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リョウさんが電話をかける。少ししてその男が目の前に現れる。
[騙すつもりはなかったのよ]
リョウさんはえっちゃんに言った。
[カメラを]
男はリョウさんに言われたままカメラを渡す。
[バレないように撮る約束は?]
[…すいません]
男は謝る。
[この人は探偵なのよ。何十年もやってるのよ。なんで分かったの?]
リョウさんはえっちゃんに聞く。
なんで。と言われても、なんとなく感じただけ。それに…。
[もういいわ]
とリョウさんはえっちゃんの返事を待たずに、探偵に手を上げる。男は何か言いたそうだったが何も言わずに去る。
[自然体のえっちゃんの写真が欲しかったのよ]
リョウさんの説明にえっちゃんが言った。
[あの。もう一人居ません?]
えっちゃんの言葉にリョウさんは思わず笑って言った。
[どこに居ると思う?]
えっちゃんは辺りを見回し、道路の向こう側の二階の本屋を指差した。
[えっちゃん。貴方どんな人生送ってきたの?]
同情ではなく、感心するような言い方。質問ではなく呟くように言った。気を取り直したようにすぐに電話をかけた。それからえっちゃんを向いて、
[隠し撮りした事は謝るわ。必要な事なのよ。でもこれだけは約束するわ。私と一緒じゃない時には隠し撮りは、絶対にしない]
えっちゃんはうなづく。
[怒ってるの?]
リョウさんは黙ったままのえっちゃんを怒ってるのかと勘違いする。
[怒るなんて…。必要なら仕方ないです。多分その写真も価値上げに使うと思ってます]
えっちゃんは答える。二千万円稼ぐリスク。リョウさんはお金を使ってる。ダメになったら失うリスクを。すでに五百万円以上。一千万円かもしれない。
[実在するエクスコを最初は実在しないようにもってくのよ。架空の存在としてね。イラストから漫画、映像。そしてコスプレ。最後に実在のえっちゃんを出す計画]
リョウさんは計画を説明する。
[私なんかで上がると思いますか?]
[私は上がると信じてるわ]
リョウさんは即答する。それから笑って言う。
[私の自慢はね。その人が本物かどうかを見抜ける事なのよ]
何かに気づいたように再び口を開く。
[何回か間違えた事あったわ。でも私が本物にしたのよ。えっちゃん。貴方は私が思ってた以上の本物よ]




