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[さて、計画は失敗]
リョウさんは笑って言った。
[三ヶ月で終わらるつもりだから、先にやれる事はどんどんやっておきたいのよ。隠し撮りは置いといて。コスプレの写真撮り。映像用の写真撮り。インスタ用の日常写真。ほとんど撮影ね。ただまだ漫画と映像のストーリーが決まってないのよ。今夜はその話]
近づいて来た男。胸に首から下げたカメラ。瘦せぎすで背が高い。
[バレたって本当かい?]
男はリョウさんに言った。信じられない顔をしてる。リョウさんは男に聞く。
[何枚撮れたの?]
[連写入れないと四フレームかな]
[いつから撮ったの?]
[店に入ってから]
[えっちゃんはいつ気付いたの?]
[さっきの人に気づいた後に]
えっちゃんは答える。
探偵が目を逸らした後にもまだ誰かに見られてる視線を感じた。それでもう一人居ると分かった。
[探偵さん?]
えっちゃんは聞く。
[ううん。この人はね、野生動物の写真を撮るカメラマンよ]
リョウさんの説明を男が続けた。
[そう。もう十年は撮り続けてる。人間も撮るけどね。でもバレたのは初めてだ]
男は少し興奮してる。珍しい動物を見てるような目つき。
[動物写真は金がかかるんだ。だから政治家やアイドルのスクープを撮って売ってる。望遠からの撮影は本当にバレた事がないんだよ。レンズの反射とかも気を付けてるし]
どうやら二段構えの盗撮だったらしい。
[まさかこの人も?]
えっちゃんは聞いた。まだ三人目も居るかと思った。リョウさんは否定する。
[二人ともそれぞれ長年やってるプロよ。この人は望月さん]
リョウさんはプロという言葉を強く意識して言った。望月さんをリョウさんに近づかせない為の牽制の為。だが、望月さんは好奇心強く、リョウさんの意図に気付いてたのにも関わらず、えっちゃんを分析し始める。
[自信家でもなさそうだし、オドオドもしてない。武道とかやってるようにも見えないしなぁ。産まれはロシアとか?]
[望月]
リョウさんの強い口調。
[タブーよ。相応のお金は払ってるんだし。そもそも失敗したじゃない]
[お金は返すよ。むしろ要らないから撮らせてくれないか。それと詮索はしない。約束する]
望月は、リョウさんに至極真面目に言った。隠し撮りがバレた事でえっちゃんに凄く感銘を受けたのだろう。
リョウさんは思案。望月は引き下がるようには見えない。断っても勝手に動き回りそう。ならば。と。
[えっちゃんが一人の時は絶対に撮らない。余計な詮索はしない。謝礼もするわ]
リョウさんは言った。
[オーケー。約束する]




