.62
えっちゃんは寝る前にファンタスフィックのサイトを見る。
誰でも絵や写真、音楽を載せる事が出来る投稿型サイト。その絵や写真を気に入ったファンがコインをあげる。要はお金が稼げるのだ。
この仮想通貨をどうやってお金にするのか分からない。お金にするには手間がかかるみたいだ。
趣味としてネット上に公開するツールとしてなら翻訳機能もあり日本外への発信も出来る機能は充実している。
ニルさんが載せたと思われる様々なイラストに貰ったコインの総数が載っている。26万枚。19万枚。これがいくらになるのかは分からない。でも微々たる額だとしてもお金にはなる。
えっちゃんは携帯電話を閉じる。皆はまだ布団の中で携帯電話を見ているが、えっちゃんは目を閉じた。
下水道の中を走ってる夢。何かを追ってる。手には旧い長銃を持っていた。チャンバーに一発装填を送り、チャージングハンドルとマガジン部分に布を巻きつけながら走る。
饐えた匂いの中に混ざってる火薬の匂い。何かが飛んできて、誰かが、伏せろ。と叫ぶ。隠れる場所がなく、膝下しかない汚水の中に耳と頭を防ぎながら身体を沈める。轟音。爆風。頭や背中に水しぶきと土砂がかかる。目は開けられない。音に集中する。
こっちに向かって来る気配を探る。銃口を無意識に前方に向ける。
隣で起き上がる気配。自分も汚水から顔を上げた。そこで目覚める。
物凄くリアルな夢だった。匂いすら思い出せる。汚水から顔を上げた時の水飛沫の音も。
えっちゃんは大きく息を吸い吐く。
現実ではあり得ない世界。中世のイギリスとかにあるような石畳みで出来てる下水道だった。銃も一昔前のボルトアクション方式の銃。チャンバー、チャージングハンドル、ボルトアクションなんて言葉はどこで知った?銃の構造を知っていた事にえっちゃんは少しゾッとした。
映画で観た光景だとしても用語を知ってるのはおかしい。
経験した?いつ?
どんな服装かは分からなかった。一緒に居た男も。何人居たかも。
同じ布団で寝ているリンの体温に気付き、時計の音に気付き、思考が現実世界に侵食され、だんだんと夢の世界が崩れて消えていった。
ゾッとした感覚だけが肌に残った。
起き上がる。五時前。冬のせいでまだ暗い。




