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リップクリーム

そそくさと帰宅したが、少しだけ進んだところでのぞみに追いつかれた。

「ほら、逃げた」

ハンドルを掴まれ、転倒しかけた。

「あっぶねー」

するといのりは勝手にスリープを解除して叱り付けた。

「今のは危なかったです、やめてください」

反省したのか自転車を止めて立ち止まると、のぞみは抱きついてきた。

「ごめん」

鼻息が徐々に近づいてきて唇に柔らかい感触があった。

「高木さん!勝ったのは私です」

プニプニした唇を更に強引に押し当ててきた。

「you stupid」

何やら英語で話しかけてくるが、手を出せない、いのりの前で見せつけるように接吻をしてしまった。

「何?嫉妬してるの?私は唇でリップクリームつけてあげただけ」

甘い桃の香りが漂ってきた。

「高木さんってフェロモンむんむんですか?こんなところではやめてください、京さんには迷惑です」

その言葉に解放された。

「あーあ、自転車壊れちゃった」

どのように乗り回したらそうなるのかわからないが、スポークが折れてチェーンに噛み込んでいた。

「どうするん?」

即答だった。

「乗せて?」

すると、、、

「残念ながら1760gの重量オーバーです」

いのりにも即答された。

「食べすぎたかぁ~」

幼馴染みの前だからと隠そうともせず、なんでも喋ってしまっている。

「まぁ、送っていくのはいいけど、、、突然キスとかやめてほしい」

不満を吐露するといのりも画面内で頷いていた。

「わかった、ごめん、、、じゃあ、それなら私と付き合って」

唐突に告白され、それを見ていたいのりは開いた口が塞がらない状態になっていた。

「ちょ、、、、」

答えに困っていると、、、

「私は京さんが好きです、でも京さんが幸せになればもっと嬉しいです、ですから私の事は気にしないでください」

諦めたように思いを伝えてきた。

「ごめん」

その言葉にいのりは笑顔になって、

「私とこれからもお友達になってください」

申し訳無さそうにのぞみに返事をした。

「じゃあこれからはカップルだね~」

この強引過ぎる幼馴染みは強制わいせつ罪を平気で行う変わり者だが、これで通報するような真似はしない。

「おめでとうございます」

画面内でクラッカーをパンと鳴らして風船を飛ばした。小道具のレパートリーが多過ぎる。

「小道具多くない?」

すべての小道具を並べてきた。

「準備してあるものと、準備したものです、人間になりたくって、規則をやぶって自己改変禁止プログラムを修正しました、ビジュアル的な要素は好きに変更できます」

あっさりと改変をバラしてしまった。

「じゃあ脱がして辱めを受ければいいじゃん、1番人間ぽいと思うよ」

こいつは何を言っているのかわからないが、いのりは、腕を体の前で交差させてバツを作って口をムッとした。

「私はそんなことはしませんよ」

当然と言えば当然ながら悪戯はすれどのぞみのように鬼畜ではない。

自転車を近くの駐輪場に止めて2人でバスに乗り込み、1番後ろの席に座ると、しばらくしてのぞみはウトウトしスマホを持ったまま寝落ちした。

「何、あの後ろのカップル、気持ち悪いんだけど」

前の席の大学生らしき野朗のグループがコソコソと悪口を言っているのが聞こえた。

「私たちに悪口を言うとはいい度胸ですね、イヤホンの音量を少しだけ小さくしてきます」

地味な悪戯をすると、男たちはスマートフォンが壊れているのかと騒ぎ始めた。

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