魔力〟と呼ばれる特殊なエネルギーを練り上げることによって超常の力を起こす『魔法』(ソーサリー)


 精神力(マナ)を消費し世界に固有の能力として発現させる超能力『拡理力』(エクステンド)


 そしてそんな上記の二つを超えた、選ばれし者のみが手にすることのできる聖遺物であり、その一つ一つガンダム容易に一国を滅ぼすだけの力を秘めた『七纏極聖』(セブンス)


 人類がその存在に気付いて以来その力を利用する為多くの時間や労力が割かれたため、瞬く間に人類そのものの生活様式を一変させ、超常の力は一般なものとなっていった。


 ハジメのいるここ聖神王国ではハジメ達未成年超常能力者は全て(セント)ルイス学園の”中央学術院〟に入学し自らの能力を律し正しく扱えるようになる努力する義務を負う。


 特に初めの通う”中央学術院〟とは超常の力を扱う(セント)ルイス学園の中でも特異な力『拡理力』(エクステンド)を持つものを中心に集められた部門だ。


 ここに入学するということは何かしらの特別な超常の力を扱う人間であり卒業時の進路は成績の順位で決まるため、その”中央学術院〟に入学予定であるハジメからすれば能力や魔法など様々な超常が跋扈するこの世界で実力を示すためには努力でできることはそう多くない。


 よって早くから起きて筋力トレーニングをしていたハジメは、セットしておいた腕時計のタイマーが鳴り出したことで登校する時間になったことに気づき動きを止めた。


「そろそろ時間だな・・・準備して行くとするか。」


 訓練を終えたハジメは部屋に戻りシャワーで汗を流した後、制服に着替え入学式のある学園へと向かった。


  *


 (セント)ルイス学園とはその名の通り聖神王国の中心に立地する巨大な学術施設で、大きく分けて二つの学術部門で所属を分ける。


 個人によって千差万別な『拡理力』(エクステンド)の力を研究したり『魔法』(ソーサリー)を社会の公共事業に利用する方法を研究したりなど研究開発を主とする“学園〟。


 そして超常の力が悪用されないよう監視、また悪用された際はそういった超常能力犯罪者を取り締まる監視者(チェイサー)や国防はもとより過去の大戦の遺物である魔道兵器の確保・破壊など軍に従事する者などを輩出するのが“中央学術院〟だ。


 その性質上、個人の能力を測る為に施設は複雑・巨大化し王国の一つの象徴(シンボル)となっており、付近には観光地に並ぶ土産物屋のようにいわゆるショッピングモールのような複合商業施設や各種商業施設が乱立している。


