プロローグ
「ねぇ……本当の私って何だと思う?」
まだ靴すら脱がず、背負ったバックも降ろさないまま俺は、玄関で押し倒された。
「全部、本当の涼葉だって俺はいつも言ってるだろ」
「言葉じゃわからない。でも凌空となら確かめることができると思うの」
涼葉が軽すぎもせず重いわけでもない、確かな質量と僅かに高い体温をもって俺にのしかかる。
そしてなんの躊躇いもなくスカートを下ろした。
「なっ……」
俺は思いがけない涼葉の行動に言葉を失った。
「お前、もっと自分を大切にしろよ!!」
何と言って彼女の挙動を制したらいいのかもわからなくなってそう叫んだ。
「大切にしてるよ。確かめてみる?」
おもむろに俺の手を掴んで自分の胸元へと導く。
そして、呼吸に合わせて隆起する胸元に触れた。
涼葉の鼓動、息遣い、体温が触れた手を通して伝わった。
「どう?鼓動が速くなってるのがわかるかな?」
蠱惑的な微笑を浮かべた涼葉が、俺の手をそのまま上にずらして大きめの胸を押し上げた。
「いい加減にしろよ」
これ以上は流石にマズい気がして手を離そうとするもがっちりと掻き抱くようにその手はホールドされた。
「逃がさない」
涼葉にホールドされた腕は二つのふくらみに挟まれていて否が応でも意識してしまう。
そしてそれは俺の溶けかけていた理性を簡単に崩壊させてしまった。
「こっちは満更でもないみたいね」
涼葉は自分が跨っているところ、臀部の下にあるものの感触を確かめるように僅かに腰を前後に揺らした。
下半身に無意識のうちに意識が集中してしまい血が集まっていく。
「いまピクってしたね」
その感触を愉しむように段々に涼葉のグラインドは速度を増していく。
「そこを……どけよっ」
たまりかねた俺は、涼葉の太腿を叩いて止めるよう促すが、それで止めるような涼葉じゃなかった。
「ダーメ」
涼葉は自分の右手の小指を僅かに口にくわえて蠱惑的な表情のまま、その動作をまるで何かをなぞる様に繰り返す。
手で叩いても止めてくれないなら、強引に腰を上げて持ち上げて抜け出すか……そう思って腰を持ち上げる。
「んぁっ」
涼葉が艶めかしい声を上げて反応をみせた。
「凌空もヤる気じゃん」
その言葉を聞いて俺は、それが悪手だったことに気づき強引に持ち上げての脱出は諦めることにした。
「いや、どうにか涼葉を持ち上げたかっただけだ」
すかさず誤解をただすように付け加えると少しつまらなそうな顔をして
「違うの?ならお喋りなお口はチャックしなきゃね?」
そう言って涼葉の整った顔が近づいてきたと思ったら次の瞬間に俺の唇は塞がれていた。
甘くしびれるような感触に翻弄され抵抗しないといけないはずなのにそれを忘れてしまう。
そして俺の唇をこじ開け無遠慮に侵入してくる涼葉の舌。
どう対処していいかもわからず困っていると、涼葉の舌が俺の舌を絡めとった。
恋愛関係でもない、一人の幼馴染と俺は一線を越えかかっている。
にもかかわらず、そんなことはどうでもいいよとでもいうかのような甘美な感触に身を任せて俺は抵抗することを止めてしまった。
まるで本能的に求めてしまっている、そんな感覚だ。
涼葉の手が俺の下半身をまさぐる。
「んッ!?」
思わず唇を離して声を上げてしまうがその声を圧し潰すように涼葉の唇が俺の唇を求めた。
涼葉のひんやりした手が俺のモノを握りしめ上下にしごく。
どうしようもない逃れられない快感に体が痺れる。
涼葉の手の動きが止まったとき――――――熱く濡れた感触が俺の下半身をきつく包みこんだ。
詩乃……ごめん……。
心の中で俺は健気な彼女に詫びた……。
俺は、彼女というものを持ちながら涼葉と交わってしまった。
その日から、俺と涼葉の爛れた生活が始まった―――――――。