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Reincarnating poor  作者: imagine
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いかにして異世界は転生者でまみれたのか

「zzz」


そんなのんきな寝息が聞こえてきたのは病院のベッド。

まぬけなことに交通事故から子供を守ったりんかは代わりとばかりにトラックに轢かれ、あわや18年の人生に幕を下ろすと思われたが、通行人から助けられ、こうしてのんきに病院のベッドで寝ているのである。

というのは嘘であり、なんと、見事に異世界転生をはたしたのである。


何やら不穏な気配を漂わせる幸先であったものの無事、異世界転生をはたしたりんか。

はたしてどのような世界なのか?得られた転生得点はなんなのか?

気になるところは多いが、これより先はりんかの視点にて物語を始め、順を追って説明していこう。


「う~ん?」

なんだか懐かしい匂いがするな、などと思いながら上体を起こすと自分が寝ていたことを把握した。

ここ最近はなかなか睡眠時間が取れなかったからな~久々に気持ちのいい目覚めだ。


そんなことを思っているとなにやら様子がおかしいことに気が付いた。

眠い目をこすりながらあたりを見渡すと、そこには見たこともない光景が広がっていた。


視界に広がる一面の草原、そしてその向こうにあるのは広大な森である。

さらにその先を見据えると山が広がっており、まさに自然と言えるような光景であった。


まさかこれは・・・?


「よっしゃー!」

「もしかしてこれって・・・異世界転生!?」


おそらく18年の人生の中で一番はしゃいだことであろう。

人目もはばからず、叫び暴れ、長年の夢が叶ったことを全身であらわした。


「まてまて、まだ油断はできないぞ」


そう呟きながら気持ちと体両方の面を引き締めた。

なぜなら異世界転生における重要なプロセスを経験してはいないからだ。


それは神との対話である。

だいたいの異世界転生はまず初めに神様との対話があるのがお約束だ。

その対話において自分の人生が終わったこと、そして異世界に転生することを知らされる。

そして何より重要なのが転生得点!


だいたいの転生物はここでチート能力を与えられる。

そしてその能力を使い、大抵の物事を簡単にやってのけ、美少女を侍らすのである。


さぁ来い、やれ来い!

などと思いながらファインティングポーズをとっていても一向に神様的なものはやってこない。


「おっかしいな~」

というかそもそもそういうことは異世界に来る前に終わっていることだ、この時点で何やらずれが生じている。


「まぁいいか、神様にもいろいろ都合があるんだろう」

そう思いながらとぼとぼと足を進めた。


なかなか幸先はよくないが、クヨクヨはしてられない、プロセスは前後するがもう一つの重要な事柄を済ませよう。

それはもちろん美少女との遭遇である。


だいたいは転生してすぐにモンスターに襲われてるのを助けられるのである(美少女が襲われているのをチート能力で助けるということもある)


