願い
パソコンを起動しデザインを始めて3分後だった。
「モデルやろうか?」
のぞみがモデルを名乗り出てくれた。
カメラを使って3方向から撮影すると、そのままいのりは写真を元にモデリングを始めた。
「1か月15万円の業務用ソフトですが、私が外貨取引でそれを上回るくらい儲けていますので、ソフトの使用ライセンス料は事実上の無料です」
グラフを作成して提示してきたがエゲツない金額を取引していた。
「億単位?」
扱っている額の単位が桁外れ過ぎる。
「利益は最低限しかありませんよ」
のぞみはそのグラフを見て唖然としていた。
「ぁすげ~、てか来月の体育祭って誰とフォークダンスすることになったの?」
その事で頭がいっぱいらしい。
「私も京さんとフォークダンスをしたいです」
まだ相手は決まってない。
「明日の明け方の流れ星にでも祈ればいいじゃん、いのりだけに」
吐き捨てるようにいのりをおちょくると、いのりは閃いたようだ。
「もしも、願いが叶うならば、私はあなたのそばに居たいです、例え永遠の命を失おうとも、あなたとの愛の時間には変えらないです」
まるで詩のように独り言を言っていた。
「冗談だって」
のぞみはいのりを完全におちょくっている。
1時くらいになって2人はいのりのモデリングを見ながら寝落ちした。
しばらくして目が覚めると、いのりが真横に立っていた。
「おはよう御座います兄さん」
一言聞き間違えたようだ。
「いのりか?」
目を擦ると視界がクリアになった。
「私は高野いのりですよ兄さん」
頭でも打ちつけたようにそのまま二度寝した。
「起きてください」
いのりに揺らされて強制的に起こされた。
「双子ですよー、兄さん?忘れましたか?」
引かれるように起こされると、そのまま手を引いて下に連れて行かれた。
両親もグルにでもなったのか、何ごとも無かったかのように「おはよう」それだけを言うとご飯を2杯を運んできた。
「遅れるぞ?」
時計を見ると6時20分、課外が無い日で遅れる訳がない。
「課外はないよお父さん」
いつもと口調の違ういのり、まるで長女のように接する両親、タチの悪い悪戯だと思っていたが、違った。
「じゃあ先行くから」
準備を済ませて玄関を出ると自転車が2台、ひとつは見慣れたロードバイクと知らないロードバイクがスタンドに掛けられて施錠してあった。
30秒遅れてデザインした制服姿のいのりも出てきた。
「初めての登校だから、道教えて?」
ボーッとしていると、、、
「忘れた?訳あっておばあちゃん家にいたけど」
どうやらいのりは身内だが他校にいて今日は転校初日だったらしい。
顔はいのりだが髪は紺色のポニーテール、青色を封印したらしい。
「髪どうしたん?」
さりげなく聞くつもりがガッツリと聞いてしまった。
「今日、兄さん変だよ?どうしたの?」
朝から変人扱いをされながら学校に行くといのりの紹介があった。
「今日から転入してきた高野いのりさんです、自己紹介をお願いします」
いのりは恥ずかしいそうに一歩だけ前に出ると自己紹介を始めた。
「はじめまして、京の双子の妹のいのりです、プログラミングと外貨取引が得意です、趣味はマイニングです」
この女子高校生はスペックが異常過ぎる。
「すげ~」
クラスメイトの驚く声でいのりの自己紹介が終わった。
ホームルームが終わり、授業が始まった。
「いのりさんはあちらに」
いのりは俺の隣の席に座った。




