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前の席に座るのぞみは振り向いて喋りかけてくる。
「妹いたんだ」
時系列がめちゃくちゃになってしまった。
「兄さん?この人は、、、」
のぞみは声を上げて喋った。
「高野の幼馴染みでーす、あんたこそ誰?」
2人が言い争いになると先生に注意された。
「すみません、取り乱してしまいました」
いのりは謝るが、のぞみは今度はこっちに話を振ってきた。
「ほら、いのりって絶対あのいのりだって、ほら、ツインテールの」
他愛もない会話で授業をサボるとあっという間にお昼になった。
「兄さん?お弁当持ってきましたよ」
いのりは何も持ってきてない、机に座ったままカバンから弁当箱を取り出した。
「悪りー」
渡して直ぐにいのりは青色のスマートフォンを取り出した。
「昼、食べないの?」
問いかけへの答えは「食べない」朝食も食べるフリをして部屋に持って行った。
「兄さん、私は食べなくても平気です」
そのまま外貨取引を始めた。
「兄さん、ギガ死しました、テザリングをお願いできますか?」
Wifiの存在を知らないらしい。
「ここWifiあるよ」
早速、ネットワーク接続をすると、、、
「今週はユーロで23万5600円のプラスです」
その言葉につられて男たちがやってきた。
「教えて欲しいです、いのりさん」
だがいのりの答えはノー
「確定申告しないでしょ、どうせ、それ脱税だからみんなには捕まって欲しくないの、それでも小遣い稼ぎがしたいなら、利益の半分をNPOに寄付すると誓って欲しい」
そこにいた男たちがいのりの言葉に乗せられると、いのりに促されるままSNSのグループに入ってきた。
「今送ったファイル、そこに売買時間が書いてあるから、その時間で書いてある外貨を売買すれば儲かるはず」
この女の子は高校生の皮かぶった70歳の中の人、ビッグデータを解析することなど容易いように、みんなにもいろいろと教えていた。
「もし、嘘とかついてもわかるから、そのときは税務署に告発するし、その後どうなっても私は救えないから気をつけてね」
釘を刺すように警告している。
昼が終わりウトウトしながら体育の授業になった。
外に集められて、体育祭の練習だ
フォークダンスは全学年がそれぞれ行う演目、転入生も例外なく参加することになっている。
元々は3年生の恒例だったが、1、2年生の抗議で全学年となった。
「兄さん、私と踊ってください」
逆アプローチをされ、戸惑っているといのりにのぞみが抱きついた。
「めっちゃ細くて抱きやすいじゃん、ペットボトルの凹んだ持ち手の部分みたい」
すると気持ち悪そうに、いのりは5m先に全力で逃げた。
「あーあ逃げちゃった」
毎度のように余計なことをしてくれた。
「兄さん、、、」
何かを言いかけたが、笛を鳴らされて授業が始まった。
「転入生か、もう一度抽選するか」
抽選箱から券を取ると24番だった。
「それぞれの番号の人とダンスな」
先生が大声で言うとそれぞれが集まって、いのりが残った。
「兄さん?」
パートナーはいのりの願い通りになった。
全員が円形状に並ぶといのりの背後に立って両手を出す、するといのりはそれに合わせて手を上に置いてきた。
「兄さんの肌、すごくいいです、この時を待っていました」
ぼーっとしていると視界が狭まって真っ黒な世界になり、そのまま意識を失った。
「兄さん?」
熱中症ではなく突然倒れてしまった。