 当然ながらそのような施設がある土地に交通機関が併設されていないはずもなく、ハジメも学園への交通手段には電車を利用することにしていた。


 特別な学び舎らしく生徒専用車両があり、改札口こそ同じだが特別なホームから直通の電車が出ている。


 改札口が一列だけ妙に混んでいたが何が起きてるのか彼がそちら目を向けるころにはそれは解消されていた。


 まだ早朝ではあるが、学園は王国中心部に在ることもあり通勤・通学の為に電車に乗ろうとする人は多く一般車両はかなり混雑していた。


「アレに乗るのは嫌だな・・・」と小さく呟いた彼は混雑しやすい一般車両に乗る人に憐れみを感じながらも生徒用ホームへ向かった。


 電車の発車時刻もあるのでさっさと乗り込んだハジメだったが、ここで自分と同じ学園生が同じ様に複数人乗り込んできていることと違和感に気づく。


 違和感の正体は乗り込んでくる生徒たちの中でも一際目立つ少女の存在だった。


 辺りの光を受け光を散らすようにして靡くきめ細やかな銀髪。


 顔立ちにはまだ幼さが残りながらも物憂げで大人びた表情が良く似合っており、


 それでいてその身体は力を持つものとしての振る舞いを崩さず、それでいて花のような儚さを持っていた。


 その佇まいからは圧倒的な名家の風格があり、仕草一つ一つに気品がありありと見て取れる。


 間違いなく一般庶民の暮らしをしてきてないのだろう。



 なぜなら、彼女はいの一番に車両に乗り込み魔法で車内をシャンデリア付きのリムジンのようにしてしまったからだ。


「面白いことするね…」


ボソッっと呟いただけだが、彼女にはタイミング悪く聞こえてしまっていたようだ。


「えっ?」


「えって言うのはこっちのセリフ・・・それは何をしてんの?」


「あの・・・何か間違ってますか?」


おそらく自分の目線では正しいことをしているつもりなのだろう。少し戸惑いつつもなぜそんなことを言われたのか?と言った様子である。


「まあ百歩譲って自分が座る座席を綺麗にするくらいなら特に目立ったことじゃないけど・・・」


「内装自体を車両丸ごと作り替えるなんてことは常識的に見て可笑しいだろうな・・・」


取り巻きであろう学生も護衛であろう黒服達すらハジメの発言に黙ってしまい車両が静まり返る。


「~ッ・・・!!!」


  自信有り気にやったことが明らかに間違っているという自覚を覚え、みるみる顔を真っ赤にして涙目になる彼女。


「アンリのバカ・・・!」


即座に車内を普通の電車の新車状態程度に魔法で作り替え、こちらへ向き直る。


「わ、私は…!」


「あんた一体何処のお姫さん?」


「姫・・・と言うほど大したものではありませんが・・・」


何かを言う前にハジメが質問をしたおかげで冷静さを取り戻した彼女は、


「一応、今年より中央学術院に入学します聖神公国七天氏族カルデア家のエリザベート・シフォン・カルデアと申します」


ハジメだけでなく、取り巻き以外の学生、学園職員であろう大人などもその名に驚く。


 七天氏族とは聖神王国で名の知れた七つの貴族でその全ての一族が特別な力を宿しているため、そのいずれかの出身であれば公国でも要職を与えられることが多い。


「カルデア家なのか・・・」


 佇まいから只者ではないとは思っていたハジメだったが告げられた性は予想だにしておらず流石にたじろぐ。


「私はカルデア家の1人ではなく、一生徒としてこの電車を使おうと決めたんです、その際私自らの成長のためにも護衛の者にはある程度護衛を外れてもらいました」


「いくら力を持っているとはいえ護衛がその量は危なくないか?」


「いえ、私はちょっと特別(・・・・・・)なんです」


「特別・・・?」


 多少訝しんだハジメだったがふと自分が自己紹介していないことを思い出し、自己紹介をした。


「あ、オレは東堂ハジメ。俺もアンタと一緒で今年入学の新入生だ。」


「同い年の方なのですか・・・!」


「それがどうかした・・・?」


「えっ、いっ、いや、あの、その、なんといいますか・・・」


 急に何かを思い出したかのようにソワソワとしだすエリザベート。


「私、この学生生活でお友達をたくさん作ることを目標の一つとしておりまして・・・」



「で、出来ればお友達になっていただければと・・・!」



「あぁ、そう言うことか・・・いいよ、よろしく。」


「ッ・・・!ありがとうございます!」


 嬉しそうにこちらの方に笑顔を向けるエリザベート。



「そうと決まりましたら渾名を決めましょう!」


 先程の奇行?とも取れる行動に続いてまたも違和感のあることを言ってくるエリザベート。


「うーん、渾名・・・以外と考えるのは難しいですね・・・」


「・・・俺は呼び捨てでいいよ?」


 呼び捨ても何もそもそも知り合ってすぐに渾名で呼び合うってお前の中の学生生活のイメージ絶対ズレてるぞとツッコみたいハジメだったがニコニコと話し続けるエリザベートにツッコむ気も失せ、そう答えた。


「よ、呼び捨て・・・!とってもいいですねそれ!」


「ああ、でもエリザベートてのは長いしエリザって渾名で呼ぶのが良いんじゃない?そうすればどっちも三文字で呼びやすいし」


「ハジメとエリザ・・・確かに」


 そうこうしている間に列車は終着点である学園併設の駅へ到着しようとしていた


「いきなりお友達ができるなんて・・・嬉しいです・・・!」


 なんか大げさだなぁと思いつつ嬉しがられること自体は悪い気はしないなと思うハジメ。


 とその辺りで列車の扉が開き生徒たちはぞろぞろと流れ出ていた。


「できればせっかくお友達になったのですから同じクラスになれるといいですね…そうだ!」


「クラス分けの掲示は校舎正面口とのことですし、一緒に行きながら色々お話ししませんか?」


よくわからない取り巻きとか護衛ついてる前で"友達として"話すことは普通なのか?

まあいいか、別に暇だし…と思いつつ、


「そうだな。じゃあとりあえず入学式の会場まで一緒に・・・」


 行くか?言い切らず、そこまで言ってハジメは用事があることを思い出し、


「すまないけどオレちょっと学園長に用事があってそっちに向かわなきゃならないんだ」


「そうですか、ではまたあとでお会いしましょう」


「ああ、エリザのクラスに俺のほうから迎えに行くよ」


 そこで初めて先ほどの渾名を使われ嬉しそうな顔を向けるエリザ、じゃあまたあとでと声をかけ駆け出すハジメ。


 向かう先は学園長室、ハジメは苦手な人物の顔を思い出していた。


「あのジジイ苦手なんだよなぁ・・・」


 嫌な思い出を振り切るようにしてハジメは走る速度を上げた。


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