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駅ビルの二階にある喫茶店で望月さんと会う。窓からは交番が見える。
既に窓際に望月さんが座っていた。
[見張られてる気配はないよ]
席から立って望月は言った。
[なんで分かるのよ]
リョウさんの問いに、望月は
[人も動物だからな。注意深く観察すれば分かるさ。特に野蛮な肉食形はね]
と答えた。
[今回は新兵器があるんだ]
とタブレットを見せる。四分割の動画で表通りが映ってる。
[この赤いのが人間さ。サーモグラフィーで赤いんさ。この機械の凄さは温度設定を変更してそれ以外の温度さは表示しない事が出来る。それにマーキング出来る事なんだ。凄いと思わない?]
望月は自慢気にタブレットに映ってる赤い色の部分を指差す。
[マーキングした人が動かなければ見張られてる可能性が高いって事。しかもコンパクトだから場所もとらない。カメラも極小バッテリーだしマグネット付き。六時間しか持たないが充分]
望月はニッコリ笑って、
[セットで250万円]
と言った。それから、
[少しレンタルしない?保険が思ってた以上に高いんだ]
リョウさんは曖昧にうなづいた。
[すんませんねぇ]
望月は悪びれずに謝った。それからカバンからえっちゃんの写真を取り出した。
[全部で2700枚くらい撮って300枚まで厳選。他は全て消去したよ。コピーも無し。プリントアウトしたのは、ここにあるのだけ]
小さなチップをリョウさんに見せる。
[このオリジナルしかないから気をつけて]
それから小さな銀色の箱に入れて渡した。
[特殊なアルミホイルで出来てるから電波や電磁波を通さない。ネックレスやチェーンに通せる穴もあるヤツ。ネックレス欲しいならあるよ]
望月はチェーンも取り出した。
[貰っときなさいよ]
リョウさんがえっちゃんに言い従う。望月はそのチップの箱をチェーンに通してえっちゃんに渡した。えっちゃんはネックレスを付けた。
[単なる箱だからね。ファション性は皆無だけど]
望月の言葉。
ネット上への写真の掲載はリョウさん側でやるみたいだった。望月はただ写真を撮るだけ。一時間程話をして望月が帰る。
[気をつけてね]
リョウさんの言葉に、望月がニット帽をひっくり返しかぶって言った。
[ジャングルや中国の奥地に行くと、動物よりも人間の方が怖い時が多いんさ]
望月のかぶってたニット帽はグレーと赤色のリバーシブルだった。望月はサングラスをかけて場を去った。が戻ってジャンバーの裏を見せた。裏生地は紫色。
[これもリバーシブル]
望月は笑って今度こそ帰って行った。




