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朝早くから電車に乗って、水族館へ。開館前の列並び。仲の良い親子が多かった。えっちゃんは失敗したかも。と思ったが、四人共見て見ぬ振りをしてくれた。館内に入った途端、誰もが初めてな事もあったし、思った以上に楽しめる要素がたくさんあった。昼ご飯。飲食スペースで昨夜買ったお惣菜とオニギリ。お茶の入った水筒。と質素だったが、魚等に囲まれたスペースで、リンがまるで夢みたいだわ。と言った。
時間配分で名残惜しみながらも水族館から映画館へ。映画はケンが観たがった子供向けの映画だったが全員楽しめた。
お土産も無し。お菓子もジュースも無かった。それでも充分楽しかった。皆、始終笑顔だった。
帰りの電車の中、誰もが無料のパンフレットを見ながら水族館の話が止まらなかった。
電車の中の立ってる男がえっちゃんを見て驚いた顔をした。が一瞬だけだった。
[見間違いじゃない]
男は五人の子供の中の一人から目を離せなかった。電車から降りる五人を距離をとり後をつける。
男は思った。彼女は汚れていた。今までの場所でも汚れてるのを見てるが、この場所の汚れは全く別物の汚れ方だった。
なんと言うか、心までシミが付いてしまった感じの汚れ方なのだ。よごれた。ではなく、けがれた。そんな感じだった。と。
彼女達は古びたアパートに入ってくのが分かった。男はアパートを眺める。最上階の窓の灯りが点く。
男はそれを見届けてから引き返した。
今までなら、五人の誰かが男の存在を気付くはずだった。でも誰もが興奮していた為、男の存在に気付けなかった。