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人見知りの異世界冒険記  作者: 慎作
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プロローグ


「おーいユウタ!お前○○に就職したんだよな?なんであそこにしたの?」


『…悪意の臭いがする…』


 その日は大学時代に所属していたサークルの同期の飲み会が開催され、卒業以来2年ぶりに当時のメンバー達と居酒屋で飲んでいた。そんななか、そのメンバーのうちの一人が突然俺にその質問を投げかけてきた。


「内定もらえたのがあそこだけだったからさぁ。」


 苦笑いを浮かべながら答えた俺に、そいつは更に質問を続けた。


「あの会社給料やっすいんじゃねぇの?ブラックだって噂も聞くしさー。」


 どうやらコイツはあまり良くない企業に就職した俺をバカにしたいらしい。

 言葉だけを聞くと心配してくれているようにも感じるが、俺には分かる。悪意を持って質問している事が。


 俺は幼い頃から人見知りで、人とコミュニケーションをとることが苦手だった。

 友達は小・中・高・大学とその時その時で数人できたが、学校を卒業するたび関係がリセットされ、今ではたまに開かれる大勢での飲み会に誘われる時くらいしか連絡がくることはない。

 俺は他人に対して心を開くことができなかった。

 その原因は俺が物心ついた頃から持っていた特殊な能力のせいだ。


 人の悪意を感じとることができる。


 いや感じとってしまうという言い方の方が正しいか。

 ネガティブな感情を持った人と対面すると、それがうっすらと感じとれてしまうのだ。

 実際に臭いがするわけではないが、俺はそれを『臭う』と表現していた。


 悲しいことにポジティブな感情は感じとることができず、ネガティブな感情も嫌悪や憤り、哀れみといった細かい判別はつかない。

 ただ漠然と、相手が自分に対して嫌な感情を持っていることだけが分かってしまう。


 その能力のせいで俺は人とコミュニケーションをとること自体を恐れるようになり、嫌われないよう浅い関係しか築くことができなくなっていた。


 義務感から参加した飲み会もようやく終わり、俺は帰路についた。他のメンバーの大半は店を変えて飲み直すようだが、俺には関係ない。

 なんとなくいるだけの俺はここから先は邪魔者にしかならないだろうから。


 そんな悲しい考えを振り払いながら帰りの電車に乗りこみ、偶然ポツンと開いていた席に座って明日の休日、1人で何をするか考えていると、急激な睡魔に襲われうとうとと眠ってしまった。


その日を最後にこの世界から俺はいなくなった。


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