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出掛ける時は必ず帽子とマスクを着用。さらにマフラー。
今にも雪が降りそうな空。違和感はない。
外出はほとんどリョウさんと一緒なので警察から職務質問される心配も無い。
たまの検問もタクシーかホテルのドライバーを使っているので身分証まで提示される事はなかった。
リスクのないお金を得る代わりにその対価を失う。とはよく言ったもので、えっちゃんの行動は制限されていく。
それでも二千万の対価は充分過ぎる。
ミゾレ混じりの雨の中、アーケード街をリョウさんと歩いてるえっちゃんは一人の視線に気付く。
振り返るとマーロンの姿。雰囲気は弱々しい。明らかにえっちゃんとコンタクトを取りたい気配を放っている。
[友達と少しだけいいですか]
えっちゃんはリョウさんに断りを入れて、立ち止まったマーロンの元へ戻る。
[二度と合わないって]
えっちゃんは周りを気にしながら小声で言った。
[ジェジェが危ないんだ。それでユダに聞いたらお前に会えって言われて]
マーロンは申し訳ない態度で言った。
ジェジェ。中国語で姉。姉さん。
何故ユダが?
頭をフル回転するも分からない。
[いくら必要なの?]
おそらくお金。えっちゃんは先回りして言った。
[正規に観て貰えないから]
とマーロンが口ごもり黙る。
[五百万円くらい?]
少し大きな額をえっちゃんは口にした。
[一千万]
マーロンは口から絞るように答えた。
何故ユダは私に?
リョウさんに頼めば一千万円はもらえる。だがそれはミヤビ達の戸籍を買うお金だ。
ユダは何故私に?
必ず何か意味があるはずだ。
ユダとの会話が思い浮かぶ。
ユダは私に聞いた。何故他人の世話を焼くのか?と。その時私はこう答えた。
目的なんかない。ただそうしたかったから。と。
[なんの病気なの?]
[血液の病気らしい。今まで飲んでた薬が効かなくなってると先生が]
マーロンの言葉を聞きながら、百均で見かけた万引きしようとしてた女の子の顔が頭に浮かぶ。ユダの、全員面倒を見れるの?の質問に答えられなかった自分を思い出す。
この世界はお金で解決出来る。
お金さえあれば。
[一千万円でおれ達を雇ってくれ。何年でも構わない]
マーロンが言った。えっちゃんは心の中でため息を吐いた。断れない。
[ちょっと待ってて]
リョウさんに全てを話した。リョウさんはマーロンをチラリと見る。
[払えない額ではないわ。でも知らない人の面倒を貴方は見ていくつもりなの?お金は一億二億あっても足りないわ]
リョウさんの言う事は正論過ぎる正論だ。真っ当な人なら誰もが思う。