とりあえずはモンスターと美少女に合わなければ話は進まない、とりあえずさっさと会うことにしよう。


等と考えていると・・・


どこからかドシンドシンという大きな足音が聞こえてきた。

象の足音を巨大化したような、とてつもなく大きな荷物をやっとおいたようなそんな音である。


「これはもしかすると・・・」


そう言いながら近場の木々に身を隠すと・・・


そこには想像していたような存在が闊歩していた。


自分も2倍はあると思われる体躯、恐ろしく太い腕、化学薬品のような気味の悪い緑の肌。

そしてその頭の悪そうな顔についている大きな口からは牙が伸びている。


間違いない、あれは「オーク」だ

オーク、全年齢向けならやられやく、R18なら竿役の暴力と性欲の権化だ。


これは幸先がいい、あれなら頭もよくないし美少女が助けにくりまでのつなぎにはもってこいだ。

そう考えるや否や、さっそくとばかりにオークの眼前へと飛び出した。


「おーい!オークちゃ~ん!人間ですよ~!」

頭の悪い呼びかけになったがどうでもよい、どうせ相手は人語なぞ理解できないのだから。


案の定オークは「グオー」などという知性のかけらもない雄たけびを上げながらこちらに近づいてきた。


「よしよし」

そんなことを言いながら逃げようとするとさっそくとばかりに問題が発生した。


自分とオークの距離が離れすぎている。

オークの体躯の歩幅、自分の逃げるペースを考えてもこれではまず捕まらない。


贅沢を言えばオークに捕まってから美少女が助けてくれるのがベストである、そうでなくても捕まるか否かのタイミングで助けられるのがベターだ。


「どうしたものやら~」

などと言っているといい感じに距離が縮まっていた。


よしよしこれならいい感じの出会いになるだろう、などと思いながら逃げようとするとオークちゃんの動きが止まってしまった。


面倒くさいなと思いながら、もう一度呼びかけようとすると何やら他の物体を視界にいれたことが分かった。


おや?と思いながらオークちゃんを挟んで向こうを見渡してみると、そこにはもう一つのお目当てがたっていた。


金髪の髪を後ろで束ね、強大な剣を携えている美少女である。

お約束とばかりにミニスカートで、その鎧は役に立つのかわからないほど体にフィットしている形状だ。


第一巻の表紙を飾るにはまぁまぁの見た目だ、まぁこの手のヒロインは一番人気にはならないからあまり気にすることはないかな。


そんなことを考えていると何やら金髪ちゃんがこちらに気づいたようだ。

一瞬ハッとした表情をしたがすぐにオークに向き合った。

そのせいかヒラヒラと振った手には気がつかなかったようである。


とりあえずは初バトルだ、チャンスがあれば手助けをして出会いを演出しよう。

等と考えているうちにバトルは終わってしまった。


オークが振り下ろした腕を躱して、関節を一閃。

怒って振り下ろしたもう一つの腕を躱してから腕を駆け上がり首を一閃。

なんともあっけない終わり方である。


少し残念であるがまぁ必要なプロセスは済んだし良しとしよう。


「ここは魔物の発生地ですよ、非戦闘員が来る場所ではありません」

などとどこかで聞いたようなことを言ってきたのは先の金髪ちゃんである。


「助けてくれてありがとう、俺はその~」

とりあえず第一声はこんなもんだろう、転生者と言って信じられることはまずない、黙っておくのが吉だ。


こちらをジロジロと見てくる金髪ちゃん、珍しい恰好だから仕方ないのだろう、まぁよくあることだ。


「その服装、髪の色・・・あぁそういうことですか」

なにやら一人で納得した風の金髪ちゃん、いったい何を納得したのか。


「とりあえずは町に案内しますが、その前に」

そういう言うと何を思ったのか、どこからか荷台をもってきて、切断したオークの腕を乗せだした。


あっけにとられているとさっさと済ませたのか、荷台を引きながら金髪ちゃんは歩き出してしまった。

慌てて荷台を引くのを手伝うと「ありがとうございます」と笑顔で言われた、これは挿絵にぴったりだな。


しばらく歩いていると、やはりと言うべきか、オークの切り身の匂いが気になりだした。

というかそもそもオークの切り身を運ぶ光景なんか見たことないぞ。

だいたいの異世界物は倒したモンスターは都合よく消滅するものだ。


「あの~これどうするんですか?」

等と暇つぶしついでにオークの切り身について聞いてみた。


「何って、食べるんですよもちろん」

とあっけらかんと答えられた。


「食べる?これを?」

驚いた、魔物を食べるしかもオークの肉を、そんな転生物は見たことがない。


「確かに魔物の肉の味は良くないです、しかし魔物は際限なく現れるから安価ですし、現在では香辛料も充実してますからね、保存食や質より量の食事にはうってつけなんです。」

そういいながら何かに気づいたように「あっ」と金髪ちゃんは声を出した。


「ごめんなさい、あなたにはこんなことを言ってもしょうがないですよね」

そんなことを言いながら軽く頭を下げられてしまった。

あなたには、とはどういう意味なのだろう?旅の人間だとでも思われたのだろうか?


「つきましたよ」

ぼ~っとしているといつの間にか町に着いたようだった。


町の感じはよく見るやつだなと言ったところ、RPGなら一つ目の町と言った様子であった。

木製の家々が乱立する温かみのある感じ、入り口すぐの街道の両端には出店が所せましと並んでいる。


「とりあえず、役場まで案内しますね」

そう言ってくる金髪ちゃんに言い忘れていたことを言っておくことにした。


「まだ名乗ってなかったですよね?俺はりんかって言います。」

そういいながら頭を下げた。


「あぁ、すみません、まだお名前をお教えしてなかったですよね」

「初めまして、私はヒロインと言います。」

そういいながらむこうも頭を下げた。


ヒロイン?ヒロインってあのヒロインか?

まぁたしかにヒロインではあるがそれが名前?


