「春のあいさつ」
オホホ……いらっしゃい、ようこそこの詩へ。
あら、こんにちはお嬢さん
どうも 春ですわ
スプリング・マダムですわ
桜前線と暖かい空気と共に参りました
さあ、顔を上げて御覧なさい
空の色を見て
冬の晴れた空の水色とも青とも違う
この春の陽気の青空を
あら、結局下を向いてしまうのね
まだ春の鳥たちの紹介が済んでいないのに
残念なこと
でも下を向くとほら
虫たちが蠢いているのが分かるでしょ?
春になると虫たちは冬眠から目覚めてこうして活動し出すのですわ
あら、虫がお嫌い?
私もそんなに得意でないのですけれど……コホン!
まあ、いいですわ
虫がお嫌いなら花は如何かしら?
春の蒲公英なんか、何て愛らしいんでしょうと
私は思いますわ
そして何より「桜」ですわね
さあ、もう一度顔を上げて御覧なさい
この目の前の古木の桜の木
もう今年が最後の花を咲かす年なんですの
美しいでしょ……
散るためだけの花の美しさを
桜の美しさと妖艶さと可憐さを
貴女の心にも何か響かないかしら
春はあっという間に去るものですわ
それがこのスプリング・マダムの鉄則なの
さあ、貴女も春を楽しんで
スプリング・マダムは春色のドレスを翻して
優雅に笑っていた……
お読み下さり、ありがとうございました。