.98
隣のアパートの裏から表へ。表で二人の視線を感じた。
どこから出たのか不思議がるだろう。ともかく二箇所出口があるのは認識するさず。これで、このアパートを見張るとしても二組必要に。もしくは一人ずつ違う場所を見張る。一人なら尾行を撒きやすくもなる。
そう判断してわざわざ隣のビルから降りたのだ。
その事はコースケもえっちゃんも話さなかった。二人とも自然とそうするつもりだったし、そうして降りた。
二人の視線を感じながら反対方向に向かって歩く。
行き先はリョウさんのホテル。コースケがリョウさんに帰る事をラインする。
尾行は後ろからゆっくりと付いてくる。
バレてないとでも思ってるのだろう。
仕手集団の雇った、さらに下の雇われた人達。焦りや緊張感が無い。
四車線通りに出てバス停で止まる。バスに乗り込む。
さすがに尾行二人は乗ってこなかった。
娘と若い男はバスも利用する。と連絡するだろう。出来るだけ攪拌する。あらゆる可能性を考えさせる。
ホテルの部屋でリョウさんは大人しく待っていた。が、
[私の立場は?]
リョウさんはコースケが入ってくるなり聞いた。
[リーダーだろ。軸はリョウさんが決めてるはずだ]
コースケのリョウさんへの呼び方が元に戻る。さん付け。
[私の勝負よ。貴方のじゃないわ]
[もうゲームじゃないんだ。戦争なんだ。マネーウォーなんだよ]
リョウさんは爪を噛む。が目線はコースケから離さない。
えっちゃんは気付く。リョウさんの気性、性分だと。ワガママではない。今まで自分の思い通りになってきていたプライド。これから味わう挫折。
冷静になってもらいたくてリョウさんを一人にしたコースケの思惑は外れた。
[リョウさんが思ってる以上にヤバイんだ。今ここに拳銃を持ってやってくるかもしれない]
[ホテルマンも居るし警察もすぐ来るわ]
[捕まるのを覚悟で来るヤツかもしれない]
[そんな人居るわけないじゃない]
[いるんだよ。世の中には]
リョウさんは新聞の束を掴み言った。
[今までそんな事件聞いた事ないわ。どこにあるのよ]
コースケはため息をつき、リョウさんの両肩を掴み言った。
[リョウ、もっと自信を持っていい。リョウの人の見る目は本物だろ。リョウに認められた俺達をもっと信じろ。自分が見込んだ人間を信じろ]
外からノックの音。気づかないうちにリョウさんもコースケも大きな声で言い合っていた。えっちゃんがカメラを覗く。ホテリエ。ドアを開けて、大丈夫です。と言った。