「あの~どうかなさいましたか?」

俺の様子を怪訝に思ったのか心配したのか顔を覗き込んできた。


「あ~なんでもないんです、お気になさらず」

そう笑顔でいっておくことにした、余計なことを気取られると面倒だ。


「そうですか」

なにやら腑に落ちない様子だがとりあえずは大丈夫そうだ。


そんなやり取りをしながら歩いているとどうやら役場についたようだ。

歩いている中、なにやら違和感があったような気もするが、呼びかけられた声で忘れてしまった。


「ここが役場になります、入ってすぐの窓口にいる人がウケツケさんですので、その人がこれからの生活のことを色々とお世話してくれますよ」

「じゃあ、私は市場に用がありますので、機会があったらまた会いましょう」

そう言いながらヒロインちゃんはさっさと行ってしまった。


なんだか事務的な対応であったな、まるでよくあることのようだ。


まぁいいやとばかりに役場へと足を運び、そのウェスタンな扉を開けると、そこには役場役場した役場が広がっていた。

もちろんコンクリートではなく木造ではある、しかしその光景は前の世界の市役所そっくりであった。


受付の場所はすぐに分かった、正面に窓口窓口した窓口がここだと主張するようにあったからだ。


「あの~すみません、受付はここであってますよね?」

などと聞いてみるとまさに、事務員というべき見た目のお姉さんが応対してくれた。


「はい、ここが受付になります」

そう硬い声で応対されるとやはり前世での市役所を思い出した。


「ここにくるとここでの生活のお世話をしてくれると聞いたのですが」

そう聞くと受付のお姉さんは「あぁ」という声を出し


「ではこちらの用紙にご記入をお願いします」

と言いながら一枚の用紙を差し出してきた。


その用紙には苗字、指名、出身国等といった欄があり、さながら住民表のようであった。


「あの、この苗字という欄は?」

そう聞いてみると


「?あるでしょう苗字?サトウとかサイトウとかそういうのが」

サトウ?サイトウ?あぁ佐藤と斎藤か

だけどなんで前の世界の苗字をこの世界の人が知っているんだ?


なにやら嫌な予感がしてきた、そう思いながらも苗字、指名、出身国の欄を埋めていった。


「はい結構です」

眉一つ動かさず応対する受付さんの声を聞きながら俺は嫌な想像を深めていった。


おそらくこの世界にいる異世界転生者は自分ひとりではないのだ。

少なくとも自分は二人目、最悪の場合四人目であることは覚悟しなくてはならないだろう。


そんなことを考えながら案内された部屋へとやってきた。


案内された部屋は教室のような場所で自分の予想が当たっていることに対する裏付けになりそうな気配が漂っている。

おそらくここで自分を含めた転生者が講習を受けるのだ。


この世界のあり方、倒すべき敵の存在、その他もろもろについて説明され、おそらくではあるが武器を渡されるだろう。

転生得点がないのも納得である、これから渡されるのだから。


そうなればうかうかしてはいられない、さっさと他の転生者を抹殺するプランを考えなければ。

当たり前ではあるが転生者は一人であることが最良である、何人もいたのではありがたみが薄れるからだ。


ヒロインも無限ではない、このままでは他の転生者にかっさらわれる可能性がある。

正直ハーレムなぞに興味はないが、自分が手に入れられたものを他人にとられるのが気に食わない。


武器の基本的な扱いについては前世で学んでおいた、盾を渡されるという最悪の場合においても他を出し抜く自信はある。

転生者同士の競争であれば問題はない、殺してもおそらく非難はされないだろうから。

ただ、問題があるとすればくだらないお友達ごっこを求められる場合だ。


そうなっては表立っては動けない、面倒なことになるな。

等と考えていると、ガラガラっと扉を開けながら、誰かが入ってきた。


「はぁい、こんにちは~☆」

と、胸やけがしそうなほど甘ったるい声で、頭の悪そうなあいさつをしながら入ってきたのは、声にふさわしく頭の悪そうな女であった。


役場の人間らしく一応はスーツを着ているが、胸元はがっつり開いており、香水のような甘い匂いも漂ってくる。


このタイプならば御しやすくて正直助かる、応対ならば慣れている。


「はじまして、俺は・・・」

と言ったところで、俺の自己紹介はさえぎられた。


「あ~そういう挨拶は結構ですよ、いちいち確認してたらキリがないんですぅ~☆」


キリがない・・・?どういうことだ?


「とりあえず当面は私たちの用意した住居を使ってもらいますね、それからこの世界についての講習を受けてもらって~」

そんなことを髪をくるくると回しながら言っていたがまったく聞いていなかった。


「ちょっと~聞いてます~、まぁいいや、困るの私じゃないし~」

どうでもよさそうに言いながら公衆を続ける派手な女。


「それからは身の振り方を考えてもらう感じですね~学院に入るなり、仕事を探すなりご自由に~まぁつける仕事はだいぶ限られますけど」

そんなことをケラケラ笑いながら話している。


嫌な予感は確信に変わった、しかも自分が想像してたことよりずっと悪い確信に。


「あと外出許可は基本的にでませんからそのつもりで、まぁ仮にでたとしても『大抵は』すぐに帰ってきますけど」


「あぁそうだ」などと言いながら、ポイっとカードのようなものを投げてよこした。


そこに書いてあったのは、自分のフルネームと、前世日本人という記述、そして・・・


転生者番号 10000


という数字だった。


「おめでとうございます~あなたはちょうど一万人目の転生者で~す☆」


あぁ、そういうことか

あのヒロインとかいうふざけた名前の女の慣れ切った対応、町の人間の興味をまったくもってない視線、役場の女の事務的な応対。


なるほどな、「ここでも」俺は万分の一の人間でしかないわけだ


そう考えると胸の内にどす黒いものがわいてくるのがわかった。


「さぁあ、さぁあ、どうする、りんかちゃん」


どこからか聞き覚えのある声が聞こえてきた。

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