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スタッフ達と映像を観る。
誰もがえっちゃんを褒めたり、違和感なく動いてる事に驚いたりしない。
影の部分が出来てる。とか。スポットに入ってない。とか映像について指摘したり言い合っている。
後ろからリョウさんに肩を叩かれ、首でこっちに来るよう指図され、その場所を離れる。
スタッフは映像に夢中になってる。誰もえっちゃんを気にしない。
[あとは皆に任せて次行くわよ]
えっちゃんはうなづく。
タクシーでなくワゴンに乗る。
リョウさんとえっちゃんは後部座席。運転席の間に仕切り。
[ああいうのはいつ習ったの?覚えてない?]
リョウさんの質問にうなづく。
[コースケは知っていたわ。コースケの事も覚えてないの?]
えっちゃんはうなづく。いくら記憶を辿ろうとしても全く分からない。
[コースケを信用してる?]
えっちゃんは少し考えて答えた。
[信用出来ると思います]
[まだ分からないのね]
リョウさんは言う。
[私達の利は一致してるのよ。コースケがどんな利を求めてるのか分からないけど]
[お金ですよね?]
えっちゃんが言う。
[お金はもちろんよ。でもそれ以外の理由もあるわ。私にもあるわ。きっとコースケにも]
リョウさんはなんとなく分かる。お金だけが目的じゃない。成功による自己満足。達成感。私はお金だけ。コースケもお金だと思う。違うのかしら?
えっちゃんは考える。
[もうすぐ着くわ。ニルの所よ]
リョウさんの声で結論出ないまま。
大きなマンションの前で降ろされる。ニルがすでに一階のエントランスロビーで待っていた。
笑顔でえっちゃんに手を挙げた後、リョウさんと話し込む。エレベーター内でもリョウさんと話し続ける。
会話の内容からニルさんはイラストを描いてる事を知る。部屋の中はたくさんの雑誌や書籍が山積みされていた。片側にはボードが二つ。磁石でプリントアウトされたエクスコのイラストが何枚も貼られてある。アメコミ調の似顔絵から墨で描いた絵。鼻と耳が猫になってる絵。どれもがえっちゃんに似ていた。
リョウさんが一枚ずつ質問している。えっちゃんには意見や感想を求めてこない。
ここでもえっちゃんはやる事がない。
たくさんのフィギュアが並べてある棚を見たり、イラスト全集を読んだり。




