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赤い顔

遅れることなく学校に着いてふざけるように教室に飛び込んだ。

今日は電気工事士の課外は無く中間考査の対策課外だった。

「あれぇ~元気じゃん、おめえ、朝から調子ええのぉ」

古臭い腰パンの輩に絡まれてしまった。

元々は刑務所の囚人の機動性を削ぎ落とすための服装だが、自ら犯罪者のような振る舞いをする輩たちにはとてもお似合いだ。

ドラマのように掴まれて金銭を強要されたが、先生が入ってきてギリギリ解放され、いつも通りにイヤホンを片側だけ付けた。

するといのりも話しかけて来た。

「あんなテンプレート通りの輩にはこうです」

画面内でフィンガースナップをやると輩のリーダー格であろう男のスマートフォンから大音量で成人向けの動画が流れて男子生徒の爆笑と女子生徒の失笑に包まれた。

「畑中くん、後から生徒指導室に来なさい」

リーダー格の生徒はお呼び出しを受けてしまった。

「ヤバくね?バレたら」

自己保身に徹したいがいのりはその気ではなかった。

「これは序の口です、私はあのような粗暴な振る舞いをする者が嫌いです、京さんのような穏やかな人が好きです」

それで好きという言葉に顔を赤くしてしまった。

「風邪ですか?」

当然ながら風邪ではない。

「序の口って、、、」

少し呟くといのりから答えが返って来た。

「次は男性を口説くようなテキストをランダムに送信します」

ハッキング力を過剰な自己防衛に使用するなど少し荒っぽいところがあるが、それを差し引いても、いのりの可愛らしい仕草の魅力に取り憑かれてしまっていた。

「京さん、私たちは大丈夫ですよ、私が制作した最新のアルゴリズムでは独自の量子暗号化プロトコルで世界中の端末をランダムに経由しています、スパコンさんでシミュレーションしましたが、やはり100兆回までは解析不能との結果を確認しています」

いのりのやり方には完敗だ。

課外が始まったが、先生は机に座ってる本を読み始めた、一応スマートフォンの使用は許可されている、むしろ検索用として使用が推奨されているし、wifiもある。

いのりの言う通りにカメラを使って問題集を撮影すると、いのりが赤ペンを使って説明してくれる。

「ABCD包囲網とありますが、Aはアメリカ、Bはブリテン、Cはチャイナ、Dはダッチ、このダッチの国名を聞いている問題ですね、この言葉自体が古く、ダッチも古い呼び方です、今はネーデルラント、オランダです」

事細かに説明してくれるがいつもと様子が違う。

「眼鏡とか」

すると細い赤縁の眼鏡を取った。

「眼鏡だけは小物としてあります、先生役とありましたので雰囲気だけでも楽しめるようにと思いまして、使いました」

眼鏡姿も可愛らしくて目の保養になってしまい、勉強どころではなかった。

すると突然。

「気をつけてください、見られていますよ」

斜め前の輩のリーダー格がこっちを見て来た。

そして目を逸らすと察したようにシャープペンを投げつけて来た。

「京さん?当たってませんか?」

机とノートが汚れてしまった。

「仕方ありません、この学校全ての人のスマートフォンに送信します」

そう言うとまたしてもフィンガースナップをして、5秒後に一斉に通知音が聞こえて来た。

「マジかよ、アイツはゲイだったんか」

他の男子生徒の声に、リーダー格の男は顔を赤くして憤慨していた。


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