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人見知りの異世界冒険記  作者: 慎作
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風と刀と魔法陣


 俺は見渡すかぎりの草原を前に、暫く立ち尽くしていた。


 地理には疎いが、それでも島国である日本にこんな草原は無いことくらい分かる。


 俺はこれが夢であることを確信した。

 そもそも肉体が急激に痩せ細ったり、筋肉がついたりした時点で気づくべきだったのだ。


 意識が朦朧としていたにしても、あまりに荒唐無稽すぎて、どうして夢だと思わなかったのか今では不思議に思う。


 とりあえず夢の世界を楽しもうと思い、俺は広大な草原に颯爽と駆け出した。

 身体が羽のように軽い。

 普通に走っているだけなのに、以前よりも強い空気の抵抗を感じる。

 走るのはどちらかというと苦手だったが、この身体ならオリンピックに出ても優勝できるかもしれない。


 さすが夢だと思いながら、少しの間辺りを駆け回っていたが、景色も変わらないだだっ広い草原をただ走るという行為に飽きてきた。

 俺は指輪が入った箱のことを思い出し、洞窟に戻ることにした。

 

 最初にいた部屋に戻り、指輪が入った箱を拾い上げる。

 残り四つの指輪が入っている。

 何故だかすごく惹かれる。

 自分の身体の変化が中指につけたこの指輪の力によるものだということはなんとなく理解していた。

 一つ目の指輪をつけたときのあの飢餓感を思い出し少し躊躇はしたが、どうせ夢だからと残り四つの指輪も全てつけてみることにした。


 まず親指につけてみる。

 一つ目をつけた時と同様に様々な光を発し、刻印が現れた。

 しかし特に何も変化は感じられない。

 次に小指につけたが、これも同じ反応を起こしたが、何も変化はなかった。

 残りの二つに関してはそもそも光ることさえなかったため、すぐに外して箱に戻した。

 

 「何も起こらないのかよ…」


 不思議なことが起こるのを期待していた俺は少しガッカリしたが、残り二つの指輪が入った箱をポケットに入れ、気を取り直して倉庫に向かうことにした。


 倉庫に入り、何か面白いものがないか探していると、倉庫の奥の壁に布がかかった棒状のものが立てかけられていることに気づく。

 それを手に取ってみると、どうやら鞘に入った刀のようだった。

 形は刀なのだが機械のようなものが付いていて、

少しゴテゴテしている。

 鞘から刀を少し抜くと、キラキラと光刃が見えた。


 俺は今年で二十五歳になったが、男というものはいくつになっても少年の心を持ち続けているものだ。

 その怪しく煌めく刀身に心奪われ、鞘から刀を抜いた。

 そしてチャンバラのように少し素振りしてみようとした。


 「あれ?」


 すごくしっくりくる。

 剣道すらやったことないのに、まるで何十年も真剣を振り続けてきたかのようにスルスルと流れるように刀を振ることができた。

 テレビや映画で見た殺陣のような派手な動きではないが、無駄の無い舞のような美しい太刀捌きだ。

 自らの身体から繰り出される達人のような動きに感動し、しばらくの間無心で刀を振り続けた。


 どれほどの時間がたったのか、時計が無い洞窟の中では知ることは出来なかったが、かなりの時間がたったように思う。

 夢の中だからか、いくら刀を振ろうとも身体の疲れは感じなかったが、そろそろ現実の世界に戻りたくなってきた。

 

「いくらなんでも夢を見てる時間が長すぎないか?」


 最初に夢の中で目を覚ました時から、体感で二〜三時間ほど経っているように感じる。

 こんなに長い夢は今まで見たことがない。


 俺は背中に刀を担ぎ、外に出て空の様子を確認しようと倉庫から通路に出た。

 通路を少し進むとポケットから光が漏れていることに気づいた。

 残り二つの指輪のうちの一つが光を放っているのだ。


 どうして突然光りだしたのか不思議に思いながら、その指輪を人差し指にはめてみると、他の指輪とは違う青い光を放ったのち、刻印が浮かび上がった。

 と同時に、謎の台座があった部屋の扉の隙間からも同じ青い色の光が漏れ出していることに気づく。

 

  その部屋の扉を開けると、台座の頂点に置かれた水晶のようなものが光り輝いていた。


 俺は恐る恐るその水晶に触れてみることにしてみた。

 指先がその水晶に触れた瞬間、突然魔法陣のようなものが飛び出し、その部屋の床一面を覆った。


「うわぁ!?」


 眩い光と共に俺の体はその水晶に吸い込まれていった。

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