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結局、その日アパートに帰ったのは夜の八時過ぎ。ミヤビ達は鍋を用意してくれていた。安い鶏肉の入った鍋。定番お手軽晩御飯。
ケイナがいち早く、えっちゃんの服に気付き、それセシルじゃない。と大きく声を張り上げた。案の定、私も着たい。と言い出す。近いうちに服が届くわ。と言うと歓声を上げる。皆のもあるわ。と言ったが、喜んだのはケイナとリンだけだった。ミヤビとケンはさほど興味無く普通の態度と変わらなかった。
えっちゃんはその様子をクスリと笑った。
私もミヤビ達と同じ感想だったからだ。
皆で鍋をつつく。鶏肉と白菜と人参、大根。ポン酢で食べる。翌日の朝は残ったツユにご飯と卵を入れたオジヤ。
質素だが美味しかった。ホッとする。外は風が強いのか窓がガタガタと鳴ってるが部屋の中は暖かい。
温かいご飯で眠気が訪れる。部屋の隅に布団を敷き横になる。すぐに睡魔がえっちゃんを包んだ。
目覚めたのは夜中。携帯電話の明かり。ケイナの顔が映る。
[まだ寝てないの?]
ケイナが驚いた顔をして携帯電話を裏返す。周りが暗くなる。
[もう寝るところ]
[今何時?]
[二時ね]
ケイナが携帯電話を覗いて言う。
[起こしてごめんね]
ケイナが謝る。大丈夫。とえっちゃんは返してまた眠りへ向かう。
次に起きたのは七時過ぎ。誰も寝ている。一つ伸びをして、起き出す。
なるべくいい服を探す。靴だけ新品なのはおかしいと思ったからだ。
外はシトシトと雨が降ってる。
朝ご飯は温めるだけ。携帯電話を見るも連絡は無し。やる事がない。
サイコロを久しぶりに振る。白いサイコロ。普通のより少し大きい。最初から持っていた唯一の持ち物。いやもう一つあった。髪留め。赤色で木で出来てるような丸い玉に黒の輪ゴム。それが二つ。ケイナにあげて、今はケイナのアクセサリーボックスに入れっ放し。
サイコロを振る。出目は三。もう一度振る。三。珍しい。と思いまた振ってみた。三の出目。背筋が寒くなる。
もう一度振る勇気は無かった。
振る必要もないわ。と自分に無意味な言い訳をしてサイコロを元の場所に戻した。




